チサは過去の世界へ
それから如何ほどの時が経ったのか、、、、
次にチサが気づいたのは柔らかい草の上だった。
青い空 白く流れる雲 そんな物がボンヤリ目に写り
ハッと気づいて草の上に起き上がった(ここは どこ)
頭がボンヤリしてしばらくは何も思い出せない。
(あっ あのお爺さん 気狂いの)思い出すと同時に
恐怖もよみがえって思わず小さな声を上げた。
しかし 辺りに人の気配はない。あの{オズ}という
機械もない。(北海道に着いたのかしら)
そう思ったが、どうもそんな様子でもなかった。
良く見ると手入れされた庭園のような所だった。
おそるおそる立ち上がってみると向こうに長続きの
家らしき物が見える。しかし 間もなくそれはチサが
今まで見てきたような家とはかなり形が変わっている
のに気づいた。まるで 時代劇に出てくるお屋敷の
ような形である。(おかしいなぁ)と 思いながら
ボヤ~と突ったっていると、急に人声がして4、5人の
女達が笑いさざめきながら現れた。 チサは慌てて側の
植え込みに身を隠した。なぜかとっさにそうしていた。
現れた人影を見てまたびっくり それもそのはず女達は
テレビの時代劇で見るのとそっくり同じ姿をしていた
からだ。(ロケーションでもしているのかしら?)と
思ったがどうも様子が違う。辺りにカメラらしき物は
無いし監督やスターらしき人も見当たらない。
第一以前 ロケを見物した時は何人かのスタッフが
反射板のような物を持ってあっちこっち動き回って
いたのに、それらしき人達もいない(変ね~)
思いながらチサはそっと身をひそめながら近くに寄って
見た。すると女達の話し声が聞こえる。
「およしさんはいつ御宿下がりなさるの」
「この月の10日からよ」 「まぁ じゃ後15日じゃない
楽しみねぇ」 「ええ もう嬉しくって だって3年ぶりに
お父様やお母様に会えるのですもの。おみつさんは
いつなの」 「私はまだ来年よ。いいわね~貴女は
ねぇ 春江様はいつ御宿下がりでしたの」と おみつと
呼ばれた女は少し上役らしい人に尋ねた。
「私は去年でした。ですから後2年は待たねばなりませぬ」
「でも 春江様は去年の宿下がりの時 お見合いを
なさったのでしょう」 「そんな 誰がそんな事を」
「あら お隠しになっても駄目よ。そのお方からしげしげと
文が届いているではありませんか」 「そんな知りませぬ」
「あら あのように朱くなって」と 女達はわぁーわぁー
きやぁきやぁと囃し立てる。 隠れてそれを聞いていた
チサは何か堪らなくなった。なぜか自分はとんでもない
所に 別世界にいるような気がして、、、、
女達の姿 形 さらに言葉使いがそれを感じさせた
思わず隠れていた木の影から飛びだし女達に歩み寄って
行った。
続く。