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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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庭での傷害事件

不満げに何かを言いかけるチサとおよの達を彼女は

優しく眼で制して「失礼はこの私からも重ね重ねお詫び

致します。私 早速事の次第をお局様にも報告して

 強くお叱りを願わねばなりません。で ございます

 ればお怪我の具合を拝見 致しとうございますが」と

切り出すと「いや それほどには 怪我というほど

酷くは無いが」と 花岡はしどろもどろ

筋道を通して言われると、もともとがこじつけだけに

分が悪い。「なれど見ていた方々はそうおっしゃりますし

 私の耳にもそう入りました。これはほおっておく訳に

 参りませぬ。お玉様 正直におっしゃって下さいませ

 おチサ様を庇ってくださることなど、ご無用でござい

 ますれば」と 畳み掛けるとお玉はソワソワして

「あの ここを少し」等 手をうろうろさせて、どこを

指そうかと迷う始末 「いや 額と手を少し打っただけじゃ

大したことは無い」と慌てて花岡が言う。藤波はことさらに

驚いて見せて「ええっ お顔を 大切なお顔をお怪我

あそばしましたか」と お玉に歩み寄ろうとするのを

身を持って庇うように花岡が割って入り、

「なに かすり傷じゃ それよりもわらわが腹立たしく

 思ったのはチサの申しよう。我等を無き者に等しき

 ような口振りであった」と 問題をそちらにすり替え

ようとする。藤波は一歩下がって「それはまことに

お腹立ちはごもっともでございます。何分にもこの

 おチサ様はお中臈になられて日も浅く、諸事振る舞いに

 至らぬ所が多々ございますれば、我が主も人一倍気を

 使って、今ご教育の最中でございます。そこの所を

 お考え頂いてこの度の失礼をお許しくださる訳には

 いかぬものでございましょうか」と あくまでも下手に

下手にと出る。そう言われては花岡としても言うべき

言葉がない。「そうであったな。 今教育中ということを

ついぞ忘れておりました。いわばまだ半人前の者を

 わらわも大人げの無い事をした。許して下され」と

せいぜい権を取り繕ってお玉達をうながし立ち去って

行く。その背に「改めて主よりお詫び申し上げます」と

声をかけると花岡は振り向きもせず「その心配は無用に」と

言いおいて足早に去って行った。後に残ったチサ達

見事に花岡達に話を付けた藤波の手並みにしばらくは

唖然としていたが、収まらないのは胸の内

「なぜ こちらが一方的に詫びねばならないのです。

 藤波様は事の起こりをご存じないから」と まだ言い

かけるかな江に藤波は優しく笑って「これでいいのです

事の次第は、ある者より詳しく聞いております。これは

 お局様のお考えなのですよ。ですからおチサ様も

 そんなにふくれ顔をしないで部屋にお戻り下さいませ」と

言って聞かす。言われて三人はしぶしぶ局の待つ部屋へ

戻る道すがら、チサは池に落ちた時カスッた傷がズキズキと

痛み出したのに気づいた。


続く。

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