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第17話 「開かずの間」

「……良い香り……それは、ローズガーデンの薔薇なの?」

「…………」


 フレアの目の前に、見たこともない女性が立っていた。

 白いシフォンの上品なドレスにクラシックな髪型をしている。青白い顔で佇んでいた。


「はい……よろしければ……どうぞ……」

「まあ! わたくしに? どうもありがとう……! 薔薇の花をもらうのは百年ぶりだわ……」

「百年……うそ……」


 フレアは途端にゾウッとして、足がガクガクしてきた。

 もしかしたらこの人は、この部屋で死んだ側室の霊かもしれない!


「かわいい人……あなたは……?」

「わたくしは……後宮に住むフレアです……」

「まあ! あなたも側室なの? うれしいわ! わたしもそうなのよ!」

「そうですか……あの……あなたはどうしてこちらに?」

「わたくし、この部屋で死んでしまったの……でも、殺されたわけじゃないのよ? わたし実は……」

「実は……?」

「病気だったの……それでここに……」

「まあ! そんな……ひどいわ!」

「でも……大事にしていただいたから……ただ……」

「ただ……?」

「わたしに憑いていた病魔が、この部屋に残って魔となってしまったの……」

「本当ですか! それはどこに!」

「あそこの……暖炉の中です……」

「いけない! 早くあそこに星のカケラを投げ込まないと!」


 フレアはいそいで暖炉に近づくと、ポケットから星のカケラを取り出して暖炉に投げ込んだ!



――ボウウウウンンンンーッ!



 おかしな音と共に、暖炉から白い煙が沸き上がり部屋中を包み込んだ!


「ゲホッゲホッゲホッ! 何も見えないわ! ケホッケホッ!」


 フレアは手探りで出口を目指した。しかし、何かが足に絡みついてくる。


「え? なに?」


 足元を見た。暖炉から伸びた煙が、人間の手のようにフレアの足をしっかりと掴んでいる!


「キャアアアアッ! なに、これ! 助けてー!」


 フレアはあまりの恐怖にパニックに陥ってしまった!

 バタバタと手足を動かしてもがきまくったが、煙はピッタリとフレアの足に絡まって離れようとしない!


「助けてー! 誰かー!」

 

 フレアは完全に正気を失ってしまった! 指輪を翳して行きたい場所をめちゃくちゃに叫んでみたが、どこにも移動することができない! この部屋では指輪のパワーは効かないようだ。


「どうしよう……シャルル……助けて……」


 フレアの体は徐々にうしろにある暖炉へ引き込まれていく!

 このままでは、フレアは黒魔術の世界へ取り込まれてしまうだろう。

 あともう少しで、フレアの身体は燃え盛る暖炉の炎の中へ入ってしまう!


 

――とそのとき、誰かがフレアと暖炉の間に立ちふさがった!



「あなたは……!」

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