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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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チサは過去の世界へ

2人共 目隠しをして腰を曲げ「お婆さんや」と およのが

呼ぶと「はい はい」と チサが返事をして手を叩く。

およのはその音を頼りにチサを捕まえるはずが、チサは

考えていて 手を叩く時 自分の身体から遠く離して

叩くし、返事をするやいなやサッと身をひるがえすので

なかなか捕まらない。およのは10回呼んでも相手が

捕まらない時は罰を受けるので必死である。その罰は

裾をめくってみなの前にお尻をつきだし、思いっ切り

叩かれるというものだった。そうされては大変と

一生懸命に追いかけた。「お婆さんや」 「はい はい」

周りの女達は「ほれ もっと右」 「あっ 今度は下よ

しゃがんだわ」 「ほら 左に行った」等と面白がって

いろいろな事を言う。しかしとうとうおよのは負けて

しまった。さぁ大変 チサは腕をまくって

「さぁ行くわよ。およのさん 私はみなみたいに手加減

しませんからね。」と 張り切る。「きや~止して

勘弁してよ~」と 輪の中を逃げ回る。「まて~」と

チサも追いかける。その格好が面白いと またみんなが

笑いこける。「さぁ 捕まえた。ほら 裾をめくって」と

チサは逃げるおよのの帯をしっかと握って離さない。

こうなったらおよのも観念して、いやいやながら裾を

ちょっとめくる。「ほら お尻を出して」と チサ

およのがちょっとだけ突き出すと女達は許さない。

「もっと出して」 「もっと もっと」と囃し立てた。

およのは半ベソをかきながら、とうとう足を開いて

お尻を突き出すというあられもない格好をさせられて

しまった。「さぁ~行くわよ それ~」と チサは

その丸いお尻を思い切りよくピシャ~と叩く。

いい音がして「きや~ 痛い」と およのが前につんのめる。

そこでまたドッと笑う。見ている家光達もふきだした。

お年寄りの中には笑い声を上げるのもはばかれて

口を押さえて笑いを噛み殺している者もいる。

しかし 中にははしたないと心良く思わない者もいた。

和島が そうしてお玉 お夏 お里沙の3人がそうで

あり、気位の高い彼女達は眉をひそめる。

お万の方は優しく微笑み もう一人の中臈お蘭は

出身が町方だけに朗らかに笑い、お玉達はそれを見て

また 眉をひそめた。

「あの一番面白い奴 尻を叩いた女は誰じゃ」

その時 突然家光がそう尋ねた。みな一様にハッと

息をのんだ。だが 誰じゃと尋ねられても、まだ大奥に

来て間もないチサを知っているお年寄りはいなかった。

「さぁ~」と みな顔を見合わせていると

「お恥ずかしい所をお目に入れてあいすみません。

 あれは最近 私の元に参りましたチサと申す新参者で

 ございます」 お客会釈の梅山が顔をまっ赤にして

声も細々とおそるおそる告げた。


続く。

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