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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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竹千代君毒殺未遂事件

二の丸の女中部屋で一人の女が、懐剣で咽を突き自害

しているのが見つかったが、人知れず運び出された。

女は1年前に雇われたが品が良く、教養もあるので

お楽や佐和 侍女仲間の信頼も厚く、側近くに勤めて

いたのだった。それだけにお楽達の受けた打撃は大きかった。

その女の背後に何があったのかそれはおいおい明らかに

なるだろうが、、、。お楽は気落ちしていつも怯えた

ような顔をし、食欲も落ちていった。お松は心配して

「お方様 庭の睡蓮が程よく咲き揃いました。

 おチサ様にお目にかけてはいかがでしょうか」

お松の言葉にフッと胸をつかれたお楽は、

「そうじゃ そうじゃ おチサ様にお会いしたい

 そうか 睡蓮が咲いたか」と それにも気づかなかった

様子。あの事件があってからというもの気の休まる時は

なく、気弱なところが全面に出ている。

二の丸御殿には長局の庭のような小さな池 泉水のような

物ではなく広い池があった。睡蓮は大きな池でないと

見応えがない。二の丸は竹千代が住む為 改築して広く

なったので、おのずと庭や池も大きかった。

夏の暑い日 水辺の花は心を和ませる。お楽はすぐに

睡蓮見物に来てくれるようチサに使いを出した。

それだけで心が軽くなるから不思議である。

もちろん家光が来てくれた時も嬉しかったし犯人が

分かった時も嬉しかったのだが、チサはお楽にとっては

唯一気を許せる友 別格だった。二の丸からの呼びだし

を今か今かと待ちわびていたチサは飛び立つ思いで

お楽の元へと急いだ(かわいそうに、、どんなに驚いた

ことだろう)チサは小心者のお楽が心に受けたシヨックが

気がかりだった。御殿の入り口にはお松が迎えに

来ていてチサ達の姿を見ると涙ぐみそうな表情

「お待ち致しておりました。早うお部屋に、、お方様が

 待ち兼ねておられます」 「お松 こたびのことは

そなたの手柄と、家のお方様から聞きました」

「いえ さよう事は」と お松は謙遜してそれよりいっ時も

早くお部屋にとばかり急ぎ足 本当に忠実で心優しい

侍女だった。お楽は座って待っているのももどかしい

らしく、入り側の縁まで来てチサを待っていた。

「おチサ様」 「お楽様」二人はしっかりと手を握り合い

そのままじっとお互い眼を離さない。チサは友の顔に

浮かぶやつれに胸苦しくなった。じっと動かない二人に

お松が「お方様 松がお茶を立てまする」 声をかけた。

いつまでも立っていた二人は頷き合い お楽は上段に

チサは下段に座る。心配りのできるお松はお茶と菓子を

二人の側に置くと、さりげなく人払いをしておく。

もちろんおよの達も心得たもので、次の間に下がり

チサとお楽を二人切りにさせた。


続く。

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