第12話 「東の修道院」
「きゃああああっ!」
――ドッスーンッ!
フレアは高い場所から真っ暗闇へ落とされた!
「はあはあ……ここは、どこかしら? 魔女が言っていた東の国の孤島にある修道院ってここ?」
だが、辺りは真暗な上、どこかの建物の中らしい。フレアは耳を澄ましてみた。だが、何も聴こえない。もしかしたら地下室なのかもしれない。手探りであたりを探索してみた。
「だめだわ……何も見えないし、石の壁に囲まれてしまっている……どうしよう……そうだ! おじいさまたちにもらったペンダントがあるじゃないの!」
フレアは胸元のペンダントを頭の上に翳してみた。すると、それはたちまち青い光を放ち、あたりを照らしはじめたのだった。
「まあ……」
そこは、人の頭ぐらいの大きさの石が嵌め込まれた壁に囲まれた地下室のようだった。
出口はまったく見えない。上を向いてみた。そこも壁と同様だ。つまりこの部屋には出口も入り口も窓もないのだ。
「どうしよう……これでは動きようがないわ……」
途方に暮れたフレアは、がっかりして石の壁におっ掛かった。
「きゃああああーっ!」
とそのとき、フレアの頭の辺りの石が1つ、ズズッと奥へ引っ込んだ!
「はあはあ……なになになになに? ……あれ?」
その石の奥は空洞になっていて、向こう側から誰かがこちらを覗いていた!
「きゃああああーっ! 助けてーっ!」
フレアは思わず、叫んだ!
「しいいいいっ! 静かに! わたしは白魔術を扱う善の魔女です! あなたは……?」
「ええっ! それは本当ですか! わたしはフレア・バージニアと申します! あなたさまに呪いを解いてもらいたいのです」
「まあ……っ! それは本当なの? どうしましょう……わたしは今、修道院の地下室に囚われてしまっているのです……誰かの呪いを解こうにも手段がありません。あなたの呪いとは、どのようなものですか?」
「じつは……」
――フレアはこれまでの経緯を善の魔女に説明した。
「そうですか……では、あなたの従姉妹どのが、あのネリーなのですね……ネリーはここに来たときから黒魔術に通じていました……」
「修道院に来たときからですか? それは、どういう……」
「あなたの故国で修得したのではないですか? 何か心あたりはありませんか?」
「バージニア城でということでしょうか……? わかりません。お城を探索すれば、もしかしたらわかるかもしれませんが……善の魔女さま! ここからどうやってここから出ればよろしいのでしょうか……」
「そうだわ! あなたにねずみになる術をかけてあげます! この穴を通してこちらにいらっしゃい!」
「ねずみ……ですか……。わかりました……」
「よろしいですか? ネズトラネズトラ……」
魔女が呪文を唱えると、フレアはたちまち1匹の白ねずみになっった! フレアは壁の穴を伝い、善の魔女がいる隣の部屋へ入っていった。
「善の魔女さま! これからどうしたら……」
フレアはねずみの姿のまま魔女に質問した。魔女は真っ白なフード付きのローブを被った老婆だった。優しげな灰色の目でフレアを見ている。
「そこの壁の隙間から外へ出て、正面の階段を上ってちょうだい。1階に出たら回り階段があるから、更にそれを上るの。修道院のてっぺんに鐘があるから、それを3回鳴らしてちょうだい! SOSの合図なの。海の精が助けに来てくれるわ!」
「わかりました! すぐに行ってきます!」
「フレア、気をつけるのよ!」
「はい!」
フレアはすぐに出発した。壁の穴から出ると階段を上り修道院の1階へ出た。そこはガランとした玄関ホールで誰もいなかった。だが、すべてのドアも窓も内側から木が打ちつけられていた。
ねずみの体はなかなか快適で身軽だった。フレアは手すりに飛び乗ると、スタスタと目の前のらせん階段を上っていった。修道院は塔になっていて、てっぺんに魔女の説明どおり鐘が設置されていた。だが、ねずみのフレアでは軽すぎて鐘を鳴らすことができない。
「どうしよう……」
――ギャオウウウウーッ!
突如、一匹のカラスがフレアを襲ってきた!
「キャアアアアッ! たすけて~!」
フレアは慌てて鐘突きのロープに飛びつき、スルスルと鐘の上へ登っていった!
カラスが窓枠に止まってフレアを狙っている!
「恐い! 誰か助けてー!」
こんなところに助けなどくるはずがない。
フレア、絶体絶命。




