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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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チサと伊豆守 中奥で

「私もそなたが来てくれると賑やかになって楽しみです」

「賑やか過ぎてきっとお困りになりますよ。

 でも私はとても嬉しゅうございます。いつこちらに

 移って来たらいいのでしょう。早速 用意せねば」

「いつでも良いのですが、こちらも少し用意しなければ

 なりませぬ。3日後はどうであろう」

「畏まりました。早くお方様のお側に参りとうございます」

大喜びで帰っていくチサ その後ろ姿を見送るお方様は

あのチサに伊豆守が言うような特別の力があるとは

信じられない気がした。ともあれやんちゃな妹が

できるようで楽しい。その日から3日後チサはお万の方

預かりの中臈チサとして部屋に移って来た。

侍女は今まで通りおよの おこう かな江の3女になり

藤波他 局の部屋にいた女中達は、ある者は実家に帰り

ある者はそれぞれの役付きになり、また他の部屋の

侍女になった者もいてバラバラになってしまった。

およの達は今までの堅苦しい局の部屋から若いお万の方の

部屋に移ってきて、華やいだ気分になり他の部屋子達から

羨ましがられた。また家光も喜んだ。

彼は自分の愛しい人二人が仲睦まじく暮らすと聞いて

安心した。家光にとっても大奥にとっても春日局の

死去は悲しい事には違いなかったが、頭上の重しが

取れたような明るい気になったのも間違いのない事である。

ともあれ長閑な日々は何事もなく続き、竹千代は

四歳になりチサの指導よろしく 小さいながら身体を

良く鍛えたので、以前のような影の薄さは消え四歳の

男児らしく溌剌としている。2.3歳年上の小姓と

いうか遊び相手の子供達と庭を駆け回り 草の上を

転がって良く遊び、良く食べるので眼は輝き頬は

紅くそまって健康そのもの やんちゃぶりを発揮して

女中達にいたずらを仕掛け右往左往させて喜んでいる。

その様子を眺めるお楽も佐和も嬉しそうで本当に

幸せな姿だった。

ある日 お万の方は散歩をよそおいチサを庭先に

連れ出し伊豆守から托された事柄を伝えた。

「伊豆守様より聞くところによると、そなたには

 特別な能力があるとか」 「そうでしたか

あの御方がお方様に私の事を頼まれたのですね」

「そうです。でもお局様がチサを頼むとおおせられた

 のも本当のようですよ。あの御方はお局様が

 亡くなられる5日前にそなたの事も大奥の事も

 こなたに頼むと聞いておられたとか」

「そうなのです。大奥の事は存じませんでしたが

 私の事は頼むと言われたと伊豆守様にお会いした時

 聞かされました」 「それでそなたは先の事を占う

事ができるとか 本当ですか」 「占いではありませんが

先に起こる事が前もって分かる事が少しあるのです。

 でもそれは本当に少しなので自分でも歯痒いくらい

 なのです」 「そうですか。その分かって事柄について

伊豆守様と語り合う時 その手伝いをして欲しいと

 先日 こなたに頼まれました」 「どういう事でしょうか」

「そなたが話し合いたい時 中奥へこなたの侍女に扮して

 連れ参るとの事」 「お方様の侍女として」チサは驚いた。

さては伊豆守の言っていた会う手だてとはこの事

だったのか。「そうです。そなたが話したい時こなたに

ゆうてくれれば中奥に参り、こなたは上様に、、

 そなたは侍女の控えにて伊豆守様と という手はずに

 なる。またこれは上様には内密にしておかねば

 ならぬ事ゆえ、心しておくように」 「分かりました」


続く。

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