表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
題名のない物語  作者: 五木カフィ
109/166

チサと伊豆守 中奥で

実は彼女は大奥総取り締まりの役に決まった時から

心中ひそかに決心していたのだ。

この際 思い切って側室という身を離れ大奥の役職に

のみ、専念したいと、、、若き日 初めて京より江戸に

伊勢の慶光院の尼として将軍に挨拶に来た時

無理に還俗させられて側室になったこの身ではあるが

今はその時の恨み 苦しみも年月と共に消えたと言う

より、家光の変わらぬ愛に包まれ愛される女としての

喜びも知った。しかし 天の怒りか仏の怒りか今までの

年月 ついに御子を授かることができなかった。

幸い現在はお楽の方により竹千代君をもうけられて

いるしお夏もまた、、、家光の愛を一身に受けていると

言われながら一向に受胎せぬ身を周りの人々は、

正面きっては言わぬが陰でこそこそ言われる辛さ。

人知れぬものがあった。亡き春日局の態度には

その不満がみちみちていたと思われるがお玉 お里沙

お夏 お蘭の4女を新たに側女として召した後も

家光の愛は変わらなかった。

それゆえあの日 上様に側室ご辞退を願い出たとき

上様は慌て驚き 必死に留めようと為された。

事実 家光はチサとは正反対と言っていいお万の方を

深く愛していた。初めて自分が好きになれた女だったし

一緒に暮らした年月も一番長い。

だが彼は、最後には許した。お万の方の申し出を

受け入れた。夜 閨で会えなくてものこれからは

中奥で会える。それもまた新しい彼女の一面を知る事が

できる。家光の愛は形は変われど決っして無くなりは

しない。お万の方は清々しい気持ちで大奥での仕事に

励んだ。伊豆守と面会した翌日 お万の方は自分の

部屋にはチサを呼び寄せた。「お呼びと伺い参じました」

チサは廊下で平伏する。大奥取り締まりのお方様に

対する礼儀であったがお万の方は驚いたように

「まぁ そのように堅苦しく」と 日頃のチサを見て

いるので神妙にしているのが何となく可笑しい。

「遠慮せずにこちらに入るが良い。これからはこの部屋が

 そなたの部屋にもなるのですから」 「ええっ」

聞いたチサはびっくり仰天 「春日局ご遺言の中に

 そなたの事を頼むと言いおかれたと、伊豆守様より

 受けたまわりました」 「まぁ お局様が私をお方様に

嬉しい なんて優しいお心使いでしょう。お局様は

 私が常日頃お方様のことをお慕いしているのを

 ご存知だったのですね」」と チサは手放しで喜ぶが

お万の方は素直にそうとは思得ない。チサは春日局に

疎まれいろいろな意地悪をされていた日々を知らない

のだから、、、しかしその局も今はもう天界の人

昔の事は今日限り水に流そうと心清らかに決心する

お万の方であった。


続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ