斬新なお掻いどりに皆の目が、、、
侍女だって今まではいなかったが、これからはそうも
行かない。春日局の部屋では新たにチサ付きの者を
決めておくが、梅山の部屋からもの手慣れた者を一人
付けてくるようにというお達しがあった。それではと
およのが行くことになり、その夜は二人の送別会になった。
とは言っても遠くに行く訳ではない。縁でつながる部屋
だから顔を合わせる時もある。「いよいよ 本当のお中臈
らしくなってしまうのね」おりゅうがしみじみとした口調で
言う。「私 本当のこと言うと今もおチサ様がお中臈だって
信じられない」 「私自身が信じられないくらいだから
おりゅうさんが、そう思うのは当然よ」とチサが言うので
みんな笑ってしまう。「本当に早かったものね。あっと
言う間で」と 春江「世の中 どんな事が起きるか分から
ないものね。もしかして次は春江様がお中臈になるかも」と
チサがからかうと春江は大げさに手を振って
「うそ うそ そんな事絶対にないわ。あったら困るわ」と
大慌てで打ち消すのでみんなまた大笑い。
「そうよ 春江様は来年秋にご婚礼ですものね~。
愛しいお方と」と これはおよの みなにからかわれて
「もう 知らない」と 春江は袖で顔を隠してしまう。
そんな様子を楽しげに見ながら酒を飲んでいた梅山は
ふと 座り直し膝を正して「チサ お局様の部屋に参ったら
ここのように気楽には参りませぬぞ。ここは そなたの
例えば生家のようなもの お局様の部屋は嫁ぎ先の
婚家のようなものじゃ お局様は上様をお育て申し上げた
御方 はばかりながら御母君のようなお方と心得て
何事にも気を配ってふるまわなければなりませんぞ。
言葉使いは特に注意して、、、これはおよのにも心得て
貰わねば成らぬ。およのもチサと同輩であったよしみも
あり、馴れ馴れしい口のきき方を許してきたが、あちらの
部屋に参ればそちは侍女 チサは中臈じゃ。そこを良く
わきまえて話さねば成らぬ。この事はみなにも強く言って
おきますぞ。この先 例えば廊下で出会っても今までの
ように軽々しい言葉使いは控えねば成らぬ。良いな」と
注告を与えた。梅山の言う事はもっともである。
みな声を揃えて返事をした。
続く。