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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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チサは過去の世界へ

その日のチサのヘアースタイルは背中まで届く長い髪を

一つにくくって半分を髷のように結い残りの半分を

カールしてポニーテール風に垂らしていた。

また 帯は膨ら雀であったからおよのが不思議がるのも

無理はない。チサはおよのと話す内にだんだん気分が

穏やかになり落ち着いてきた。この純朴そうな若い娘と

話していると不思議に心が和んでもう涙もこぼれなかった。

「貴女はおよのさんと言われるのですか」

「ええ ここで旦那様 あの方は梅山様と言って

 お客会釈をなさっているの。私はあのお方の部屋子よ。 

 貴女はなんていう名」 「私は鈴木チサというの」

「おチサさんね よろしく」 およのは丁寧に頭を下げる。

チサはほほ笑ましくなった。この娘とは友達になれそう

な気もしてきた。「こちらこそよろしく。私ここにしばらく

横になっていいかしら 何か頭が痛くて」 さっきから

泣きづめだったので頭がジクジク痛み出していた。

「長旅で疲れているのね。どうぞ 遠慮しないでしばらく

 休んでいるといいわ。私 あちらの部屋に行って

 ましょうか」 チサが頷くと「では 次の間にいます

から、何かしてほしい事があったら呼んで下さいね」と

優しく言って出て行った。 一人になって眼を閉じると

今までの事 特にあの山中老人の家の地下室

両親の悲しげな顔 友人 先輩達 いろいろな人や

いろいろな事柄が次々に思い出されて、またひと筋

ふた筋涙がこぼれた。しかし 先程までとは違って

死にたいと思う気持ちは薄れて来ていた。

せっかく授かった命 助かった命を 今この若さで

失うのは、、、まして自分から死ぬのはなんだか

馬鹿らしくなって来ていた。生きて見ようという

気力のようなものが湧いている。昔の世界の人間と

言っても人に変わりはない。どこまでやれるか

生きれるか分からないが、とにかく死ぬことだけは

止めよう。そうチサ決心した時 「あっ 旦那様」

およのの声がして次の間に先程の老女達が入って

来た。



続く。

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