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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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七夕の夜事件

「それは無用じゃ 元気な男の子にじっとしておれと

 言うのが無理であった。はじめはここにおいて

 行くつもりであったが若君が母上と一緒に行きたいと

 むずかられてなぁ 今は叱られた事も忘れて仲ように

 遊んでいる。吉松も今までと変わりなく若君の相手を

 勤めてくれるよう頼みます」 「有り難き幸せにござい

まする」と 平田は平伏した。実は平田の耳にはチサと

言う上様お気に入りの中臈が、その権勢をカサにきて

御生母を差し置き吉松の頬を2度3度 打ったと聞かされ

ていた。吉松に誠かと確かめたが彼は子供ながらにも

ぶたれた事を恥と思ってか 叩かれてはいない

泣いてなどいないと言い張った。さては乳母の佐和に

言い含められたかと疑ったが今日のお楽の方の話で

良く分かった。そうしてこの噂を耳に入れた人々が

お玉の息のかかった者共だったと、今になって気づく

のである。こうして噂は自然消滅 お玉達はまたもや

悔しさに胸をたぎらせたのだった。チサはこの解決に

お楽の方が動いた事にも驚く。あのおとなしい控え目な

お蘭が自分から吉松の親を呼び付け 事の次第を話す等

昔のお蘭なら思いも依らぬ事であった。

やはり親になってひと回りもふた回りも生長したのだ。

チサは二の丸までお礼を言いにやって来た。

二の丸の玄関には乳母の佐和が自ら出迎えに出て来ている。

佐和はニッコリ微笑み「お楽の方様 先程よりお待ち

かねでございます」 「それは私も同じ事 同じ城内とは

 言え長局と二の丸では、今までより離れてしまって

 寂しいですよ」 「お方様もあなた様の事をお話に

なられます」 「またこのたびはお方様に気づかいをさせて

 しまって」 「お松より大奥での悪い噂を聞いた時

 お方様はサッと顔色を変えられ 何としてもこの誤解を

 正さねばおチサ様に申し訳が立たぬ。今までは幾度となく

 おチサ様に助けられたこの身 こたびはそのお返しの

 一部でもしなければとおおされ すぐさま吉松の父

 平田六衛門をお呼びになり、直談判なさいました。

 その気迫には側に居る私さえも押されるものでござい

 ました」 「そうですか あのおとなしいお方様が

私の為に、、、有り難いこと」 「私もあのようになさる

お方様を初めて拝見致しました。よほどおチサ様の事を

 大切に思っておられるのでしょう。私にはそのような

 お二人がうらやましゅうございます」と佐和も嬉しそう

彼女もまたお松と同じくお楽の方の為に良き友人で

あってほしいと願うのであった。部屋に入るとお楽は

立ち上がって出迎えにきた。「おチサ様」と声も弾む。

このようなところは昔のお蘭のままである。

「お方様 こたびは私の事でいらぬお気づかいをさせて

 しまって申し訳ございません」と 頭を下げるとお楽は

「頑張りました」と ちよっとお茶目に言って笑う

みながビックリしていると「佐和 若君と吉松達を

 ここへ」と命じた。


続く。

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