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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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庭での傷害事件

だが その夜だけならまだよかった。家光は翌日も

その次の日もチサへの見舞いだけは、手を変え品を変え

届けさせたがついぞ大奥泊まりを言い渡さなかった。

お玉やお夏 お里沙の心はいかばかりか、、、

また花岡や浪野の苛立ちはそれに輪をかけたものだった。

ついに4日目 春日局はたまり兼ねて、家光が仏間から

出てきた時 その襖外で「上様におかれましては この頃

政務ご多忙の様子 たまには心ゆくまでお遊び下され

 ますように」と 囁いた。この時には他の奥女中達が

ぞろぞろ付いて来ていないので、打ち解けた話もできる。

家光は局が言外に大奥泊まりを催促しているのを察して

「うむ わかった。まつり事の方も一段落したことじゃ」と

答えて中奥に戻る。局は家光が自分の言わんとした事を

察っしてくれたようなので、満足して詰め所に戻った。

その胸にはひそかにお蘭が召されるよう望む気持ちが

あったが意に反してその夜 家光の寝所に呼ばれたのは

局が苦手とするお万の方であった。それからまた2日立ち

チサが休んでから6日目の朝 今度は家光がたまり兼ねた

ように「チサの具合はどうなのじゃ 悪いのか」と

尋ねられたので局は内心ギクッとして「は はい後暫しの

ご辛抱を願わしゅうございます」と 答えると家光は

むっつりして「お匙だけでは心もとない。道安を使わそう」と

言われたので局は驚いてしまう。家光のいう道安とは

将軍専属の医師 武田道安のか事である。チサの回復が

はかばかしく無いのを見て、当代随一の名医を差し向け

ようというまことに身に余る光栄であるが、局は慌て

ふためく。もし 道安に来られたら風邪が嘘である事が

一も二もなくわかってしまう。

「申し訳ございません。先程は大事をとってあのように

 申しましたがチサの病は昨日あたりより、とみに快方に

 向かっております。道安殿の手を煩わせずとも良き

 ものと思われます」 「おお さようか。では後2.3日

すれば会えるな」と 家光 いっぺんに相互をくずして

言うので「は はい」 局は心ならずとも頷かざるを得ない。

家光は上機嫌で中奥に戻ったが困ったのは局

詰め所には寄らず長局への廊下を辿りながらどうした物

かと思案していた。チサの傷は大分良くなって腫れも

引き、膿も出なくなり傷口もひっついて歩く座るの動作

には支障がなかった。だからお鈴廊下に並んだり

お小座敷でのおもてなしには、いっこうに困らなかったが

お閨のお召しとなればそうは行かない。傷口はひっついた

とは言え脛にはハッキリと赤い傷跡が付いているので

足を見られたらすぐに嘘がわかってしまうのである


続く。

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