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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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伊豆守と絹物談義

かしこまって佐和が竹千代達を連れて来ると四人は

緊張した面持ちでチサの前に並ぶ。お楽は佐和や

お松に下がっているように言ったので、チサも

およの達を次の間に下げる。これで二人だけ

お楽は打ち解けた様子で微笑む。

「吉松 おチサ様に何か言うことは」と うながした。

「はいっ」 吉松は背筋をピンと伸ばし「先日は失礼な

振る舞いを致しました。どうぞお許し下さい」と

しゃちほこばって頭を下げる。きっと何回も練習したに

違い無い。その様子は微笑ましく「分かってくれれば

 いいのですよ。もうこれでこの事はおしまいに

 しましょうね。今日は仲直りの為にとみなにお土産を

 持ってきたのですよ。ホラ」と チサは帯の間に

挟んでいた今でいうパラパラ漫画を取り出した。

チサが厚手の和紙に動物や人の絵をひとコマひとコマ

書き込んで綴じたものである。それをパラパラと

早くめくってゆくと書いてある物が動いているように

見えるアニメーションので手法であった。

「ホラ 若君 こうしてパラパラと早くめくるのですよ」と

チサが教えると竹千代達はビックリ仰天 「わぁー」と

声を上げて眼をみはる。「これを見よ。吉松 助三

 動いて見えるぞ。母上 人が走っているように見え

 まする」と 感激してお楽にも見せる。

「まぁ まことに これをおチサ様が作られたのですか」と

信じられない様子。「手間はかかりますが難しいことでは

ありません」と 笑うチサに竹千代達は尊敬のまなざし

「チサ また新しい物が出来たら見せて欲しいぞ」と

竹千代 幼いとは言えお世継ぎ 命令口調で言う。

「はい かしこまりました若君」とチサとお楽が顔を

見合わせてニッコリ。 そこへ少し慌てた様子で

「お方様 上様がお渡りにございます」とお松が告げた。

「えっ 上様が」驚く二人の前に袴をつけず着流し姿の

家光が竹千代会いたさに訪れた。一同うち揃って平伏す

中「おう チサも参っておったのか」と驚く家光

「はい 若君とお楽様に会いたくて」 「それは良い

お楽もそちと離れて寂しがっていることゆえ 度々

 訪ねてやってくれ」と にこやかに言って竹千代に

眼を向ける。すぐさま竹千代は家光の膝もとにかけより

「父上 ご覧下さいませ。チサが面白い物を持って

 来てくれました」と 早速漫画をめくって見せる。

「ほおぅ これは面白い物じゃな。人や馬が走っている

 ように見える。父もこのような物は見た事が無いぞ」と

手に取ってしげしげと見つめ、子供そっちのけで何回も

めくって見ている。「これをチサがどうして持っていた

 のじゃ」 「お楽様にも申し上げましたが、手間は

かかりますがそう難しくはありません。一つの絵を

 少しづつずらして書き、早くめくる事によって動いて

 いるように見せているのです」 「まるでカラクリの

ようじゃ チサは本当にいろいろな事を知っているなぁ」

と感心している。この事は家光を通じてすぐに伊豆守に

伝えられ、絵師に書かせるように命じられた。

命じられた絵師も困ってしまった。悲しいかなそんな

小さな絵本にするような絵を書いた事はなかった。



続く。


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