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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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春日局の死 その後

こうして伊豆守の策略通り大奥取り締まりの大役は

めでたくお万の方と定められた日の3日後

彼は大奥お広敷きの間にお万の方を訪ねた。

薫きしめた香と共に美しい掻い取りの裾をさばいて

お方が座に落ちついた後 伊豆守はまず就任の祝いを

のべた。それに対してお方は丁重にお礼をのべ

「本日の御用向きはその事でございましたか」と微笑んだ。

いや その位の事で伊豆守が自分を大奥まで訪ねて

来ることはないと知っていて、話やすいように水を

向けたのだ。そんな賢さが彼女にはある。

「それもございますが御舎弟の事でちと」と 嘘をつき

思いありげにお万の方にじっと眼をやる。

その様子を察したお方は、側に居並ぶ侍女達に

「下がっていや」 ひと言人払いをさせる。二人切りに

なった部屋で彼女は「まこと氏豊の事で参られたの

でしょうか」と 心配顔で尋ねた。腹違いとはいえ

血の繋がった弟の事はやはり気にかかる。

「いや 実は他をはばかって、ああ申し上げたまでの事

 御舎弟には何の不都合もございません。

 上様のお覚えもめでたく日々 忠勤に励んでおられる」と

言ってひと膝進み寄り「実は亡き春日局様のご遺言を

お方様にお伝えする為に参ったのでござる」と声を低めた。

お万の方は驚き「お局様のご遺言 まだ他にあったのですか」

「さよう この事は伊豆のみが亡くなられる5日前に

 お局様より直に聞かされた事でござる。上様も

 ご存知ない事でございます」 「それはいったい

どのような事でございますか」 「さればでござる。

お局様におかれては、あの中臈おチサ様の事を

 ことの他 お心にかかるご様子でした」

「チサの事をですか、、、どうしてでしょう。

 明るく人柄も良い人と思いますが」

「それがしもお会いして見て、そう感ぜられました。

 なかなか才気活発なお方で」 「ええっ伊豆守様は

チサとお会いになったことがあるのですか」お万の方は

びっくりして息をのむ。「お局のふた七日の日鱗梓院にて

会い申した。それもお局様のご遺言の為でござる」

「訳が分かりませぬ」 「これより詳しくお話致しまするが

この事は一切 他言なきように願いまする。上様にも」

「心得ました」 「先程 申しましたが、これはみどもが

 お局様の死去なさる5日前に直にお聞き申した事

 でござる。局の申さるるにはあのおチサ様は他の

 人に無い力をお持ちとの事 つまりこれから後に

 起こる事を前もって知る占い師のような」

「あのチサがですか」 信じられぬと言うようにお方は

伊豆守をまじまじと見つめた。「それが ご本人でも

 占いであって占いでは無いと言うようにはっきり

 説明は出来ないとの申されまして、、、

 当たる事もあれば外す事もあると、、だが今までに

 徳川の為になったことは数々あるとお局様も

 申されておりました。しかし それを直接上様に

 告げられては困ると言うことでお局様が事前に

 今までは聞いておき、より良い方向に取り計らって

 来たそうでござる」 「そうですか」

「その役目を今度は それがしが引き受けることに

 なり申した。それにつけては時々 会う必要がござる。

 それでお局様と知恵を絞り考えついたのがおチサ様を

 お万の方様の侍女と言うことにして中奥へ来て

 頂くということでござった」

「それでこの度の侍女付き添いが決まったのですね」


続く。

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