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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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{オズという装置}

「えっ それでは、お付き合い下さるのかこのわしに」

老人の顔に喜びがあふれた。「あまり難しい事は聞いても

分かりませんが」 「いや 見て下さるだけで結構

ありがとうお嬢さん。長くはお引き止めしません。

 お家の方も心配なさるでしょうからな。ほんの15分

 か20分くらいです。そんなに広い研究室でも

 無いし」と 言いながら先に立って階段を降りて行く。

廊下の突き当たりに電話台があった。

(家にかけておこうかな)と 思ったが20くらいの

事だしと思いなおして通り過ぎてしまった。

第一 山中老人はさっさと先をまるで小走りに走って

いるのではないかと思われるほど急いで、歩いて

行くのだった。「さぁ ここから下へ 研究室は地下に

なっているんですよ」と 示された入口は柔らかい

春の陽射しをいっぱいに浴びた部屋の中程にあるドア

だった。地下室と聞いて一瞬 チサは嫌な気がした。

暗い カビ臭い部屋を連想したし、いかに老人とは

言え二人きりで地下室に入るのはためらわれた。

だが 老人がそのドアを開けると、思っていたのとは

まるで違って、地下へ降りる階段には部屋と同じ緑色の

絨毯が引かれ、明々とルームライトに照らされていた。

それに地下の部屋の入口というのも、ほんの5、6段で

すぐそこに見えていた。「さぁ どうぞ」 老人は先に

たって降りて行く。その気安さと部屋の明るさが

つい チサの気を許した。付いて降りて行きながら

今 入って来たドアを見返るとドアはいっぱいに

開かれ、陽射しが入口まで届いていた。どこかで

食器を洗うような音が聞こえる(婆やさんがいたんだわ)

何かしらホッと安心してドアをくぐった。 

それがどんな運命を与えるかも知らずに、、、、、

部屋には大小のいろいろな機械が整然と並んでいた。

「まぁ びっくりした」 研究室と聞いて試験官や

フラスコ 棚には薬品等を想像していたチサは

驚きの声を上げた。「どうかしましたかな」

「いいえ 私はまた あのフラスコがポコポコ音を

 出しているようなのを想像していましたから」

「ああ そうですか。わしの研究はちよっと違うのです。

 珍しいのですよ。お見せしましょう そこに乗って

 ごらんなさい」と 一段高くなった直経2mくらいの

台の上を指さした。 「ここですか」 ためらいも無く

チサがその台に乗ると老人は満足そうにうなづき

素早く部屋の隅にあったボタンを押した。

すると音も無く上から透明なドームのような物が

降りてきてチサをすっぽり閉じ込めた。

一瞬の事だった。チサには何が何だか訳が分からない。

まるでガラスコップの中の蟻のようだった。


続く。

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