斬新なお掻いどりに皆の目が、、、
間もな梅山は下がって行き局はこれから同じ部屋に
住むお蘭はじめ侍女達にチサとおよのを引き合わせた。
チサの侍女にはおよのの他に新たにかな江 おこうと
いう20歳位のいかにもしっかり者というような二人が
つけられた。そうこうしている内に、お鈴廊下に鈴の音が
響き、将軍仏間礼拝の為の大奥入りとなる。
家光は春日局の横にお蘭と共々 神妙に控えている
チサを見てにっこり笑った。それから10日位たった
ある日 かねてより呉服の間に注文してあったチサの
衣装が部屋に届いた。それは1枚は白地に大きな牡丹の
花 それに蝶々が4.5匹飛んでいて裾と袖は十二単えの
ようにいろいろな生地が重ね合わせてあるという珍しい
仕立てであり、もう1枚は大胆な柄ゆきで黄色地に淡い
グリーンの若竹 竹の葉は本来のものよりグッと大きく
描き、色は思い切って目のさめるような赤 葉の中程に
金泥を塗って華やかさを添えている。
残る1枚は濃紺の地に白の花菱のような小花が背の
中心に深い黄と赤で大きく染め抜かれたカトレアの
花から放射状にどこまでも伸びてゆくと言った華やかな
デザイン この3枚が部屋の衣桁に呉服の間頭お由井の
手でかけられたとき 局はじめお蘭他 部屋中の者が
アッと声を上げて衣桁の前にすいよせられた。
そのまましばし呆然と3枚の見事な衣装に虚ろな目を
走らせる。これを仕立ててきたお由井もまた 改めて
その柄の斬新なこと 配色の大胆さにうっとりと
見とれおいた。ややあって「これは見事なものじゃのう」
さすがの局も素直に感嘆の声を上げ、お由井を振り返った。
続く。