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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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庭での傷害事件

小走りに胸弾ませながら詰め所に着くと、敷居の外に

ひたと座って平伏した。声を出して局を呼ぶような事は

しない。一番廊下近くに座っていた仲里がかな江に気づき

局に目顔でそっと知らせた。局はいぶかしげにかな江を

見たが立ち上がって側に来た。かな江は少し後すざり

してから小声で「おチサ様の具合が悪うございます

お部屋にお戻り願いませんでしょうか」 「なにっ」局は

顔色を変えて「すぐ参る」と 先に立って長局に向かった。

帰ってみるとチサは布団に寝かされており、痛む右足を

およのとおこうが必死に水で冷やしていた。

「傷口が悪化したのか」と局 腫れ上がった足を見て

眉をしかめる。「お匙はまだか」 「ただいま呼びに行かせ

ておりまする」と 藤波が答える。間もなく駆けつけた

医師によって包帯が解かれて見ると傷口が倦んで膿が

出ていた。一通りの処置が済んで後 心配顔の局に

「ご無理をなさいましたな」と 叱るような口調

「そのように悪いのか」 「傷口より毒が御み足全体に回って

 おります。ほおっておけば体中に毒が回り兼ねません。

 そうなれば一大事にございます。これよりは決して

 足を動かさぬように願わしゅうございますればお食事も

 おしとねの上でお済ましになられますように」と

絶対安静を言い渡して帰って行った。

「思ったより悪くなっていたのですね。痛いでしょう

 おチサ様」と 優しいお蘭「大丈夫 大丈夫 今の薬が

効いたのかあまり痛くはありません。あのお匙は少し

 大げさなのです」と チサは元気いっぱいに答えるが

その顔は足からの熱の為 赤くほてっていた。

しかし その時 またもや困ったことが起きた。それは

今夜 上様が大奥にもお渡りになると和島が知らせに

来たからだ。「チサをお召しにございます」

「さようか 折もおり困ったことになったのう」 局は

ため息をつく。ここ4.5日家光は表向きが忙しく

忌み日もあった為 久しぶりの大奥泊まりであった。

「傷が悪化してしまったのですか」と 和島

局も片腕とたのむ和島には花岡達とのいきさつを話して

あった。「事を荒立てまいと無理をして出仕させたのが

 悪かった。腫れ上がって膿を持っておるのじゃ」

「まぁ それは」と 和島も眉をひそめる。


続く。

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