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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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チサの迷い そうして

局は出仕してくるとまず 何をさておき中奥の家光の元へ

足を早めた。その家光は久方振りに会う乳母に

「やっと本復したのか 少し痩せたのではないか」と

優しい心使いを示す。「上様にはご機嫌うるわしく

春日も安堵致しました」と 局も笑顔を見せて家光の顔に

少しの曇りもなく、溌剌としているので安心した。

ひと通りのに話が済んだ後 家光は「そちの留守中に

側女を一人つくったぞ」と 笑み含んだ顔で言った。

もとより局はその話 和島から詳しく聞いている。

見初められた時からその後の毎夜と言うほどの寵愛

それが最近 また他の者達も時々はお召しがあるように

なった事などの一部始終が、あまり良くないかたちで

耳に入っていた。「それはまことに結構なことと存じ

まする。聞けば上様に置かれてはなかなかのお気に入り

 とか」と 顔色をうかがうと家光は相好をくずして

「うむ まことに面白い女じゃ。いろいろ世上にも

 詳しくてな。わしはあれと会っていると楽しくなる

 他の者に比べて美しゅうはないし気も強いが

 心根はまことに優しい。今は可愛くてたまらぬ」と

まぁぬけぬけと言ってのけるので局はびっくりしてしまう。

そうしてそんなにも家光の心を奪ってしまった女に

嫉妬に似た思いが胸をつく 「それではなおの事

この上は早くご懐妊の知らせが聞きとうございます」

「ハハ あのチサが子をなぁ ハッハッハッ無理じゃ」

家光はチサが赤ん坊を抱いている姿を連想して大笑い

その姿はまるでサマにならないのだ。

「ええっ では」 又もや産まず女かと落胆する局に

「あれは大人か子供かまったく分からぬような女子じゃ

 赤子を抱いている姿などわしにはおよびも着かぬ」と

言われてホッとひと安心する。「そこで春日に頼みがある」

「何なりと」 「あのチサをそちの手元で側女として

 恥ずかしく無いよう育ててほしい。聞けばあれは

 大奥に参ってからまだ半年にも成らぬとか、、、

 言葉使いも行儀作法も今一つじゃ。梅山の部屋に

 おるそうじゃが手に負えぬらしい。そこでそちに

 頼むのだが聞いてくれるか」 気の強い女には同じく

剛直な局をと家光は考えるのか、、、いや それだけ

ではなく彼は局が自分を独占したがっている事に

気づいていた。世に言う姑根性である。息子を嫁に

取られたくないと密かに思うのは洋の東西を問わずと

言うところか、、、、


続く。

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