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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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春日局の死 その後

頬を染めるチサに「ところで春日局様より何か聞いて

おられるかな」と 尋ねる。「はい お見舞いに参りし

あの夜 お局様は枕元に私をお呼びになり、後の事は

 伊豆殿にゆうてある。会って話すのじゃと言われた

 時、発作が起きていけなくなられました」

「そうでござったか いや実はあの日より5日前

 それがしがお屋敷に伺ったおり、あなた様の事を

 相談されましてな」 「私の事を、、いったいどういう

お話しで」 「その事はいずれまた 和島殿を通じて

 お会いした時申し上げよう。今日はこのように人目も

 多く騒々しい中でもあり、落ちついて話も出来ぬ。

 それゆえ顔繋ぎにとどめて置きましょう」と言って

伊豆守は立ち上がり、何か言いたげなチサに

「和島殿と計って会う日取りを決めますゆえ お越し

 下され では これにてごめん」と さっさと出て

行ってしまう。後に残ったチサはまるで狐につつまれた

ようにサッパリ訳が分からない。局はいったい何を

伊豆守人相談したのだろう。その謎が解ける日が

案外早く訪れた。それは春日局のふた七日の日だった。

初七日と違いごく親しい人のみが麟梓院に参るので

人目につきにくい。本堂より離れた寺のひと間で再度

伊豆守と対面した。挨拶がすむとチサは

「お聞かせ下さい。お局様は何をあなた様に相談なさった

 のですか。私の事はどのように聞かれたのですか」と

いきなり単刀直入に尋ねた。あれ以来 気になって

仕方がなかった。真剣なチサに伊豆守はニコニコしながら

「されば おチサ様のざれ言でござる」 「ざれ言 では

お局様にお話した」 「さよう 聞けばおチサ様は300

年余の後の生まれとか」 「そうですか お局様はそれを

 あなた様に、、では 私の言った事信じていて

 下さったのでしょうか」 「いや お局様も我等も

そのようなこととても信じられませぬ」 「では何故

私をここへお呼びになったのです。口止めの為ですか」

キッとなってチサは伊豆守を真正面から睨みつける。

(ほう これは気の強い女な子じゃ) 「それならば

無用の事 他言するつもりはありません」

「そう願わしゅうございますな」 笑顔を絶やさず

伊豆守は言う。まるでチサをからかっているようだ。

頭にきたチサは「では 失礼します」と お辞儀も

そこそこに立ち去ろうとする。「まあ そうお急ぎに

ならず睨みつけ話はこれからでござる」 伊豆守は

慌てた表情を作って押し止める。

「他言しては下さいますな。なれどこの伊豆には

 お話下さい」 「どういうことですか」

「おチサ様の申される事 伊豆に取ってはとても

 興味がござる。お局様が申されるにはあなた様は

 今より300年余り後の世の方であり これから

 先に起きる様々な事が前持ってお分かりになるとか」

「前持って知っていると言うには、語弊があります。

 私が生きていた時代まで史実として、残っている

 から分かるのです。その史実が正しいか間違って

 いるかはその時代 つまり三代将軍の頃の日本を

 実際 見た人が書いたのかどうかは分かりません。

 だって今でも、平安時代や源氏や平家の物語でも

 事実に添って書かれているかどうかは伊豆守様が

 その時代に行って調べる事は出来ないでしょう。

 それと同じなのです。でも四代将軍家綱様のご生母が

 お楽の方だったのは史実通りだったなと思ってます」


続く。

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