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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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月見の宴にて、、、

さて 夜も更け歌合わせも佳境に入って来て残りは

高職者の上臈 中臈 お年寄り等 10人あまりに

なった。月見の宴であるから歌も自然に秋 虫の音

月とかを題材にしたものが多い。この時チサは

歌合わせの選手の中に入っていなかった。それと言う

のも春日局が、チサはまだ中臈として教育中であるから

メンバーからははずして欲しいと頼んだ為である。

それを聞いて失望したのはお玉達 

その場の雰囲気に合わせて(例えば同じ月を詠むにも

雲間に見える時 真上にきた時 池に映る月といろいろ

あるし虫の音もまたしかり) 歌を詠むというには

日頃の修練及び、雅な歌心がなければならない。

あのお転婆な教養のカケラもなさそうなおチサには

到底 無理な事 それならこの時を幸い人々の前で

恥ずかしめて日頃の鬱憤を晴らそう 一指むくいて

やろうと意気込んでいたのに出場しないとは残念と

いう所 それならばせめてという訳でもあるまいが

チサの変わりに矢面てに立たされたのはお蘭であった。

中臈の一番手はお夏だった。彼女は背から裾にかけて

満面に散らした 川に紅葉というお掻いどりをからげて

(見わたせば 山もと霞む、、、)と 和歌は得意中の

得意と張り切って素晴らしい一首を詠み上げた。

そこはやはり心得のある者 見事な出来映えだった。

一同の感に堪えたような称賛の声を聞いて得意満面

しとやかに一礼した後 打って変わったような厳しい

目付きでチサを見上げる。次はお里沙 京生まれ

京育ちを誇る彼女は(白雲に 羽うちかわし、、、)と

都の上人も及ばぬような雅に一首を詠み またも一同に

会した人々を感嘆さしめる。次がいよいよお玉

気の強い彼女は前の二人に遅れを取らじとキッと

お夏 お里沙を睨み据えてから大金を投じて作らせた

秋の花ばなの総刺繍 その花ばなを引きちぎるかと

思われるほどにサッと荒々ししく裾をからげて縁側に

立つと月を見上げてしばし無言、、、

やがて月にうっすら雲がかかるのを待って (秋風に

ひと刷毛雲の、、、)と詠み上げた見上げた出来映えは

申し分なかった。もともとお玉は和歌の達人と言われる

お万の方の手ほどきを受けた女である。実力は中臈の

中では一番だった。「見事じゃ 秋風と月の光を良く

織り込ませて良い出来映えであったな」と 家光も

お褒めの言葉をかける。お玉はもう得意の絶頂

してやったりとチサに眼をやり 続いて冷ややかな

眼をお蘭に向けた。「お蘭様」



続く。

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