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幼女オブトゥモロー  作者: オーロラソース
18/47

第18話 エルフ《カサンドラ》


今回は短めです。


なので、明日も更新出来れば……と思っています。


読んでくれるあなたに心から感謝を……。


「サラ! ハルート様が、ハルート様が!」

 子猫系獣人のイオニアが慌てた様子で駆け寄ってくる。そのくりっとした大きな瞳には涙が浮かび、今にも零れてしまいそうだ。


「落ち着きなさいイオニア、ハルート様がどうしたの?」

 サラはイオニアの頭を軽く撫でると、優しい口調で彼女に問いかける。


「ハルート様が流されて……」

 イオニアがサラにすがりついたままつぶやく。

 よほどショックだったのだろう、その小さな体は今も小刻みに震えている。


「イオニア、よく聞きなさい。ハルート様は特別な方よ。世界に一つだけのフラワー的な、元々特別なオンリーワンなの。つまりね……流されたりはしないの、個性のいかりがそれを許しはしないから……」

 サラはフッとニヒルな笑みを浮かべると、ハルートちゃんに関する自らの哲学的解釈を披露する。


「え? なに言ってるの? 緊急事態なんだけど……」


「ああ、イオニアには少し難しかったかな? 要するにね、ハルート様の個性をいかりに例えて、えーと、流行の荒波から――」


「要約できてねえよ!」

 イオニアが叫ぶ。


「なにが”要するに”だ! 同じ言葉繰り返してんじゃねえか! それに、誰が流行はやりに流されたのを泣きながら報告してくるんだよ! お前、頭おかしいんじゃないのか!」


 イオニアは激怒した。


「賢そうな見た目と口調しやがって! 馬鹿なら、ちゃんと馬鹿っぽい雰囲気だしてろよ! 顔に”私は馬鹿です”って書いとけ! 紛らわしい!」


「ヒィッ、口わるっ! 言葉汚い!」

 普段は大人しい猫娘の豹変ひょうへんぶりにサラはたじろぐ。


「なにが個性のいかりだよ! ドヤ顔しやがって!」

 怒りがおさまらないのか、イオニアは近くの木をひたすら蹴り続けている。


「あのイオニア……流行じゃないなら、何に……流されたの?」

 サラは怒り狂う猫娘に、おそるおそる声をかける。


「川だよ! KAWA! RIVER!」

 イオニアの息は荒い。


「リバァ-? リヴァ……フフッ、リブァーに流された? それって溺れたってこと? あのハルート様が? まさか……」


「とにかく来て! 溺れた訳じゃないけど……寝たまま、下流に流されていったの!」

 イオニアは叫び、川の方角へと走り出す。


「寝たまま、流された?」


 サラは思う。


 状況はよく分からないが、多分大丈夫だろうと。




 部下からの報告を受けて、シュライクは微かに笑みを浮かべた。


「これでようやく王都に戻れるな」

 王都を発って一ヶ月……思った以上に時間がかかってしまった。


 あの目立つ容姿だ。すぐに見つかると思っていたが、おそらくは人のいない地域ばかりを進んできたのだろう。目撃情報はまるで得られず、随分と遠回りをする羽目になった。

 もしあのハンター達に出会えなかったら、今でも見つけられずにいただろう。


 依頼主も相当に苛ついてるはずだ、急がねば。


「さあ、任務開始だ」シュライクは呟き、部下に合図を送る。

 相手は勘の良いエルフ、気付かれずに近づくのは難しい。


 ならば、正面から行くだけだ。


 シュライク隊の格好は旅の商人に偽装してある。荷が少なすぎるなど不自然な点もあるが、ただ近づく分には大した問題ではない。

 警戒させなければ、獲物が逃げることもない。


 身をひそめるでもなく、部隊は標的に近づいていく。


「合図と同時に散開、そして包囲だ。相手は一流の魔術師、距離はとらせるな。それと……隣にいる小さいのも確実に始末しろ、逃がすなよ」

 シュライクは部隊に指示をだすと、さらに標的との距離を詰めていく。


「こちらに気付いたな……チッ、服着るなよ、勿体ない」

 慌てて服を着るカサンドラを見て、シュライクは舌打ちをする。小さい方は変わらず全裸だが、ロリコンではないので興味は無い。


「始めるぞ」

 シュライクは呟き、表情をつくる。今の彼らは無害な旅の商団だ。スマイルを忘れてはならない。


「おーい! お嬢さん方ちょっといいかな! この辺に……あっ逃げた!」

 うわ、足速い。しかもアイツ、幼女置いていったぞ。

 作戦失敗だ……想定外の展開にシュライクは軽く動揺する。うつむいているのは、部下の視線が気になるからだ。


「さて、どうするかな」

 追うか……いや、駄目だ。敵だと認識されたら魔術がくる。魔術師相手に遠距離戦なんて、命が幾つあっても足りやしない。


「隊長、戻ってきました……」

 苦悩するシュライクの耳元で、部下の一人が呟く。


「マジ……?」

 ニヤリと笑うシュライクの視線の先では、カサンドラがキョロキョロしながら、全裸の幼女においでおいでをしている。


「なあ、あのエルフ、笑ってないか?」

 なんだあのニヤケ面は、まるで不審者ではないか。

 もしや、さっき一人で逃げたのは……


「間違いない! アイツ、幼女にイタズラしていたんだ!」

 なんて奴だ、生かしてはおけん。

 まあ、元々そういう任務だけど……


 おのれ、変質者め……暗殺者が正義に目覚める。


「行くぞ! 変態を殺せ! 正義は我らにあり!」

 シュライクが部隊に合図をだす。


 隊長のおかしなテンションに若干戸惑いながらも、一斉に散開したシュライク隊は、素早くカサンドラを取り囲む。


「な、なんですか、あなた達は!」


「黙れ! 変質者め!」

 シュライクはカサンドラを睨みつけ、怒号を飛ばす。


「えっ? ちがっ……私は」

 状況が理解できていないのだろう。カサンドラは全裸の幼女にしがみついて、ひたすら首を横に振っている。


「いいから死ね、この世界に貴様のような変態の居場所はない」


「暗殺者か……狙いは私ではなくお前だな。心当たりはないか?」

 今まで人形のように大人しくしていた幼女が、突然口を開く。


「暗殺者? まさか……ナタリア!」


「チッ」

 カサンドラの口にした名前にシュライクは僅かに顔をしかめた。


「そういうことなら、遠慮はしない。来なさい人間ども……全員殺してやる」

 カサンドラの気配が変わり、彼女の周囲に力の渦が巻き起こる。

 魔力が高まっているのだ……


「くるぞ!」

 カサンドラの魔力の高まりに応じて、シュライクは部下に合図を送る。


「風よ……」


 そして、カサンドラが詠唱を始めた瞬間……シュライクは動いた。


「やれっ!」

 シュライク隊はガスマスクのような仮面を被ると、黒い玉を一斉に投げ割った。周囲は煙に包まれ、視界が失われていく。


「なにごれ……目が……のどが……クッ!」

 煙幕に包まれたカサンドラの詠唱がとまり、集まりかけた魔力が霧散する。


 カサンドラを囲んだシュライク隊は、標的に向けて一斉にナイフを投げ放つ。


「アアッ!……カハッ……!」


 黒煙のなか、獲物の断末魔と地面に倒れる音をシュライクは確かに耳にした。


 シュライクは笑う、変態は死に……正義は悪に勝ったのだ、と。




 晴れた視界の先、シュライクは血塗ちまみれのエルフの姿を見つけた。

 体には何本ものナイフが刺さり、すでに意識はないようだ。隣には全裸の幼女が静かにたたずんでいる。


「魔術師を殺すには、まずのどを潰せってな。そいつには毒がたんまり塗ってある……もう助からんよ」

 シュライクは気の毒そうに幼女に告げる。


「どういう関係かは知らんが、お前も同じ所へ送ってやる」

 これも仕事だ、とナイフを構えた瞬間、シュライクは異変に気付いた。


 部下がいない……一人も。

 

 どういうことだ……エルフには何もさせなかったはずだ。

 シュライクは、部下を探し周囲を見回す。その彼の目に奇妙な物体が映る。

 遠く離れた場所に、部下のようなモノが転がっていた。

 

 いくつも……いくつも。


 なんだこれは……えも言われぬ恐怖に、シュライクの足が震える。


「ククク……」

 彼の目の前では、幼女が不敵に笑っている。

 そのちいさな手は眩いばかりに光輝き、そこから放たれた光は倒れたエルフを包み込んでいる。


 その異様な気配にシュライクは確信する。

 コイツだ、コイツがやったのだ……と。


 直後、シュライクは幼女に向かってナイフを投げ放っていた。

 殺らねば、殺られる。コレはそういう相手なのだ。

 

「北斗○拳奥義、二指真……いや、これは前にも使ったから……」

 幼女が何かためらう間に、ナイフは彼女の顔面に迫る。そして……突き刺ささることなく弾かれた。


「…………」

 二人の間に奇妙な沈黙が訪れる。


「か……崋山○鎧呼法!」

 沈黙を破り、幼女が突然大声で技名を叫ぶ。


 シュライクはビクッとした。


「か……体が……硬くなる技だ」

 恥ずかしいのか、幼女の顔は真っ赤だ。


「ぷっ、自分で技の説明してやがる……ダサッ」

 それが、シュライクの最期の言葉になった。


 羞恥しゅうちと怒りに満ちた幼女の拳で、彼は星になったのだ。



 暖かい光に包まれて、カサンドラは目を覚ます。隣には、あの可愛い幼女が座っている。


「貴女が助けてくれたんですね……」

 うっすらとだが、彼女の戦う姿をおぼえている。


「何処か、行く当てはあるのか?」

 幼女の手がカサンドラの頬を撫でる。


「私は……」

 もう故郷には帰れない。人間に汚された私を皆は受け入れてくれないだろう。


「私のところに来るか?」

 幼女の声は、優しく温かい。


「迷惑に……なりますから」

 きっとナタリアは諦めない……あの嫉妬深い女は、私が生きているだけで許せないのだ。


「別に構わんよ……国だろうと神だろうと敵に回す覚悟は出来ている」


 幼女の言葉にカサンドラの胸は高鳴る。


 これは……なに? 

 初めて感じる感情に、カサンドラは戸惑っていた。


「決まりだな。では行くぞ」

 幼女が立ち上がり、手を差し伸べる。

 躊躇ためらいながらも、カサンドラはその小さい手を握った。


 そして、エルフの少女は確信する。

 これは……この感情は、間違いない。


 これは……恋だ。


 その日、救いようのない変態が生まれた。

 ロリータコンプレックス・レズビアンエルフの誕生である。


 二人はハルートの住む村へと歩き出す。どうやら、寝ている間に随分と流されたようだ。


「私の名前はハルート、君の名は?」


「カサンドラ……です」

 幼女の問いに、ロリータコンプレックス・レズビアンエルフは答える。


「カサンドラ……鬼の哭く街か、哀しい名前だな」

 幼女が呟く。


 カサンドラは、そんな全裸幼女をじっと見つめていた。

 

 もちろん……性的な目で。




崋山鋼○呼法は体が黒くなって硬くなるという、なんか卑猥な技です。


幼女は白いままなので、Verホワイトといったところでしょうか。


お気付きだと思いますが、あの幼女は技名を言ってるだけです。


あまり気にしないで下さい。


お願いします。





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