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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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春日局とチサ

その夜の事 チサは局に付き添う役をどうしても

自分がしたいと言い張った。かな江やおよの藤波達は

中臈たるご身分のおチサ様に寝ずの番をさせ、侍女で

ある自分達がのうのうと眠る訳には行かないと

必死で言い張るのを 「大丈夫 お局様はご覧の通り

良くお休みでいらっしゃるから私も安心して

 寝られます。日頃 お局様には心配ばかりかけて

 いる私 孝行させてください。そんなにたいそうに

 身分だの侍女だのと言わなくても良いではありません

 か」と 言って聞かなかった。局はあれ以来 一度も

眼を覚まさずにぐっすりと眠っている。あまり眠り

過ぎるのもチサには気掛かりだった。祖父の場合

死後に聞いた話だが、その日 祖父はいつもと変わり

なく元気な様子で、畑仕事を終え夕食を済ませて

テレビを見た後 祖母と共に床についた。祖母が夜中に

用を足しに起きた時は変わりなく良く眠っていたが

朝方 目覚めた時 祖父は大きないびきをかいて

いたと言う。元々 多少のいびきはかく人だからと

さして気にも止めず、朝食の用意を済ませ呼びに行った

時にはすでに息絶えていたと聞いている。その事が

頭にあるのでなかなか寝付かれず、眠ってもすぐに

目覚めてしまう。薄暗い天井を見つめていると

様々な思いが走馬灯のように過ぎて行く。

(いったい なぜ 私はこんなにお局様が心配なの

だろう)そんな思いが胸を掠めた。考えて見れば

不思議なのだ。局とチサの間には血のつながりは

おろか300年余の時代の隔たりがある。

可愛いがってくれる人かと言えば否であるし優しい

言葉一つかけてもらった覚えはない。

いや いつも厳しい態度で接っしていると言って良い。

それなのにチサは局の容態が心配でならないのである。

家光を盲目的に愛し、その持てる情熱を全てかけて

育て上げ天下を納める将軍に仕立て上げた。

あるいはそんなエネルギッシュな所が現代人の

チサと通じるのかも知れない。この世界に来てから

もうすぐ1年 チサもここの生活にだんだん慣れて

きて時代差のギヤップを埋めて人を愛せるように

なってきたのでは有るまいか。うとうとと眠っては

眼を覚まし局の様子に変わりがないとまた眠ると

いうのが続き、何回目かに眼を覚ました時ハッと

チサは跳ね起きた。局がいびきをかいている。

それは辺りが寝静まっているせいか異様に大きく

聞こえた。慌ててかけよって見ると局はその気配に

気づいてぼんやりと眼を覚ました。眼を覚ますと

そこにチサの心配そうな顔があるのを見て驚く。

見れば寝間着のままではある。(そうか 昼間廊下で)

倒れた事を思い出し医者の診察を受けた事も思い出した。

それからずっと眠ったままであったかと驚き

「今 何刻じゃ」と 尋ねた。


続く。

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