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プロローグ

――ホッホー、ホッホー。




 ふくろうが鳴いている。夜もたいぶ更けたようだ。




「ぐすっ……ぐすっ……シャルル……っ」




 地下牢から女のすすり泣く声が聴こえてくる。




 地面スレスレに開けられた鉄格子の窓から、石の床に横たわるフレアの姿が見える。





――ガサッ! ガサガサッ!




――ドタン、ドタン、ドタン、ドタン。





 草を踏み分け、だれかが歩いてくる。




 フレアは足音のした方向へ顔を上げた。


 



――鉄格子の向こう側から、等身大の真っ赤なクマのぬいぐるみがこちらを覗きこんでいた。



 

「……クマ……さん……?」

 




――グッ! ブバァァァァアアアアンーッッッッ!





 クマのぬいぐるみが力いっぱい鉄格子を引っ張り、大胆にもそれをはずしてしまった!



 

 煙がモウモウと立ち上がる!





「ケホッ、ケホッ、ケホホホッ! なにっ! なんなの?」

 



 フレアは懸命に目を凝らした。




 だんだんと煙が晴れてきた。

 



 クマのぬいぐるみが、鉄格子のあった穴から両手を差し出している。




 フレアはおずおずと、そのモフモフの丸い手を握った。




「きゃあああぁぁーっ」




 クマがフレアの腕を持ち、引っ張り上げた。


 

 フレアは小さな穴から引きずり出された!





――そこはうっそうとした深い森の中だった。



 高い木の梢で星が瞬いている。




 目の前に、さっきのクマのぬいぐるみが立っていた。




「クマさん……すごい力もちなんだね……」




 フレアはホッとして眠くなってしまった。



 だれかのたくましい腕に抱えられた。



 モフモフだ。




「クマ……さん……?」

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