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題名のない物語  作者: 五木カフィ
123/166

七夕の夜事件

「そなたが悪いのではありませんよ。お楽の方

 子供というものはおとなしく出来ぬものです」と

お万の方は優しい。「今日も二の丸で待っている

ようにと言ったのですが、私と一緒に行きたいと

 わがままを言われて仕方なく」

「良いではありませんか。おかげで久しぶりに元気な

 若君を見る事が出来ました。いつの間にかあのように

 大きくなられていて驚きました」と お万の方が

微笑むと和島達も嬉しそうにうなづく。

ただお玉達は心から喜ぶ訳も無い。第一に自分達より

格下だったはずのお蘭がお腹様になり、頭上に居ると

いう事がそもそも腹立たしいのだ。ひと騒ぎあった

とは言えその後はつつがなく七夕の夕べは終わった

はずだったのが、数日後 妙な噂が長局中に広まった。

チサが子供の手を叩いたのが問題になっているというのだ。

叩かれた子の親が大身の旗本だった為 いかに子供とは

言え中臈の身で手を出すのは怪しからんと

大層怒っていると言うのだ。面目を潰された親子は

お小姓勤めを辞めるとか辞めないとか 話に尾ひれが

付き、いつの間にかチサが叩いたのは小姓ではなく

竹千代君であったとか、手ではなく頭を叩いたとか

どんどん変な方向にねじ曲って行く。

これにはチサも困ってしまった。手を叩いたのは事実

なので下手に弁解するのもおかしい。

行き過ぎだったのかと反省し「お方様 私はあの吉松と

いう子の親に謝った方がよろしいのでしょうか」

困り果てお万の方に相談すると「あのような場合

誰かが言わねばならないことを、そなたが言った

 までの事なれど、、、噂が事実で無いように広がる

 のも困った事じゃのう」と お方様も思案顔

しかし救世主はすぐに現れた。他ならぬお楽の方である。

お楽は大奥で噂が広がりチサが困り果てていると

お松達に聞かされると、これはいけないとすぐさま

噂の元になった吉松の親 平田六衛門を二の丸の

お広座敷に呼び出した。もちろん佐和も同席する。

「平田六衛門にございまする」 四十がらみのいかにも

武士といったような男が平伏する。

「ここへ来てもろうたは吉松が事じゃ」 「吉松めが何か

粗相を」 「いや 粗相と言うほどの事も無いゆえ

 こなたも気にかけずにおりましたが、大奥にて

 妙な噂が聞かれるとの事 ほおっては置けぬと

 そなたに来て貰いました」 「どのような噂で

ありましょうや」 「過ぐる日 こなたは七夕の歌会に

若君といつもの小姓3人共々 大奥御座の間に遊びに

 参りました。若君達は初めはおとなしくして

 おりましたが、やがて飽きて来て廊下を走り回り

 佐和が叱っても聞き入れず、声を上げて走り出す始末

 そこでこなたの最っも親しい友」 ここでお楽は一段と

声を強めて「友のおチサ様が吉松の手を取りやめなさいと

 叱られました。すると吉松は何を思ったかおチサ様を

 睨みつけ、側に盛り付けてあった桃を庭に投げ捨て

 たのじゃ。そこでおチサ様が吉松の手の申をピシャリと

 お打ちになった。吉松は泣き出し他の者も泣きそうに

 なったので、こなたが若君に吉松が叱られるのは

 当たり前の事 食べる物を庭に投げ捨てては成らぬと

 諭し佐和に連れ帰ってもらったのがまことの事

 なのです。それがそなたの気に障りましたか」

「いいえ 滅相もございませぬ。手落ちは我が倅に

 ございまする。歌会をしておられる時に走り回る等

 もしや 若君様がそうであろうとも年かさの倅達が

 お留めせねば成らぬものを、、、」

「それを聞いて安堵しました」 「早速 強く戒めて

おきまする」 


続く。

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