表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
題名のない物語  作者: 五木カフィ
5/166

{オズという装置}

「おお 綺麗にできましたな。キヨさんの腕も見下げた

 ものでは無いな」 「まあー旦那様ったら冗談を

おっしゃっているんですか」 「いやぁそんなつもりは

 無いよ。あの~チサさんと申されましたな。これは

 少ないけどクリーニング代に取っておいて下され」

「ええっ」 「遠慮なさらずに 遠慮していただくほど

 入っておりません。どうぞ」と 封筒を差し出す。

「そうですか そうでは」 「そうして下され」チサが

封筒を受け取った時 階下で電話のベルが鳴った。

婆やさんが慌てて降りて行き間もなく、老人に知人

からの電話だと告げた。老人も階下に降りて行き

チサは一人になった。そうすると急に辺りの静けさが

感じられた。もう ピアノの音も犬の声も聞こえない。

広い家で3人きりと言うのは寂しいと言った婆やさんの

言葉が実感として分かるなぁと帰る身仕度をしていると

山中老人がにこやかな顔で入って来た。

「お客様を一人にしてしまって悪かったですな」

「いいえ ちっとも そろそろ失礼しますから」

「えっ そうですか。それはちよっと残念だったなぁ」と

老人は急に寂しげな様子 「何か、、ご用でも」

「いや 用と言うほどでは無いがわしの研究室を

 お見せしたかった。いや 是非とも見ていただき

 たくて、今用意をして来た所じゃ」

「まぁそれは」 「お嬢さんがさっき興味が有ると言って

 らしたので、久しぶりにわしの研究成果がご披露

 できると喜んで、、、 いや 年甲斐もなく、、

 笑って下され。つい いい気になって」と 寂しく

苦笑した。チサには息子夫婦に去られ、生き甲斐と

いうべき仕事も無くなった老人の寂しさが良くわかった。

そう言えば7年ほど前に死んだ祖父も、長年勤めた会社を

退職してから急に老け込み、いっ時には爺くさくなった

のを思い出す。チサは寂しそうな老人の顔を見るにつけ

何かこのまま帰りづらい気持ちにいつしかなっていた。

(少しくらい遅くなってもういいかなぁ。まだ2時前だし

 家には後で電話出もして置いて)そう考えると

「せっかくだから見せていただきます。あまり長居は

 できませんが」と 明るく答えていた。


続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ