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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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庭での傷害事件

「でも花岡様はおチサ様を恐ろしき者よとおっしゃって

 このような者に惑わされる上様も上様じゃと、酷い

 事をおっしゃいました」と 今度はおよのが泣き出し

そうな顔で言う。「何っ 上様を 上様をそのように

言いおったのか花岡は」 こと家光の事となると春日局は

黙ってはおれない。貴乃が面倒を避ける為告げなかった

事実を今 およのが話してしまった。局の激しい怒りに

「は、はい」と 三人は思わずまっ青になりながら答える。

貴乃の心使いは無になってしまった。やにわに局は

すっくと立ち上がり花岡の部屋の方を凄まじい形相で

睨みつけ「おのれ 我等が手のチサをこのような目に

合わせただけでも胸たぎる思い その上に上様までも

 おとしめる物言いには我慢が成らぬ。どうしてくれよう」

と口の中でブツブツ言いながら憤懣やるかた無いと

いった様子 それを見て心配した藤波は

「それは花岡様ともあろうお方がなんと言う失態 されど

 ご本心からではなく言葉のはずみでありましょうから」と

取りなしたが「はずみであろうと無かろうと上様に仕える

 身が余人の前で口にして良いものか」と 局が言うのが

もっともである。「おチサ様にも落ち度がございますし」

「そうよな」 答えてしばらく考えていた局は 

「そうじゃ 藤波 お玉に見舞いを使わせ 怪我を

 したからには薬が良かろう。お匙に命じてあらゆる

 薬を揃え麗々しく飾り立てて持ってゆくが良いぞ」と

ニヤニヤしながら命じた。偽りの怪我にたいそうな薬

強烈な厭味になるはずである。藤波も納得して

「それは良きご思案 さて 花岡様とお玉様のがお顔が

 楽しみでございます」と 承知する。この方法なら

当たらず障らずの良い方法と思われた。

それから暫しの後 花岡の部屋に春日局よりお玉への

見舞いと称して三宝の上に袱紗をかけ、美々しく飾り

立てられた種々さまざまな薬が届けられた。

「これはっ」 台の上にあふれんばかりに積み上げられた

薬包の数々に花岡は息をのんだ。

「はい 春日局よりお玉様に本日のお詫びの印しとして

 お渡しするように言い使って参りました」と 藤波

「その心配は無用と申したに、、」と花岡は眉をしかめる。


続く。

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