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第10話 「妖精の森」

――ピピピピピピッ、ピピピピッ、チチチチチチッ!


「う……んっ?」


 フレアは暗い森の中で目が覚めた。

 キョロキョロと辺りを見渡してみたが、ここがどこなのかはさっぱりわからなかった。


「ふえっ……ここは……どこ……グスッ……」


 フレアの目に涙が溢れる。


「ぐすっ……シャルル……クマさん……」


 フレアはしばらくうずくまったまま泣いていた。


――もしもし! もしもし!


「ぐすっ……幻聴が聴こえてきた……もしかしてここって天国? お母さま……お父さま……」


――ちょっと! ちょっとフレアってば!


「ええーっ! やっぱり、聴こえる! はい! どちらさまですか?」


――ここよ、ここ! あなたの目の前にいるわよ! 顔を上げて!


「へっ?」


 フレアはいそいで顔を上げた。

 涙で滲んだ瞳の向こうに緑のドレスをきた金髪のかわいい妖精がいる!

 蝶々のように美しい2枚の羽が生えている。

 それを小刻みに震わせ、フレアの目の前に浮かんでいた。

 妖精がグリーンの目をしばたたせてニッコリと笑いかけてきた。

 フレアもつられて微笑んだ。

 そうだ!

 ハンスに女性はいつも笑っていたほうがいいと教わったんだったわ!


――フレア! わたしに付いていらっしゃい!


「あなたは……だれ?」


――わたしはティンク! この森の妖精よ! あなたは妖精王の孫娘! わたしがあなたのおじいさまのところへ連れていってあげるわね!


「フレアの……おじいちゃん……? ほんとうに? うれしいわ! 早く連れていってちょうだい!」


――こっちよ!


「はい! おねがいします!」


 フレアはかわいい妖精ティンクのあとについて森の奥深くへと分け入った。


――ギャアッ! ギャギャギャギャッ!


――キキキッキーイイイイッ!


――フォフォフォフォッ!


 さまざまな動物の鳴き声がするその森に、フレアはすっかり恐れをなしてしまった。


「ティンク……まだなの? ずいぶんと遠いいのね……?」


――これでも近道しているのよ! 人間たちに知られないように、わたしたち妖精は用心して隠れて住んでいるのよ。


「そう……あっ! あんなところにお城が!」


 フレアの目の前、森の奥不覚におとぎの国にようにカラフルな美しい城が現れた!


――あそこよ! あのお城の塔のてっぺんにあなたのおじいさまとおばあさまが住んでいらっしゃるわ! 早く行きましょう!


 そういうとティンクはフレアを持ち上げて空へと舞い上がった!


「わああああっ! 高い! 恐いわっ!」


――大丈夫よ! すぐだから!


 フレアはあまりの高さに目を瞑った!



「フレア! フレアなのね!」


「おおっ! 我らが孫娘か……! こんなに大きくなって!」



「え……?」


 フレアはそうっと目を開けてみた!



――そこには。


 玉座に座る小柄でやさしそうな王と王妃の姿があった!


 見たこともない人たちだが、フレアと同じ金髪で碧い瞳を持っていた。


「もしかして……おじいさまとおばあさま……なのですか?」

「そうだよ、フレア! よくこんな遠くまで来てくれたわね」

「フレアや! もっと近くでよく顔を見せておくれ! 生きている間に孫娘に会えるだなんて、思ってもみなかったわい!」


「おじいさまー! おばあさまー!」


 フレアは玉座に駆け寄り、思い切りおじいさんとおばあさんに抱きついた!

 声をあげて泣き出した!


「寂しかった……恐かった……惨めだったわ……ぐすっ……」

「フレア……元気をお出し……あなたには精霊の守りがあるんだよ」

「そうだよフレア。おまえは産まれたときから祝福されているんだ。どれ、このペンダントを授けてあげよう」


 妖精王がフレアに光り輝くペンダントを差し出した。

 大きなブルーのサファイヤで出来ていた。


「おじいさま、これは……?」

「これは光のペンダントだ。これがあればどんな暗いところもロウソクなしで歩けるんだよ」

「こんな素晴らしい物を……おじいさま、どうもありがとうございます! 大切に致します!」


「それとフレア……その格好ではかわいそうだわ。妖精たちにドレスを用意させるわ。リボンもつけましょうね。ティンク、お願いね!」

「はい! 王妃さま!」


 どこかでティンクが返事をしている。


「おばあさま、ありがとうございます! 本当だわ、ドレスが……!」


 ふと見ると、クロエが直してくれた緑のドレスがあちこち破れてボロボロになっていた!

 

「それに……あなたの髪と目の色はわたしたち一族のものとは異なっているわね。これは……魔女の呪いだわ!」

「おばあさま、いったい、どうしたらこの呪いを解くことができますか?」

「魔女の呪いは魔女に解かせるしかないのよ……これは東の魔女の呪いね。東の国へ行き、善の魔女に呪いを解いてもらうといいわ」

「善の……魔女?」

「ええ。白魔術を使う魔女のことよ。あとでそこへ送ってあげるわ……さあ、あなたの衣装が届いたみたいよ!」

「フレアの……衣装?」


 フレアが振り向くと、たくさんの妖精たちが美しいドレスを持ち上げてこちらに飛んでくるところだった。

 靴や下着なども運んでくる。


「まあッ! おじいさま、おばあさま、ティンク! 妖精さんたち、どうもありがとう!」


 フレアはお礼を言ってそれらを受け取った。 

 早速、もらった衣装を身につけた。


 水色のドレスはふんわりとしていて、襟と袖口に白いレースがふんだんに付いていた。

 青い靴に綿の白い靴下と下着。

 頭に付けるティアラはガラスで出来ていた。

 サファイアのペンダントを身につけたフレアはまるで妖精そのものだった。


「おじいさま、おばあさま、素敵な衣装をどうもありがとうございました!」

「フレア……東の魔女の国へ行ったら、魔法を覚えて帰ってきなさい。きっとこれからの生活に役立つから」

「おばあさま……フレアは人間です。魔法は……」

「いいえ! フレアには亡くなったお母さまの妖精の血が流れています。魔法が使えるはずよ! 自信を持って!」

「はい! そうだわ。人間のネリーでさえ魔法が使えるようになったんだもの。わたしだって!」


「フレアや。呪いを解いたらもう1度ここへおいで。薬草の種をあげよう。その薬草があれば不老不死も同然。魔物にやられてもすぐに回復するのだ。お城の畑で栽培するといい」

「わかりました、おじいさま。フレアはかならずや魔法を修得して再びこの妖精の森に帰って参ります!」


「そのいきですよ、フレア!」

「りっぱな魔法使いになって帰ってくるのじゃぞ!」

「はい! 行って参ります!」


 フレアは祖父母に手を振り、ティンクに吊り下げられて森のはずれ、東の魔女の国の入り口まで送ってもらった。


――この門をくぐれば魔女の国よ。


「ティンク、どうもありがとう! わたしは3ヵ月後の16歳の誕生日までになんとかしてシャルルの心を取り戻したいの。がんばってくるわ!」


――その調子でがんばってね! 成功を祈っているわ!


 ティンクはウインクをして去っていった。

 フレアはティンクにお礼を言いながら手を振った。

 ティンクの姿が見えなくなるまで手を振ると、魔女の国へ向き直った。


 そこは高い城壁に囲まれた要塞だった。

 ここでフレアは、いまから魔法を修得しなければならないのだ。

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