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幼女オブトゥモロー  作者: オーロラソース
3/47

第3話 黒鉄兵《ゴーレム》(改訂版)

 前話までが実質プロローグでしたので、この話から文章の雰囲気が変化しています。


 正確には、「視点」や「人称」が変わっています。


 違和感を感じるかもしれませんが、今はまだ試行錯誤の最中ですので、どうか優しく見守って下さい。


 お願いします。




 自らを囮にした作戦、『オペレーションキタミシホ』の成功に気を良くした幼女は、犬鍋の残りを飲み干すと、剥ぎ取った黒い毛皮を着ぐるみのように被った。


 白銀の髪と新雪のような白い肌に、黒い毛皮のコントラストが映える。


「ようやく全裸も卒業か……」

 感慨にふける幼女の頭の中には、黒い毛皮に身を包んだクールな自分の姿が思い浮かんでいる。


 鏡があればいいのだがな。幼女はそう思い、辺りを見回してみるが、この樹海には、鏡代わりになりそうな物などそう転がってはいない。


「少し探してみるか」

 幼女は呟き、森の中を歩き出した。小さいあんよを一歩踏み出すたびに、黒い毛皮がふわりと揺れて、白い肌に優しく触れる。


 この時幼女は、周囲の空気に不快な変化を感じていた。しかし彼女は、その感覚から意識を逸らし、あえて気づかない振りをする。


 これは、気のせいに違いないと。


 少し歩いた先に、派手な毛色をした巨大な猿達がたむろしていた。彼らの中心には、小さな泉らしきものが見える。


「どけ、エテ公ども、その派手な毛引っこ抜くぞ」


 平和を愛する心優しき幼女は、CMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック)四色の毛色をした猿達に、鉄拳を用いた話し合いを強要し、泉を譲り受けることに成功する。


 話し合いを終えた猿達の毛色は、CMYKの四色から、赤(C:0、M:100、Y:100、K:0)一色に変わっていた。


 幸いにも、泉の水面は穏やかで、水は透き通っていた。幼女は浮かれた足取りで駆け寄ると、水面を覗き込み、自分の姿を映しだす。


「これは……熊本県の営業部長兼しあわせ部長!」


 そこには、小さめの『くまモン』が映っていた。


 イメージと違う……その愛嬌たっぷりの姿に愕然とした幼女は、少しでも印象を変えようと、様々なポーズを試してみる。


「おかしい……」

 短い手足にずんぐりとした黒い体、大きな瞳と少し赤らんだ頬……動くたびに幼女は、その意思に反してくまモンへと近づいていく。


「私は竜だ! 破壊の化身だ! 断じてマスコットなどではない!」


 幼女は叫ぶ、自分は危険な存在なのだと。


「よし、私の恐ろしさを教えてやろう。手始めにパンダとシロクマを黒く染めて、クマ牧場で働かせてやる。もちろん、普通のクマとしてな」


 邪悪な笑みを浮かべる幼女は、いつの間にかクマ視点になっていた。


 そして、幼女くまモンが、その邪悪な野望を実行に移そうと動き出した――その時である。


 幼女の鼻腔を、凄まじい衝撃が突き抜けた。


「ああ! やっぱりクサイ! お爺ちゃんの入れ歯よりもクサイ! しかも、くまモン!」


 幼女は激怒した。

 必ず、かの邪智暴虐の毛皮を脱がねばならぬと決意した。


 今までずっと、気づかない振りして我慢していたのである。


 幼女は悪臭を放つ毛皮を脱ぎ捨てると、足で踏みつけグリグリにじる。そして、近くを歩いていたCMYK猿を殴り飛ばす。


 八つ当たりである。


 怒れる幼女は『カジノ』のジョーペシのごとく危険であった。


「この怒り、誰にぶつけてくれようか」

 全裸に戻り、ジャイアニズムの化身と化した幼女は、獲物を探して樹海を徘徊する。


 そんな幼女の視界の端を、黒い人影がスッとよぎった。


「貴様の死因は二つある。一つ目は、今日この時間、この場所を通ったこと。そして二つ目は……この世にくまモンが存在することだ!」


 理不尽な理由を叫び、人影に幼女が襲いかかる。華麗なタイガーステップからのローリングソバットが炸裂する。


 影は弾け飛び、何本かの木をへし折った後、大岩にめり込み止まった。


「かたいな」

 幼女の右足に、鉄のかたまりを蹴り飛ばしたような感覚が残る。影の吹き飛んだ方角からは、岩の崩れる音がする。


「ほう、生きているか」

 笑みを浮かべる幼女の視線の先で、黒い人影はゆっくりと立ち上がった。


「コーホー」

 感情の感じられない呼吸音が響く、ダメージは無いようだ。


「まさか、彼は……」

 見覚えのあるその姿に、幼女は驚愕の声を漏らした。


 黒い体は、甲冑を着た兵士のようにも見える。顔には仮面がついている。頭には黒く丸みをおびた兜、左手には長い鉄の爪、生き物のような、機械のような、奇妙な印象を受ける。


 ソビエト連邦、ファイティングコンピューター、ベアークロー、100万パワー……いくつかの単語が幼女の頭をよぎる。


「ウォーズマン……」

 突然の有名人との遭遇に、幼女はゴクリと息を飲んだ。


「コーホー」


「……本物?」


 幼女とウォーズマン(仮)、向き合う二人の間に緊張が走る。


「やあ、はじめまして、ウォーズマンさん」

 幼女は緊迫した空気を和らげようと、にこやかな笑顔でウォーズマン(仮)に声をかけた。


「私は、えーと、どう言えばいいのかな、実は名前がないんだよ。親が、名前をつけるのを忘れたまま死んじゃってね。それで、名前は名乗れないんだけど……怪しい者ではないよ」

 森の中を裸でうろつき回り、名を名乗ることも出来ない怪しい幼女は説明する。


 自分は怪しくないと。


「服を着てないのは……その、趣味とかじゃないんだ。臭いとか、くまモンとか、色々あってね。あ、そうそう、実は毛皮だから脱いだんだよ。ほら、ハリウッド女優なんかにもいるだろ、『私、毛皮は着ないわ、残虐超人みたいだもの』とか言う奴、私も同じだ、目覚めたんだよ。動物愛護のスピリットに」


 自分で剥いだ毛皮を纏い、罪のない猿をしこたま殴った幼女が、偽りの動物愛を語る。


「コーホー」

 ウォーズマン(仮)は、これしか言わない。

 

「なんか違う気がする……似てるけど」

「コーホー」以外話さないウォーズマン(仮)を幼女は怪しむが、万が一の可能性を考えると強気に出ることもできない。


 彼女は企んでいた。もし、彼に取り入ることが出来れば、若干キャラが被っているミートを押し退け、正義超人の仲間入りが出来るのではないかと。

 

「あ、そうだ! ロビンマスクは一緒じゃないのか? いるなら是非会いたい。ロビンが駄目なら、他の超人でもいいよ。スペシャルマンとか以外なら――」


「コーホー」


「おい貴様、大概にしろよ。コーホーしか言えんのか」

 

「言語の類型に大きな差異があるため、意思の疎通は困難です」


「お、ようやく喋った……しかし、何を言ってるのかさっぱり分からんな」

 ロシア語とも違うようだが、と幼女は首をかしげる。


 ウォーズマン(仮)の喋った言葉は、幼女には理解できない言語だった。


「状況の異常性から、対象の転生者の可能性は高いと判断します」


「言葉の意味はよく分からんが……」


「これより、転生者確認テストを実行します」


「とにかく……知りたいことは分かったよ」

 幼女は落胆の声を漏らすと、ウォーズマンもどきに対して、怒りの視線を向ける。


「その感情のない声……それは、彼のものではあり得ない。半分が機械の体、醜い素顔、正義超人になってからの勝率の低さ。彼は常に苦悩の中にあった。それでも彼は戦った。友のため、正義のために……」


 幼女は、不遇の中で戦い続けたファイティングコンピューターの人生を思う。


「だが、貴様からは何も感じない。ロボ超人の苦悩も……そして、燃えるような友情パワーも!」

 

 幼女は叫ぶ。


「つまり貴様は……ウォーズマンではない!!」


 幼女は加速し、言葉を発しようとするウォーズマン(偽)の懐に潜り込む。


はやきこと、風のごとく!」

 ロボ超人(偽)をダブルアームの体勢にとらえ、竜巻のように回転して投げとばす。


しずかなること林のごとし!」

 ローリングクレイドルで空中へ上昇する……のは物理的に難しいので、一旦技を解き、放り投げる。


侵掠しんりゃくすること火のごとく!」

 そして、空中でとらえたファイティングコンピュータ(偽)をパイルドライバーで地面に串刺しにする。


「よくも騙してくれたな」

 理不尽な言いがかりを呟き、幼女はウォーズマン(偽物)を地面から引き抜いた。


「……転生者……確認…………テスト実行……」


「クク、やかましいぞ、今は肉体言語でお喋り中だろうが……」


 幼女は笑う。


「さあ、フィニッシュだ。動かざること山のごとし」


 しまいは、ウォーズマンのフェイバリットホールド。


「冥土の土産……パロ・スペシャル!」


 黒い体がギチギチと悲鳴をあげ、鉄の仮面にヒビが入る。


「48の殺人技No.3、風林火山……死ね、まがい物が」


 幼女は呟き、黒鉄兵ゴーレムの両腕を破壊した。



黒鉄兵ゴーレム

 クロガネ兵とも呼ばれる魔物。

 樹海でしか棲息が確認されていない希少種で、防御力が非常に高い。

 基本的には大人しく、危害を加えない限り襲って来ることはないが、稀に狂暴化することがあり、その際には体が赤くなると言われている。

 また、赤化する前には言葉を話すという噂もあるが、その姿を見て生き残った者はほとんどおらず、信憑性は低い。



 当然、ウォーズマンとは何の関係も無く、まがい物でもない。


 全ては、幼女による言いがかりである。


「…テ……ト開……始…」

 立ち去ろうとした幼女の背後で、半壊状態のゴーレムが立ち上がる。


「しぶとい、さすがにウンザリだな」

 幼女は振り返り、ため息まじりに呟くと、ゴーレムにトドメを刺すため歩き出す。


「ちびまる子……」 


 ゴーレムの声に、幼女の足がピタリと止まった。

 

「貴様、今なんと言った? さくらももこ……いや、ちびまる子と言ったのか?」


「反応……アリ、……再……テス…実行」


「どぉこでもドア~」


「……ああ?」

 ゴーレムのモノマネに、幼女の表情が変わる。


「反応強、転生者の可能性大、処理モードへ移行」


「黙れ……」

 ファイティングコンピューターもどきが、猫型ロボットのモノマネをする。


 しかも、似ていない。


 幼女は激怒した。


 必ず、かの邪智暴虐のファイティングコンピューターを除かねばならぬと決意した!

 

「レッグラリアート!」

 怒声と共に、黒鉄兵ゴーレムの頭を幼女のあんよが蹴り砕く。


 幼女の足元に横たわるゴーレムの残骸は、いつの間にか赤色(C:0、M:100、Y:100、K:0)に変わっていた。


元々このゴーレムは転生者の存在を匂わす為のものでしたが、色が黒かったせいで、いつの間にかウォー○マンになってました。


よくあることです。


では、スペシャルサンクス。



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