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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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ええっ チサが家光と、、、

「私 お閨に参ります」 「おお そうか。それで良い」

やれやれと梅山は胸を撫で下ろした。

これでひとまず承知はさせた。後は上様にたてまつり

失礼な態度をせぬように注意して、、、

まずはともかく風呂の用意 身体を清めてと心を急かす。

時間がないとはいえ湯浴みだけはたっぷりと時を

かけなければならない。およの達も手伝い上から下へと

磨き上げ、それがすむと梅山が心を込めて化粧を

ほどこした。(どうぞ 何事もなく過ぎますように末長く

ご寵愛をたまわりますように) 彼女は心の中で神仏に

手を合わせていた。化粧がすみ白無垢の寝間着を着せる時

たまらず梅山は口をきった「良いかチサ 今宵はいつもの

ような乱暴な口を利いてはなりませぬぞ。何事も上様の

 思し召し通りに従うのじゃぞ。それにいつも申して

 いるように立ち居振る舞いには特に気をつけて

 これより御寝所に向かうまでには人目もある。

 大股で裾を蹴散らすような歩き方がそなたの悪い癖

 お側に参る時も恥じらいを見せて、、、」等と

言い出したらきりがない。いや いくら言っても

言い足りないくらいの日頃の所業である。

つい くどくどと注意する梅山の言葉を聞いているのか

いないのか分からぬような顔で眼を閉じたまま チサは

無言であった。そうこうしている内にも時は迫り

長局を出る刻限になった。その介添えには春江が付き

お鈴廊下の入口までのお供にはおよのと小りんと言う

女中が付いて長くほの暗い廊下を、雪洞を持って足元を

照らす。部屋を出る4人の後ろ姿にチサが阻喪せぬよう

にと拝むような梅山の姿であった。

今夜 チサがお閨に上がることは風のような速さで

長局中に知れ渡り、誰もが突然の事に驚き羨まれると

同時に、その見初められ方があまり良くなかった為

はや 悪口雑言が飛びかっていた。

特に同じお手付き中臈のお玉や お夏 お里沙の居る

部屋では激しく「上様も もの好きな」 「はしたない

遊びをして見初められた女」とか はや「身元も定かで

ない女」など いろいろ流言が飛び交う。

だが まぁ大体一致した所が、取り立てて美しくもなく

確かな後ろだてもない女なら、一時のか慰み者に

終わろうと言う見方だった。そんな長局中の刺すような

視線を背に受けながら無表情に4人は出仕廊下へと

歩んで行く。


続く。

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