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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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春日局の死 その後

「少し話が分かりにくうござるが竹千代君のお名も

 お楽の方様のお名も、今また四代様のお名も

 口にされましたが誰一人 知り得ぬ事を言い当てたと

 お局様は驚いていらっしゃいました」

「そうですか それは私が学校 今の世では寺子屋や

 学問所ですね。そこで習った事を覚えていたから

 です。ですから これから先 起こる事がすべて

 分かる訳では決っしてございません。後の世に

 残っている本や教科書に書かれているのはこの時代の

 ほんの一部の事 大きな出来事だけが書き残されて

 いるだけですもの。ましてその上にその中から私が

 覚えているのは本当に少しだけです。残念ながら」

もっと日本史の時間に先生の授業を身を入れて聞いて

おけばよかったと、今さらにして思う。

チサは綺麗に掃き清められた庭の竹帚の跡を眼で

なぞりながら、側に伊豆守などいないかのように

一人言をつぶやく。「四代将軍家綱 五代将軍綱吉

六代将軍家宣 徳川家は十五代慶喜まで続きます。

 五代将軍綱吉は家綱の子ではなく家光の子です。

 私はそれを防ぐ為に家綱 つまり竹千代君に

 丈夫に育って貰い、将軍職をまっとうして五代様に

 引き継いで欲しいのです。綱吉はいけません」

「それはまた何故 同じく上様のお子であろう」

今まで黙っていた伊豆守がその時 鋭く尋ねた。

「五代将軍綱吉は 別名犬公方と呼ばれ、生類憐れみの

 令なるものを出して万民を苦しめるからです。

 綱吉も最初は善政を行いみなに喜ばれるのですが

 家綱同様 子供運に恵まれずたった一人授かった

 のは姫君でした。ですから綱吉の母 桂晶院が心配して

 自分が若い時から信奉している隆光なる僧侶に相談

 したところ、隆光は{上様は動物を大切になされぬから

 若君に恵まれない。動物を大事になされますように}と

 言いましたそうな、、、それ自体は良い事 動物を

 大切にするのは良い事ですが、何事にも限度があります。

 桂晶院は隆光の言葉を鵜呑み 真ともに受け取り

 すぐさま綱吉に薦めて生類憐れみの令を発令させました。

 綱吉は戌年生まれであった為 特に犬は大事にされ

 犬を怪我させたり乱暴に扱った者は牢入り 犬を

 殺した者は子供でも死罪と言う馬鹿げた法令を定め

 たのです。その為 犬役人や犬医者まで出来 人間より

 犬を大切にするというおかしな世の中になり、人々は

 多いに困り果てたと歴史には書いてあります」

「それはまた法外な事を」 「そうでしょう。その上綱吉は

柳沢出羽守というお気に入りの側用人の言うことばかり

 重くもちいて、仕舞いには政治は出羽守に任せきって

 自分は外国から贈られた珍犬ばかり 数十匹も集めて

 喜んでいたそうです。お上がそのようだから武士や町民

 も次第に奢侈に流れ 着る物 食べる物 みな派手に

 華々しくなって来て、私達の世でもその時代の事を

 元禄時代 と呼んで他の時代とは区別しているほど

 なんです」



続く。

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