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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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竹千代君と百日咳

そこで何かと口実をつけてはチサにお呼びがかかるが

中臈であるチサは簡単に大奥を出る事は出来ない。

中奥まで出入り自由な春日局ならともかく、、、

しかし局も、医師から若君の虚弱体質を聞いていたし

チサからも以前、指摘されていた事も合って二の丸に

行くにあたり、局自身の用向きの代行という形をとり

チサが行きやすくしていた。もちろん竹千代君が

今までのところ大病もせず、他の子供より発達も早い

という実績があったからだ。だがチサとていつもいつも

すぐに行ける時と行けない時もある。

局による中臈教育はまだ続いており、上様お召しの日は

相応の用意がある為(なにしろ他の側女より呼ばれる回数

が多い)そう頻繁には行けないのである。

そんなおりもおり、ひと月ばかり二の丸に行けない

時があり、その間に竹千代は百日咳にかかってしまった。

はじめは誰もが軽い風邪だと思った。熱はあまり無く

しかし咳は出る。そんな状態を見舞いに行った局から

聞いたチサは、甥っ子が小さい時かかった百日咳を

思い出し、「咳を良くなさっておいででしたか」と

局に問うた。「いつもいつもというほどでは無いが

 出ると続くのでおかわいそうであった。医師の薬湯で

 少し、治まってきてはいたが」と 心配そうに答える。

チサはますます百日咳ではないかと疑った。甥っ子は

予防注射を受けていなかったので、酷くなり咳が多く

なってから慌てて病院に駆け込んだが1ヶ月位

かかってやっと治ったはずだった。その当時はもう咳が

出るたびかわいそうなくらい苦しんで、咳込んだ後

ヒューヒュー咽を鳴らして息を吸うのも苦しそうでと

後に姉や義兄から聞かされていた。

チサは局にただの風邪では無いかも知れないので

医師に良く相談してくれるように頼み込んだ。

この頃は局も若君の事をチサに相談するのが当たり前の

用になっている。なぜなら医師達は子供を育てた事も

無い中臈の意見など聞く耳は持たないが、春日局の

意見ではその限りではなかった。その翌日二の丸から

帰って来た局は、若君の咳が前日より多くなり熱も

出てきた様子と心配げに告げた。

チサは(これは もしかすれば)とますます悪い疑いを

濃くして早速 二の丸に駆けつけた。寒い時期でも

あったので、部屋は締め切りむせ返るように暑かった。

昔は風邪といえば身体を温めて滋養のある物を食べ

薬を飲んで静かに寝ているのが定説だったが

今は違う。今は新鮮な空気を部屋に入れ熱が高く

なければ風呂に入っても良いという昔では考えられない

事が当たり前になっている。


続く。

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