チサの心に迷いが、、、
こうした事は梅山と同年代の女達に知らされ彼女達
にも感謝された。このように大奥においてのチサの
立場も足元がしっかりと固まり、人々から良い話が
聞かれるようになるとお玉やお里沙の心中は治まらない。
お夏は無事男子を出産 その子長松は家光の姉
天樹院の養子となり、盤石な支えがある。それに引き換え
お玉とお里沙は京生まれ京育ちの矜持はあれど
強力な後ろ立てが無い。同じく京出身のお万の方は
自分達とは比べるべくもない公家のお姫様で上様の
寵愛も深い。そのお方様が大奥取り締まり役の大任を
任される事になり、側室の身を捨てた。
絶好のチャンスと張り切ったものの上様は、またもや
あのチサをお万の方の預かりにして、、、と彼女達は
思っていた。そうなると二人にうつ手は無い。
気は焦るばかりだった。だが そんな二人の思いは
いざ知らず季節は巡り、また花は咲き吹き上げの庭には
桜が満開になった。しかし今年は例年よりは慎ましく
行われた。御台所不在はいつものは事として、春日局が
逝去して1年立ってはいない事も理由の一つ
将軍家光の御成りもなかった。それでも奥女中一同
お万の方の引率で広い庭に出向き、そこに出店や
あずま屋風の屋台を作り、商いの真似事などしては
陽が傾くまで楽しんだ。花見が終わると端午の節句
大奥でも二の丸でも世継ぎ 竹千代の為
武者飾りをし、お目見え以上にはチマキや柏餅が
御三家や他の所から献上され、また城内のお舂屋でも
作られた。チサは二の丸へ若君お祝いと称して伺う。
個人的にお楽の方から招かれたものだった。
そこでは、ここにも山盛りのチマキ 柏餅が見ぶくれ
するほどあり、薦められてもそうは食べられない。
竹千代は小姓3人共に佐和と現れた。見ると前回
見た時より一段とたくましく日焼けして、手足も
しっかりとする肉が付き健康そのもの やんちゃ坊主と
言うところか。「チサ よう参った。母上が待ちかねて
おったぞ。今日は何を持って来たのじゃ」と
竹千代は面白い遊びを教えてくれる人と思っている様子
「はて 困りました。チサは女な子 男の子の遊びに
詳しくはありませぬがここに紙を持って参りました」と
およのに持たせた包みを開けると、そこに新聞紙
ほどの和紙が二つ折りにしてある。それを折り紙にして
兜を作ろうと思ったのだ。折り紙には詳しくなかったが
以前 甥っ子に折ってやったことがあった。
チサのできる折り紙は簡単な奴さんとか兜 それに入院
手術をしたクラスメートに、みなで折った千羽鶴位で
あったがともあれお楽達が見守る中 兜を折りお楽に
渡すと、お楽は竹千代の頭にそっと被せる。
竹千代は大きくて軽い紙の兜が気に入り「これは軽くて
いいな。吉松 助三 小太郎のも作れ」と まだ紙が
残っているのを見て言う。
続く。