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幼女オブトゥモロー  作者: オーロラソース
26/47

第26話 再会《ナイジェリア》

サブタイにナイジェリアとありますが、あまり関係ありません。


気にしないで下さい。


今日も、読んでくれるかもしれないあなたに感謝を……


ありがとうございます。

「何だ、お前達は……」


 まるで、狼に人の手足が生えたような黒狼の獣人が、ピートを睨みつける。強い敵意と警戒を宿した眼光の迫力に、ピートは軽くお漏らしをした。


「わ、私は、ディルハムからやって来ました。行商人のピートという者です」


 ピートが震える声で答える。お漏らしでズボンの前がシミになって恥ずかしいが、今は我慢だ。


「商人? 後ろの二人もか?」


 黒狼が後ろの男女に視線を移す。


「いや、俺達はハンターだ。人探しのついでに、この人の護衛をやってるんだ」

 男が答える。


「この村にさ、聖女様……たぶんハルートって名前だと思うんだけど、いないかな?」

 男の連れの黒髪の女が黒狼の獣人に尋ねる。


「貴様ら、ハルート様の知り合いか」

 黒狼の視線が鋭さを増し、ピートの股間も冷たさを増した。


「友達……だと俺は思っているよ。それに恩人でもある。そんなに警戒しなくても、アイツをどうこうできる奴なんていやしないだろう?」


「ふん……貴様ら、名前は何だ」


「俺はアラン、こっちはミカだ」

 黒狼の問いかけにアランが答える。


「ここで待っていろ、ハルート様を呼んでくる」

 黒狼が、三人に背を向け歩き出す。


「やっと会えるな……」

 呟くアランの目には、喜びの涙が浮かんでいた。




「ハルート……久しぶり」

 そう告げる男の目には涙が浮かび、感動しているのか、あるいは尿意を堪えているのか、その肩はブルブルと細やかに震えている。

 

 こいつ名前なんだったけ……幼女はとりあえず見覚えのあるその男の名前を思い出そうと、記憶の引き出しを次々とあけていく。


 アモン……違うな。アムロ……これはパイロットだ。アライ……は野球選手だし、アカギ……は闇に降り立った天才だ。


「久しぶりだな、え……と確か……アポロ?」

 幼女はちゃんと覚えていますよ、みたいな顔をして男に声をかけた。

 

「え? 俺、アランだけど……」

 幼女の衝撃発言に、アランは冗談だよね、といった表情で返事を返す。


「知ってたよ……敢えて間違ってみたんだ」

 幼女は表情を変えないまま、さらりと意味不明の噓をつく。


「え? どういうこと?」

 アランは困惑の表情を浮かべている。


「まあ、気にするな、些細な事だろ」

 幼女は面倒臭そうに答えると、アランの太腿辺りをバシバシと叩く。

 

「まさか、本気で間違えたのか……俺、ずっと探してたのに」

 アランは泣いていた。

 ピートやガラードも気の毒そうな顔でアランを見ている。

 ミカは、必死に笑いをこらえていた。


「文字数は合っていただろうが……女々しい奴め」

 メソメソと涙を流すアランに、幼女が南極の風のように冷たい言葉を放つ。


「で、何の用?」

 さらに、幼女の錆びたナイフのような問いかけがアランの心をえぐる。


「お礼を言いたくてさ……ナイジェルの事、ありがとうな。これだけは、どうしても伝えたかったんだ。お前のお陰で、ケジメをつけることが出来た。ミハエルやアイルトンも浮かばれるはずだ。そういえば、ジェンソンは聖職者になったよ」


 アランが涙声で幼女に語りかける。


「あっ……ハイ、その……どういたしまして」

 どうしよう……全然分からない。


 幼女は動揺していた。


 ジェンソンは確か、電マみたいな男だ。

 アイルトン……ミハエル……ナイジェリア?

 国の名前かな?

 ナイジェリアが聖職者になって、ヤムイモの生産量が減る……フフ、何の話だ……アフリカ経済かな。


「プッ、すみません、アフリカにはあまり詳しくないので……」

 幼女の悪ふざけが始まる。


 それに聖職者になったのは、ジェンソンである。


「……覚えてないの?」


 アランは、地面に倒れ込み……マジ泣きした。



「あー面白かった」

 ミカが笑いながら、アランの頭を撫でている。


 彼らは、ハルートの家の客間に案内されていた。


 アランはふて腐れた顔で、ハルートとピートの話を聞いている。


「では、ハルート村長、許可をいただけるのですね」

 ピートが幼女に尋ねる。


「ああ、早い者勝ちだ。お前をこの村の専属にしてやる」

 行商人は呼ぶ予定だったしな、と幼女が言う。


 ありがとうございます、とピートがハルートに頭を下げている。

 さすがは商人、幼女相手でも低姿勢である。


「早速だが、村の連中に商品を見せてやってくれないか」


「わかりました」

 幼女の要望に快く返事をすると、ピートは素早く準備に取りかかる。


「利益をあげるのは構わんが、あまりぼったくるなよ」


「もちろんです。クローナ村の皆さんとは、良いお付き合いをしていきたいですから」

 そう答えるとピートは外へと駆けだしていった。


 嬉しそうなピートの背中を見つめながら、アランは幼女に尋ねる。


「なあハルート、お前が村長……なんだよな」


「うむ、見ての通りだ」

 いやしい幼女は、ピートからのお土産をひたすら物色している。


「一緒にいた時は、言葉も話せなかったのになあ」


「共通の言語を話せなかっただけで、知能や知識は大して変わってはいない。貴様こそ、どこぞの誰かを殺すと息巻いていただろう。今頃は牢屋の中だと思っていたが……」

 

「えっ! ナイジェルは、お前がやったんじゃないのか?」


「ナイジェリア? それ国じゃないの? 人口一億七千万を超える、アフリカ屈指の経済大国だろう」

 幼女がとぼけたことを言う。


「ナイジェリアじゃない、ナイジェルだ。ヒゲの、胸に七つか八つの傷のある男で、口癖は俺の名を言ってみろって奴……罪人の壁に焼き付いてたんだけど……」

 アランがナイジェルの特徴をハルートに伝える。


「ああ、あのアル中か! 殺した、殺した!」


 やったね幼女、思い出しました。

 しかし、嬉しそうに、殺した、を連呼する幼女……マッドである。


「喧嘩売ってきたからな、爆熱ゴッ○フィンガーで燃やしてやったんだ」

 あれがそうなら逃げる必要もなかったな、と幼女が通り魔みたいな発言をする。


「偶然殺したのがナイジェルだったの?」

 ミカが驚愕の声を上げる。


「そうだな、まあ、死ぬべき者が死んだだけだ。外道は滅びる、それすなわち、運命である」

 幼女が何か悟ったような台詞を言う。


 機嫌が悪いときに、難癖なんくせつけてきたから殺しました……とは言いにくいのだろう。


「それはいいとしてだ、お前達はこれからどうするのだ」

 この話を続けていると殺人鬼扱いされそうだからか、幼女が話題を変える。


「ねえ、ハルートちゃん、しばらくここにいても良いかな?」

 ミカがハルートちゃんに尋ねる。


「別に構わんよ、空き家はまだいくつかあるから、好きに使うといい」


「なあ、ハルートちゃん、ここには、獣人しかいないのか?」

 アランもハルートちゃんに尋ねる。


「あと、エルフが一人いるな……それとお前、今度ちゃん付けしたらサツガイするからな」

 殺人鬼の殺害宣告である。冗談とは思えない。


「マジか! エルフといえば美形だよな」


 ニヤケ顔のアランの足をミカが蹴り飛ばす。

 アランは足をおさえて、何やらブツクサと文句をいっている。


「でもさ、ハルートちゃん、獣人ばかりの村って領主的には大丈夫なの?」


「問題無い、クローナ自体がハーンズの基地みたいなものだからな。ウチの住民はほとんどがハーンズの正規兵なんだよ」

 領主直属のな、と幼女が棚からウサギの腕章を取り出しアランに手渡す。


「どういうことだ?」


「言葉通りだ、このクローナ村は、ハーンズ北部を魔物から守る防壁であり、獣人達はそこを守る守備兵だ。当然、魔物だけでなく人間同士の戦争にも介入する。その際は遊撃隊として動く事になるがな」


「ちなみに私が隊長だ」

 幼女が胸を張る。

 もちろんペタンコである。


「なあ、ハルート、その部隊に俺も入ることはできるか?」

 獣人じゃないけど、とアランが言う。その表情はいつになく真剣だ。


「ふむ、お前の腕なら大丈夫かな、覚えてないけど……」

 幼女が適当な返事をする。


「しかし、お前……兵士になりたいのか?」


「兵士じゃない……俺は、騎士になりたいんだ」

 幼女の問いにアランが答える。

 騎士になる……それは、アランの子供の頃からの夢だ。


「騎士ね……まあ、近い内に戦争になるから、そこで手柄の一つも立ててみろ。そしたら領主に口利いてやるよ」


「出来るのか!」

 アランが興奮気味に叫ぶ。


「ああ、ハーンズ卿とは親しくしているからな」


「ちょっ……ハルートさん、あんた何者だよ」


「何者か……だと、フフ、ある時はカワイイ」

 幼女が面倒くさいリアクションをとろうとした瞬間、黙って話を聞いていたミカが口を開く。


「ハルートちゃん、戦争ってどういう事?」


「え……あっハイ、レナードが攻めてきますよ」

 不意を突かれた幼女の言葉使いがおかしくなる。


「マジ?」


本気マジだ……春くらいの予定だな」

 本気と書いてマジである。

 幼女がマジ顔で答える。


「そうか……ヨッシャ! 俺はやるぞ!」

 アランが気合の叫び声を上げる。

 戦争を大喜びするとは、危ない男だ。


「そっちの娘はどうする。ハンターなら戦えはするよな」


「うん、私もやるよ……腕はアランより上だから大丈夫だよ」

 ミカが遊びに行くようなノリで答える。

 最近の娘は、戦争もファッション感覚なのだろうか、怖ろしい時代である。


「分かった……二人とも、今日からハーンズ北部守備隊の隊員だ。よろしく頼む」


「よろしくお願いします。ハルート隊長!」


 幼女の言葉に、二人の元ハンターは、慣れない敬礼で応えた。




最近、腹筋ローラーを使っています。


近いうちに、私の腹筋は板チョコみたいになるでしょう。


バレンタインに間に合えばいいけど……


はい、今回もありがとうございました。



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