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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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春日局とチサ

「お局様は血圧が高いと言う事はないのですか」と

問うたがお匙は血圧という言葉を知らなかった。

「ケツアツと申しますと?」と 訝しげに首をひねる。

チサは驚いた。(そうか~今は江戸時代)血圧計が発明

されているはずがない。「血圧とは心臓から流れ出る

血液が血管の壁にかける圧力の事です。歳を取ると

 その力が正常に働かなくなって来る上 血管自体も

 弱くもろくなっていろいろ障害が出てきます」

「初めて聞く言葉でございます。おチサ様はどこかで

 医術を学ばれた事がおありでしょうか」

「いいえ 特に学んだと言うほどではありませんが

 あるいはそなた達が知らない事を知っているかも

 知れません」 説明するのは面倒だしわかっても

貰えまい。「私の事はともかく お局様は以前 身体が

むくむとか、お小水に血が混じるような事はありません

 でしたか」 「ございました。昨年 代官町のお屋敷に

お引きこもりのおり、診察に伺いましたがまさにその

 通りでお熱もございました」 「では 常々 息ぎれ

とか耳鳴りとか頭痛と言う事は」 「時には合ったご様子

 また夜が良く眠れないとも一度お聞きしました。

 春先の気候が不順な時でもあり、風邪を引かれていた

 事もありしばらくのご休養をお勧めしました」

「そうでしたか」 これでどうやらはっきりしてきた。

どう貰え局はチサの祖父と同様 腎臓性の高血圧で

その上に年齢から言って動脈硬化もあると考えて良い。

チサの憂い顔にお匙は「いかがなされましたか」と

尋ねる。「私の祖父 今は他界していますがその祖父が

 同じような症状でした。お局様も血圧が高いと心臓や

 腎臓に負担がかかるし、このまま無理を続けると

 突然 脳卒中を起こして死に到ることもあります」

「ええっ 卒中を それはまことで」 お匙は驚いて声を

低める。チサは苦笑して 「医師はそなたでしょう

これでは立場が逆です」 「まことに」 彼も苦笑するが

チサの話 半信半疑 いや 信じられぬと思っているに

違いない。「一度 詳しく調べて見てはどうですか。

今まで卒中で死んだ人の中に日頃 どんな症状が合った

 のか。百人中 何人さっき言ったような事があった

 のかと そうすればこの時代の医学にも役立つし」

統計出して見ればこの医師にも分かるだろう。

だが彼は また変な事を言い出したチサにキョトンと

していた。しかしチサにすれば今この頼り無い医者に

付き合ってる気はしない。局が気掛かりで休んでいる

部屋に戻って見れば付き合っは良く寝入っている様子

だった。ホッとして襖を閉め 部屋の者達に医者の

診断を伝えた上 局の眠りを覚まさぬようその日一日

ひっそりと過ごした。お蘭にはチサ自ら北の御部屋に

赴いて事情を説明する。お蘭も久しぶりにチサと会い

喜ぶと共に、局の容態を心配した。

「おチサ様に会えて嬉しゅうございます。本当なら

 お引き止めしたいのはやまやまですが、我が儘は

 言いません。お局様をよろしくお願いいたします」と

名残惜しそうに見送った。


続く。

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