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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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竹千代君毒殺未遂事件

「上様は優しくしてくだされた。チサと同じ様 お閨に

 良く召し出された。なのに一向に懐妊せぬ事を

 どれだけ辛く思ったか、、、人々のが眼が怖かった。

 お褥辞退いと思ったこともある」 初めて聞くお万の

胸中 チサは身を硬くして聞き入った。「されど上様は

そんな不遜な気持ちにいたこなたを、温かく見守って

 下さった。お閨の上がってもお話しするだけの時も

 あった。そんな気遣いをしてくださる上様をお厭い

 する事など出来ようか。わらわは上様に救われた」

今度ははっきりとチサの眼を見つめ お方様は言った。

「チサ 誰にも話せぬ事を打ち明けたのも、そなたが

 かわいいゆえじゃ。そなたの悩み深いものであろうが

 乗り越えねば成らぬ 上様はあのように真っすぐな

 ご気性をお持ちのお方 そなたもそうであろう」

「はい お方様 きっと」今すぐには無理でもきっと

この胸のモヤモヤを晴らそう。そう固く決心するチサだった。

6月に入るとまず 氷室の献上があるが氷室とはいえ

私達の知る氷とは異なり、雪を溶けぬよう洞窟などの

中で固まらせた物だからゴミ等混じり とても口に

できる物ではなく、目を楽しませ触って見る位の物だった。

月の中頃には御嘉祥と言ってお目見え以上の女中に

餅や饅頭 羊羹等をくだされる行事がある。

本来は御台所がお手ずから下される物であったが、

不在の今はお万の方とても家光が代行していた。

年若い女中等は上様の御前とて緊張し、杯に似た入れ物に

餅や饅頭等を入れて貰い、引き下がろうとすると

年輩のお坊主が横から餅を一つ掠め取り、また別の

お坊主には羊羹をという風に次々と取られ、、

御前とて咎める事も出来ず紅くなったり青くなったり

ウロウロする様が可笑しく みな心中ニヤニヤしながら

眺める。大体その被害に合うのはその年入った新参者が

多かった。これも大奥での退屈な暇潰し 一つの癒しの

時間だったかも知れない。7月に入ると七夕の祝いがあり

御座の間の縁端に白木の台をおき、四隅に葉竹を立て

注連縄を張った。台の上には瓜や西瓜 桃等の供物を

盛り付け、お万の方はじめ主たる女達の歌合わせがある。

その7月の下旬 二の丸御殿で人知らぬ一大事件があった。

竹千代君 毒殺未遂事件である。その日竹千代は

いつもの3人の小姓と共に、お八つを食べようとしていた。

3人の小姓吉松 助三 小太郎の内、小太郎は親族の

葬儀があった為 5日ほど休み今日が久しぶりの出仕

だった。竹千代はことの他 喜び自分に出された金玉糖を

彼にさしだし「小太郎 そちの好きな金玉糖じゃ 先に

食せ」と 命じた。いくら仲の良い遊び友達の小姓とて

菓子を一緒に食べる訳ではなく、まず竹千代が食べてから

お下がりを頂くと言うようになっていた。

まぁ 時間差はあれ一緒に食べるには違いないのだが、、

小姓が若君より先に菓子に手を出す事はなかった。


続く。

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