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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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チサの出産 そして

産婆が言った通りその日の7時頃 産室に大きな産声が

ひびいた。みながホッとする中「姫様でございます」

産婆の声が告げた。チサは無事 女の子を出産したの

だった。お万の方もおよの達もすぐに枕元に進み寄る。

「チサ ようやった」 「おめでとうございます」

チサは気力が尽きたように眼を閉じている。

「チサ 姫じゃ 可愛い姫君じゃぞ」お方様は思わず

チサの手をとり握りしめた。

「姫 女の子 よかった。お母さん私やったわよ

 お母さん」チサは夢うつつのような状態で

お方様の手を握り返した。お万の方は胸が瞼が熱くなり

知らず知らずに涙を流している。その内にも赤ん坊は

元気な声で泣き、産湯を使い純白の産着に包まれ

チサの元へ連れて来られた。

「姫様でございますよ おチサ様 良く頑張られました」

産婆がチサの隣にそっと寝かす。およの達は競って

その顔を見ようとした。意識がはっきりして来たチサは

そんなお万の方やおよの達に微笑み

「姫君でようございました」と 安堵した様子。

お万の方にはその気持ちが分かる。四月前に生まれた

お玉の子 徳松がいる。同い年の兄弟となれば、

どんなに彼女をヤキモキさせる事だろう。

姫君なればそうした争いには無縁と思われた。

生まれたばかりの赤ん坊は皺くちゃな顔徳相場が

決まっていたが、さすが現代人チサの産んだ子

当時の赤ん坊より皺も少なく、目鼻立ちがはっきりと

していて可愛いらしい女の子だった。

「このように整ったお顔のお子を私は見た事が

 ございませぬ。お産も軽く母君も姫君もどこにも

 障りがございません」と 産婆が太鼓判を押した。

「あれで軽いのか? 私はとても痛かった」とチサ

「いいえ おチサ様 お蘭様 いえお楽の方様の時は

 もっと長く大変でした」とおこう 春日局の部屋に

いた三人は夜 夜半前から翌日の昼過ぎまでかかった

お楽の時を言っているのだった。

「さぁさぁ 母君様は少しお休みにならねばなりませぬ」

産婆に促されて次の間に下がった

「可愛いお顔立ちであったな」と お万の方が言うと

兄弟がいるかな江が「私の兄嫁が女の子を産んだ後

 次の日に赤児に合わせて貰いましたが、もっと

 くちゃくちゃと猿のようでびっくりしたもので

 ございます。それが日に日に顔の色も薄くなり

 可愛いらしくなって行くのです」 「そうなのか

楽しみな事じゃ、チサがお子を産んでくれてこなたも

 ひと安心じゃ お局様も天上で喜んでおられよう」

お方様は家光と春日局に託されたチサが無事に

子を産んだ事を素直に喜んだ。そこへ乳母となった

正子が顔を見せ「おめでとうございます」

「おお 正子 無事姫君が生まれました。これから

 よろしく頼みますぞ」 「身命をとしてお仕え致します」

女達がひそひそ声が語り合う内 1時間近く眠った

チサが眼を覚ました。


続く。

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