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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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チサは過去の世界へ

「何っ チサとな」 家光はその名に聞き覚えがあった。

そうして思い出した。(梅山 チサ ああそうか)

過ぎる日 仏間近くの庭で家光を熊あつかいした

あの女である。(あの時の威勢のいい女か)何か胸に

響くものがあった。その場を離れたが後は歩いていても

どの女にも目に入らない。足早やに庭内を回り終えると

さっさと茶屋に戻って酒にする。(美しゅうはないが

おもしろい女じゃな) 実際 美しい女なら掃いて捨てる

ほどいた。チサは30人並みという所か、、、

年寄り和島は春日局に言われた通り、今日1日の家光の

表情に注意していたが、これという女に眼も止めず

(美しい娘はたくさんいた) 足を止めていたのが

あのはしたないと思うチサ達の時だけだったのが不愉快

だった。局は少しでもお目が止まった女ならと言われたが

あの女はいくら何でもお側に上げるにははばかれると思う。

局は直接言わなかったが、次のお側女探しである事は

長年 片腕として過ごしてきた和島には、容易に察しの

つく事だった。(ご報告した上で お留めしなければ)

そう心に決めていると、間もなく上様は中奥に戻られる

時刻になる。だがその時 御門までお見送りの和島達を

振り返って「和島」と 和島一人を呼ばれた。

何事かとお側近く伺うと家光は少し声を低めて

「先ほどのあのチサという女 今宵 閨に召そう」

「ええっ」と 思わずのけ反る和島に、家光はニヤリと

意味ありげに笑い「梅山に そう取り計らうよう申し

伝えよ」と 言い残してさも楽しそうに中奥へと

お戻りになる。(上様も なんともの好きな)

よりに寄ってあんな女をと 和島は悔しくなる。

しかし 上意とあれば致し方なく花見の宴はもうすぐ

終わり陽は少し傾きかけていた。みなが大奥に戻って

からひそかに梅山を呼び出した。和島に呼ばれた梅山は

きっとチサの事できついお叱りが有るに違いないと

小心者の彼女は顔も青ざめ、小さくなってお年寄りの

前に現れた。その姿を見て和島は小さく一つため息をつく。

「上様 先ほど中奥にお戻りのおり この和島に申された

 のじゃが、、あのチサを今宵 お閨にとお召しじゃ」

「ええっ」 それこそ梅山は天地がひっくり返らんばかりに

驚いて「チサを それは それはまことで」と 思わず

聞き返さずにはいられない。和島が頷くと

「あのチサは 先ほど申しました通り、大奥に来てまだ

 ふた月も立たぬ新参者 それにご覧通りの半端者で

 行儀作法もおぼつかなく、言動も他の娘達とは異なり

 この梅山も手をやいております。とてもお側女には」

差し出せるような女ではないと言う梅山に、和島も

さもありなんと 言うように深く頷き「さて どうした

物であろう。と 思案する。


続く。

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