初めは楽しかった。
時は春3月 ある日の午後だった。
時は春3月 ある日の午後だった。
今 この閑静な住宅街を夢見心地でいる若い女性
名前は鈴木チサといい 今日彼女は友人の結婚式に
出席しての帰り道だった。(綺麗だったなぁ 礼子
なんて幸せそうな顔していたかしら。私も好きな人と
結婚っていう時はあんなに美しく綺麗になれるのかな)
等ととりとめのない事を考えながら、一人静かな舗道を
歩いていた。つい 10分ほど前まではもう一人の
友達と一緒だったのだが、彼女とも別れ楽しく物思いに
ふけっている。 ここからチサの家までは後 2、30分
歩かなければならない。振り袖を着ている事だし
本来ならタクシーか電車で帰るところだが、ちょうど
こちらの方角に帰る友達もいた事だし、早春とは言え
今日はとても暖かく心地良いそよ風に誘われ親友だった
花嫁の思い出話に花を咲かせながら帰って来たのだった。
この辺りを通るのは初めてだったが、広い庭の付いた
大きな屋敷が立ち並ぶ静かな街だった。
どこかの家からなめらかな調子のピアノが風に乗って
流れて来る。遠くの方では子犬のじゃれつく声
チサは楽しげに歩いていた。今夜は嫁いでいる姉が
久方振りに子供達を連れて帰って来るはずだった。
(あの おしゃまな里美ちゃんはいくつになったかなぁ
もう3歳か その上に今夜は婆亜馬鹿 爺馬鹿が加わって
賑やかだろうなぁ)と その時 突然シャーと激しい水音
がして足元から水が噴きだして来た。