第15話 「魔法の授与」
「キャアアアアッ!」
「まったく! 騒々しいね! また、あんたかい!」
気がついたときには、フレアはすでに魔女の女王が居る高い塔の中にいた。
「あっ! 女王さま!」
「連絡を受けたよ! あんた、やるじゃないか!」
「はい! ありがとうございました! 魔女さま……では、魔法の方は……」
「ああ、わかってるよ。あんたの望みはなんだい?」
「あの……わたくしの立場を元に戻していただきたく……その……」
「まったく! まあ、でも……あんたのその勇気に免じて授けてやろう……」
「ありがとうございます!」
「この星のカケラは呪いを解く隕石だ。呪いのかけられた場所に投げつけるんだよ!」
「はい! 必ずや呪いを解き、良い政治を行います!」
フレアは星のカケラをポケットにしまい込んだ。それはフレアの小さな手のヒラ程度の大きさをしていて、キラキラと金色に光る美しい石だった。
「フレア……良い政治とはなんだい?」
「はい! 国民が幸せに生活できる世界を作ることです!」
「そうだね……それがわかればよろしい……国民の手本になるように、自分自身も幸せな家庭を築くのだよ! わかったかい?」
「わかりました! 必ずやシャルルと!」
「よっぽどシャルルという男が好きらしいね……まあ、がんばりなさいよ!」
「はい!」
「さあ、どこへでもお行き!」
「あの……妖精の森へはどうやって……」
「あんたはどこへでも行けるだろう? その指輪で! 天に翳して行きたい場所を口にすればいいんだよ!」
「指輪……そういえば……シャルルにもらった指輪があったわ! これを使えば、1度行ったところへまた行かれるんだった! わかりました! どうもありがとうございました!」
フレアはシャルルにもらった指輪を天に翳した。
「妖精の森へ! おじいさまたちのところへ行きたい!」
つむじ風がわき起こり、フレアの身体を包み込むと天高く舞い上がっていった!
「ワアアアアッ!」
「やれやれ……うまくやりなさいよ!」
「キャアアアアッ!」
回転するつむじ風に巻き込まれながら、フレアは目を瞑った!
「フレア! 無事でよかったわ!」
「フレア! よくぞ戻った!」
フレアが恐る恐る目を開けると、そこには妖精王のおじいさまとおばあさまの姿があった。
「おじいさまー! おばあさまー!」
フレアは2人に抱きつき、再会を喜んだ。
「フレア……よかった。元の姿に戻れたのね……娘にそっくりだわ……ねえ、あなた?」
「ああ……まるで娘そのものだ……」
「わたしがお母さまにですか? ……それは大変うれしいです!」
「ところでフレア、どうでしたか? 魔法は修得できましたか?」
「はい! 善の魔女からは白魔術で呪いを解く方法を。魔女の女王さまからは呪いを解く星のカケラをいただきました!」
「それはでかした! あとはフレアのがんばり次第だ! 早速、城に帰り国に平和をもたらすのじゃ! これが薬草じゃ。植えればすぐに育つ。煎じて飲め」
「おじいさま、おばあさま……どうもありがとうございました。フレアはがんばります!」
――そのいき、そのいき!
「あっ! ティンク! さっきはどうもありがとう!」
――さっき? フレア、何を言っているの? フレアが魔女の国へ行ってから、すでに二カ月は経っているのよ?
「ええっ! 二ヶ月も! うそでしょう!」
「それはホントじゃぞ、フレア!」
「そうなのよ……こちらの時間と人間の世界の時間は違うの。あなたはあと1ヶ月で16歳になるのよ!」
「そんなー! それまでにシャルルの心を取り戻さなくては! まずは薬草を植えるために畑に行かなくちゃ!」
「フレア、くれぐれも気を付けてな!」
「フレアに精霊の恵みがありますように……」
「おじいさま、おばあさま、ティンク……フレアはがんばります! どうもありがとうございました!」
――フレア、がんばって!
皆の声援を受けながら、フレアは城へと戻っていった。




