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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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月見の宴にて、、、

それは毎年大奥の庭で行われるお月見の会での事だった。

その日は御舂屋より特に造らせた団子に枝豆 栗 柿

芋 等を添えて白木の台にのせ、御膳所と将軍が座る

御座の間に飾る。この御座の間というのは御仏間の

西側にあって本来は御台所と将軍が式日等に、ここで

種々の式をとり行う場所であった。また 月見の会も

本来は御座の間より庭を挟んで北側にある休息の間という

所で行うものであったが御台所 別居という今、春日局と

家光が代行していた。家光は陽もかたむく午後4時頃

休息の間に局と一緒に並んで座り、酒や料理を楽しみ

ながら奥女中達の催す歌合わせを聞いていた。

この歌合わせというのは、左右二組に分かれてお互いに

和歌を読みその優劣によって勝負を決める雅な遊びで

平安時代 貴族の間で良く流行ったものだったが、

この時代 大奥でも盛んに行われていた。局の杯を

受けながら和歌に心を遊ばせる家光 その左右に

ズラッと居並ぶのは六人の側女達 みなきらびやかな

お掻いどり姿である。大奥は9月9日の重陽の節句より

高級職者は揃ってお掻いどりになるのであったから

みなこの日の衣装は妍を競って新調し、さながら今の

ファッションショーのごとくであった。

お万の方はじめ みな晴れ着をまとい 中には人と

見比べて心中ほくそ笑む者も女心ゆえか、、、

しかしここでも人目を引いたのはチサとお蘭のお掻いどり

である。それは他の人々と晴れ着いっぷう変わっていた。

他はみな季節がら紅葉とか菊 秋草などのは図柄で

あったが二人の図晴れ着違っていた。おとなしい人柄の

お蘭にチサは思い切って真紅のバラをデザインしていた。

薄い草色の地に大胆な赤いバラを奔放に散らした図柄は

控え目なお蘭をパッと引き立たせた。またチサのお掻いどり

は、教会のステンドグラスのように紫 赤 青 竹色

玉子色 黒などを組み合わせた奇抜なデザイン

それは陽のある時も人目を引くが、夜となり月の光を

浴びるといっそう美しさを増して、光の照明が当たった

ように明かりの中に浮かび上がって見えるので、誰も

その美しさ 斬新さに舌を巻かずにいられない。

家光の眼は酔いがまわるの人つれ 大胆にチサにのみ

注がれるようになる。その様を見せ付けられるお玉達の

胸は悔しさにふるえた。



続く。

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