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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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春日局とチサ

局の場合は意識があるので一応心配無いと思うが

歩いて戻る危険は避けた方が良い。その内お匙が

駆けつけて来てまず脈を取る。しかし廊下で詳しく

診察する訳には行かない。みなが思案する中 チサの

命じた布団が運ばれて来た。「お局様をそっとこの上に

お寝かせして あまり急に動かさぬようそおっと」

だが局は 「そのようなみっともないことは嫌じゃ

歩いて参る」と かたくなに拒む。「お局様 めまいが

 するだけと言っておろそかにはできません。

 何かお身体に触った事が合ったのでしょう。大切な

 御身 おいたわり下さいませ」と チサがなだめる

ように言うと側からお匙も 「おチサ様の申される

通りでございます。まだお顔の色が良くございませぬ

 ここはご納得頂きますように」と 言い添えるので

局も仕方なくチサ達に身を任す。布団の端を6人の

侍女が持ち上げて、そろそろ廊下を辿ると何も知らぬ

部屋の女達が何事かと顔を出した。局がそれを気に

してらしいのを見てチサはお掻いどりを脱ぎそっと

局に被せると局は小さく頷いてそれを頭まで被って

しまった。部屋に戻り用意されたしとねに寝かせると

チサは侍女達を次の間に下げ、自分一人が局に付き添う。

お蘭には妊婦のことゆえ驚かしてはいけないから

ちょっと足をくじいただけなので、見舞いに来るのは

後日にしてほしいとおよのに伝えてもらった。

詳しい事がわかってから話すつもりである。お匙は

丁重に診察した後 チサに「お局様に置かれましては

日々 ご用繁多の為のお疲れと見受けられます。

 それにここ数日来の寒さがお身体に堪えられたと

 思われますが2.3日ご静養なさればご本復なされ

 ましょう」と 告げる。それを聞いた局は安心した

ように大きくため息を付いて眼を閉じた。思えば

お蘭の懐妊より、大奥総取締役激務の他 世話親と

してチサの勉強 指導も加わり息つく暇もなかったと

考える。そこまで考えて局はハッと気づいて眼を開けた。

「この事は上様には何もお知らせせぬように 今日1日

 休めば疲れもとれよう。ご政務に忙しきおり無用の

 お心使いをかけては申し訳が立たぬ。チサ 藤波に

 そう申し伝えよ」 「はい 畏まりました」 お匙は

疲労回復に良い薬を処方しておいて局の休む部屋より

離れたひと間に今 チサと二人で話していた。

「お局様は本当にお疲れの為だけの立ち眩みでしょうか」

「今さしてお悪いと言うのではございませんが、お局様

 にもあの御年齢 その上に毎日が忙しく、

 またお伏せりになっても一切の薬をお飲みになりません

 それゆえに時おりのご静養をお勧めしておりますが

 あのご気性ゆえにお聞き入れになりません」 

それを聞いてチサは、今現代にも伝わっている春日局は

家光が疱瘡にかかった時 神仏が願掛け 薬を断ったと

言うのは本当の事だったのかと思う。


続く。

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