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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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チサ 御膳所に立つ

もともと将軍も御台所と大奥で食事を取る事はあったが

御小座敷で大奥のお広敷御膳所で調理された品と

中奥の御膳所で調理した品を両方 盛り付けて並べ

召し上がる習わしがあったが、家光は御台所を遠ざけて

いた為 春日局存命中は幾度かあったがここ2・3年は

中奥でのみ食事するのが多かったのだ。

思案に余ったお万の方は、上様が鷹狩りにお出かけの

おりを狙って中奥で伊豆守に相談した。

「上様はチサの作る物が食べたいの一点張りで思案に

 くれております」 「まことでござるか」

「賄い方の方々の顔が立つようにと思いますが、

 こなたもそこのところ詳しいとは申せませぬ」

幼い時より炊事場になど立った事のない公家の姫

出身のお万の方である。ここは男である伊豆守に

御膳所の役人や、料理人の機嫌を損ねぬように

話して貰うしか無いと思い詰める。

「さようでございまするな。上様もまたなんと

 おチサ様の事となると、、」 「チサも困っている

ようです。上様に野菜や青魚が身体にいいと言った為

 出過ぎた事になってしまったと、、」

「お身体の為に良いからと申されたのでござるな」

「はい それからはこなたにチサの作る物が食べたい

 から御膳所に申し付けるようにと」

「はて 上様にも困り申した。今までにこんな事は 

 あった試しがござらん。中臈みずから料理を

 作るとは、、、目新しいことが特に好きなご性分ゆえ

 なかなかに諦めるとは思えませぬな。とは言え

 お広敷御膳所の組頭 番頭 料理人達の許可を

 取り付けねば、、お方様 それがしが彼等にゆうて

 見ましょう。単なる上様のお気まぐれだからと」

「ありがとうございます。どうぞお頼み申します」

ホッと一息つくお方様であった。その事があってから

3日後にチサはお広敷御膳所で男の料理人を前に

料理の腕をふるう事になってしまった。

とは言え特別に料理教室に通っていた訳でも無く

母親の手伝いをしていた位だから名のある料理とは

言えずごく普通の家庭料理だったが、そこはそれ

江戸時代とは美的感覚も違う。昔の人から見れば

新しい料理と映るだろう。家光に野菜 野菜と

言った上は野菜メインの見た目に鮮やかな品にしようと

思った。フレッシュサラダをと考えて見たがこの時代

レタスやトマトがあるはずが無い。

しかし胡瓜や茄子 菊菜 大根 人参 その他の

物はあったのでサラダもどきを作ろうと思い、

まずドレッシングやマヨネーズという所から始める。

油 酢 塩はあるが胡椒の無いのが辛い所だが

そうも言ってはいられない。まずはハンドミキサーも

泡立て器も無いので思いついたのが茶筅である。

お茶を立てる時に使う竹の茶筅を泡立て器の代わりに

しようというのだ。使いの者になるべく大きな茶筅をと

頼んで、待つ間に卵を白身と黄身に分ける。

今夜のメニューは鯛の刺身をカルパッチョ風に

した和風サラダと海老しんじょのお澄まし

生で食べられる野菜とゆで卵 鰆のソテー野菜ソース

がけというところか、、、なにしろ市場に行って

選んで買って来た物では無いから、今そこにある

食材だけで作らなければならない。



続く。



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