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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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竹千代君誕生

現れた竹千代君の乳母は矢島に代わって召し出された

歳の頃 30.2.3歳の品のいいおとなしそうな

婦人であった。佐和はチサにも一礼して

「お呼びでございますか」と お楽の方に平伏する。

「若君が良くお乳を吐かれるのは、飲んだ後排気を

 させてない為やも知れぬと、おチサ様は言われる

 のじゃ。そなたはそれを知っていましたか」

「いえ 聞きはじめでございます。いったいどのよう

 な事で」 若君の事となると責任ある乳母

顔を引き締めてチサとお楽の方に問う。

「難しいことではありません。私の姉が子育てを

 している時 申しておりました。なんでも赤子の

 胃は大人のように少し曲がっているのではなく

 真っすぐなのだそうです。その為もともと胃の中の

 物が出やすい形の上 お乳を飲む時空気も一緒に

 飲んでしまうので、後でゲップになりやすくお乳も

 一緒に出てしまうと言います。それを防ぐ為

 飲んだ後 静かに肩に持たせかけるようにして抱き

 軽く背中を叩いたり撫でていました。このように」と

チサは引いていた座布団を赤ん坊に見立てて抱き、

実演して見せた。「それはいい事をお聞きしました。

実は私もお方様もせっかくお飲みになった乳を

 吐かれるのがたびたびありますので、、、私めの

 子の時とは違い心配になりお匙に相談しょうかと

 申しておりました」と佐和 「簡単なのでぜひ一度

お試し下さい」と いう事でお乳の話はそれで済み

後しばし 雑談を楽しんでから新座敷を辞した。

その5日後 またもやお楽の方から呼び出しを受けて

行って見ると、彼女は佐和と共に出迎え チサの言った

通りにしたところ、お乳を吐く回数がずっと減って

来たと顔を輝かせて報告した。そうして一度会って

くれと竹千代の部屋へ案内する。見ると大きな部屋に

小さな布団が一つ その下段にはずらりところ侍女が

並んでいた。小さな布団のその中にこれまた小さな

皺くちゃな生き物が葵の御紋入りの、立派な産着を

何枚も着せられてうごめいている様にチサは驚いた。

「まぁ こんなにたくさん着せて」と ため息をつく。

「えっ 何かおっしゃいまして」 お楽の方が聞き止めて

尋ねる。「いえ あの あまりにたくさんのお召し物に

驚いてしまいました」 「夏とは言え まだ日も浅く

 もしもの事がございますれば」 佐和が口を挟む。

「そうですねぇ それに今はお眠りになっているのが

 ほとんどですものね」と チサもあえて逆らわない。

3ヶ月を過ぎて本当に薄着が必要な時 それとなく

注意すれば良いことである。ぜひともこの若君には

丈夫に育ってもらって四代将軍職をまっとうして貰い

綱吉の犬公方を避けなければならない。


続く。

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