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題名のない物語  作者: 五木カフィ
112/166

チサと伊豆守 中奥で

チサは初めて入る中奥につい緊張してしまい、

控えの間に入る時 つまずいて転びかけた。

お鈴口まで二人を向かえに来ていた小姓のクスリと

笑う声が聞こえる。チサは何事もなかったように

澄ました顔で座り、しばらくすると坊主頭の年輩の男が

一人廊下に現れ手をついて「おチサ様であられましょうか」

と尋ねる。「はい」チサが答えると「間もなく松平伊豆守様

おこしにございます。今しばらくのお待ちを」と一礼して

立ち去った。だが 待つほどもなく先日会った伊豆守が

姿を現した。先程のお坊主は廊下の離れた端に座り

人が来ぬよう見張り役を勤める。伊豆守は平伏すチサに

「まぁ お気楽に」と 声をかけ自分も相対して座り

「初めての中奥とて恐ろしき所でもござらん。おくつろぎ

 下され」と優しく言う。「はい」 「それがしにご用で

ござるな。何か分かった事がありましたか」

「はい 思い出した事が、、伊豆守様 今この時代

 お旗本と大名との確執とか、急にご浪人が増えたとかで

 問題が起きてはいませんか」 「さて、それは、、、」

伊豆守は口ごもる。実は様々な問題はすでに起きていた。

外様大名の池田家の家臣を切り捨てて脱藩した男が

江戸の旗本の家に匿われ、池田家との間に下手人を

引き渡せ 渡さないの騒動になり、幕府を巻き込む

大名対旗本の意地の張り合い 面子の立て合いになり

大勢の死人 怪我人を出した。また旗本と町民の間でも

いさかいは絶えない。

「おチサ様には 何か思い当たる事がお有りかな」

「そうですね。私達の時代に残っている史実で私が

 覚えている事と言ったら、外様大名と旗本のいさかい

 伊賀上野の仇討ちとか旗本と町奴のいさかい

 水野 何とか言う旗本と町奴の頭 幡随院長兵衛

 それと浪人達が徒党を組んで幕府に反旗をひるがえし

 た由井正雪の事件ぐらい あっそれから有名にな

 島原の乱」 「分かり申した」なぜか伊豆守は慌てた

ようにチサの言葉をさえぎった。事実 島原の乱と

伊賀の仇討ち事件はすでに起きていて一応の解決済みで

あった。ことに島原の乱は伊豆守も参戦し、その結末

には胸にじくじ足るものが残る。

「さっき言った由井正雪の事件 なんて言ったか慶・

 慶なんだったか忘れましたが、それは家綱様の

 時代だったと思いますので、まだまだ随分先の事と

 思われますが戦が無くなり、お家取りつぶしとかで

 働く場所の無くなった人がたくさんおられるのでは

 無いでしょうか」 「さ それは」実は伊豆守に

とっても頭の痛い事柄の一つであった。

「されど 各大名家においては不穏の動きをする者も

 ありと密偵より知らせがござる。蓄財をし武器

 火薬などを集める等は見捨ててはおけぬ」

「だから参勤交代を決めたのですね」 「と申しますと」

「江戸と国元を1年ごとに往復させる事により費用が

 たくさんかかります」 「ああ その事でござるか

確かにその政策は行っており申す。それにより街道も

 整備され、本陣をおく町も発展いたす」



続く。

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