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題名のない物語  作者: 五木カフィ
145/166

お玉の懐妊 そしてチサ

お匙が帰った後 なおもふさぎ込んでいるチサに

みなは不思議がる。「チサ どうしたのじゃ。何を

愁うのか。」お方様は優しく尋ねる。お楽やお夏

今またお玉の懐妊も他人事として捕らえていた。

まさか 自分が妊娠するとは、、、

「お方様 私はどうしていいか分からないのです」

「何をさような。お局様の部屋ではお楽と一緒であった

 ろう。身体を大切に元気な御子を産むことだけに

 尽力すれば良いだけじゃ。わらわは嬉しいぞ。

 わらわに授からなかった御子がチサに授かるとは」と

感激もひとしお「上様もお喜びであろう」 「上様がっ」

「そうじゃ ご寵愛深きそなた そうじゃ宗安が

 すでにご報告しておろうが、我が部屋のチサの事

 こなたもご報告に行かねば、、雪野 そのように」

仕度せよと命じてお万の方は行ってしまった。

残されたチサ(上様が父 そして私が母)胸の内でつぶやく。

お腹に子供がと言われてもまだ実感はない。

だが 紛れもない事実だった。(あの上様がお父さん

私がお母さん)くりかえしつぶやく。信じられない

しかし現実は変わりようもなかった。

(お母さん お父さん お姉ちゃん 私は チサは

 どうなるの)いるはずの無い家族に呼びかける。

そんなチサの苦悩も知らず、宗安からチサの懐妊を

告げられた家光は唖然として「あのチサが懐妊したと

申すか」と信じられぬ様子。今度は「チサが チサがのう」と

破顔一笑 「大事に身体をいとうようお万に申し付けよう

 あのチサがのう」と 心からの笑顔を見せた。

宗安はお玉の懐妊を告げた時の家光の様子と、あまりに

違う事に内心驚いた。おチサ様ご懐妊の噂は野火の

ように、瞬く間に長局中に知れ渡った。

それにショックを受けたのがお玉だ。たった四月の差で

チサが懐妊するとは思っていなかった。

もし 二人共が男子誕生ならば良し だがお玉が姫

チサが和子様ならば格段の差がある。男子なら一国を

与えられ大名になれようが女子なら大名に嫁ぐ嫁になる。

お玉にとってその身分の差は大きかった。

この上は神頼み 仏頼みとばかりに高僧と言われる

人々に祈祷を頼み、神社 仏閣への寄進を惜しまなかった。

もう一人のお里沙は、ただ一人子を授かっていない。

彼女は気落ちしてしまい何事にも覇気がなくなって行った。

姉島はそんなお里沙にハッパをかける。お玉 おチサが

産褥に付く今 お閨に上がるのはお里沙のみと言う事に

なる。邪魔者がいない今こそチャンスとけしかける

のだが、肝心のお里沙が気力の無い上に大奥泊まりも

目に見えて減って行った。一方 チサはと言うと

心配した悪阻も軽く済み と言っても食べ物が鼻について

食欲がない時もあったが、幸い当時はまだ実家の近くの

マンションに住んでいた姉の様子を見ていたのと

母が姉に注意していた事を何とは無しに聞いていたので

嫌な時は無理して食べず、好きな物だけを食べるに止めた。

その変わりに体を動かせた。長局の庭ばかりでは飽きて

しまう為 大奥内のいろいろな庭にまでおよの達を

連れて散歩に出かける。


続く。

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