番外編 大学生、未来の可能性
私こと、新田香織は無事卒業して大学生になりました。
私の恋人である村上比紗子も無事に大学生になりました。
そして、ルームシェアという建前の同棲生活が始まりました。
☆
お互いにどこの大学に行くかは内緒にしていたが、センター試験手前になって、比紗子とせーので大学名を告げたところ、見事に一致。
学部は違うけど、春から同じ大学に通えると思うと勉強に熱が入り、普段以上の実力が試験に出る始末。
二人とも無事に合格したのを確認したが、大学がちょっとだけ距離がある。
私は元々一人暮らしを予定していたが、比紗子もそうしようかと言っていたのでルームシェアという名の同棲を提案してみた。
最初提案したときは一瞬嬉しそうな顔をした後に、すぐに表情を取り繕い何かと理由をつけて拒絶してきた。
けど、話を聞いているうちに「しょうがないからしてあげる」と口元にだけ、嬉しさをしっかりと添えて言われた。
ツンデレのようだが、ただただ素直になれないだけで、私にデレデレなんだよね。
それで私たちはお互いの両親に許可を求めることになった。
私の両親が条件を出す以外は、理解して貰えて首を立てに振って貰えたのはやはり付き合いがあり、比紗子の両親からも信頼されている証なのだと思う。
ちなみに私の両親が出した条件というのは、両親の目の届くマンションに入ること、というものだ。
過保護というか、子離れ出来ない両親、ここに極めると言った感じだと思う。
逆にそれのおかげもあって入居するマンションもすんなり決めることも出来たのだから、悪いことばかりではない。
唯一の問題はなぜか隣室に荒木が入っていたことだ。
何故と聞けば、ノータイムで、
「お嬢のことが心配なので、社長にお願いして引っ越ししてきました!これからは隣室の住人としてよろしくお願いします!」
こんな事を無駄に大きな声で言ってきたので、蹴り飛ばした。
過保護の両親にお願いしたらそれはもうすんなり通るお願いでしょう。
自分の娘でもないのに、そんな過保護に扱うようなことしているから、婚期を逃すのだ。
願わくば、一日でも早く荒木が結婚してここから出て行ってほしい。
そんな荒木との小さなトラブルはあったが、二人で家具を選んだりするのはとても素敵な時間だった。
夫婦みたいな感じで腕を絡ませて、店を回ったりした。
「何でこんな……繋ぎ方するのよ」
「恋人同士ならこういう繋ぎ方でしょ、やっぱり」
比紗子の指に私の指を絡ませる、いわゆる恋人繋ぎというものだ。
それに比紗子は不満そうに言ってはいるけど嬉しがっている。
大っぴらに私の事を恋人だと言えない反動なのか、私が比紗子のことをそう呼ぶと口元を緩めて、嬉しそうな表情をしてくれる。
「それなら、しょうがないね」
何がしょうがないのか聞いてみたいが、比紗子が私に身を寄せてきてくれた。
人前でも甘える比紗子が見れただけで私は満足だ。
今思い出してもニヤニヤが止まらない。
比紗子に関して言えば、高校二年から大分症状としては回復してるとは思う。
高校卒業するぐらいにはクラスの中で男子と話すぐらいは出来てたし、距離をとって話してくれるなら、知らない人でも大丈夫だったと思う。
一対一じゃなければという制限がまだあるけど。
クラスみんなの中で男子とかと話すときは前みたいに顔を青くして、凄い勢いで精神を磨り減らす感じではなく、長い時間かけて緩やかに磨り減らす感じに変化した。
良くなったと言えば良くなったと言えるが、治りそうかそうじゃないかと言えば、まだまだ完治にはほど遠いところにいるんじゃないかと思う。
結局は痩せ我慢に過ぎないのだから。
問題は大学に入ってから発覚した。
高校の時は、私が比紗子と多くの時間一緒に過ごしていた。
だが、大学では学部が違うから一緒にいることが出来ない。
だから、大学入学当初で比紗子にも油断があったんだと思う。
比紗子から聞いた話では、私が隣にいると思いこんでいて一対一で男性と話してしまったということだ。
香織から今にも死にそうな声で「助けて……」と電話がかかって来たことが夏休みの間に数度あった。
比紗子がどこにいるのか場所を言わずに電話を切ったため、学校中を走り回って探すことになった。
結局、比紗子の学部とは全く関係ない場所の女子トイレに鍵を掛けて立て籠もっていた。
SOSを発信するなら、もっと分かりやすいところ、せめて自分の学部の棟にいてほしかった。
息を整えて一度ノックをする。
「比紗子」
何も反応がない。
おかしいとは思うが、今の比紗子は色々なことに対して警戒度が高い状態だと言える。私だと思っても体が動かないかもしれない。
だから、もう一度扉をノックする。
「比紗子、私だよ。比紗子の香織だよ」
鍵を開けて出て来たのは真っ青になって、今にも死んでしまいそうな顔をした比紗子だった。
「どうした」
最後まで言わせてもらう前に比紗子に抱き締められた。
「あー……」
まずは周囲を確認。
他の学生はいない。
良かった、こんなところ見られたらなんて噂がたつのか分かったものじゃない。
そのままトイレの中に押し込んで、鍵を掛けた。
「比紗子、どうしたの?」
さっきは周りのことを気にしていて分からなかったが、今ならはっきりと比紗子が小さく震えているのが分かる。
「男の人に怖いことされたの?」
何も反応がないことなかった。
抱き締める手にさっきより力が込められている。
結局この時は比紗子が落ち着くまでずっとこのまま。
二人とも講義をサボった。
私たちの今までという長い回想は終わり。
そんなことが私たちの夏休みまでの期間にあったことだ。
今年の夏はカラッとした暑さというよりもゲリラ豪雨とかのせいもあってか、ジメッとした肌に張り付くような不快感と暑さを伴っている。
学校がないし、外に出る用事がないのであれば服を脱ぎ捨ててしまっていた方が不快感が無く過ごしやすく感じる。
私たちの寝室にはベッドが一つしかない。
二つ置くスペースはないし、もしあったとしても置く気はなかったけど。
私は今いつも比紗子が使用している枕に顔を押し付けて匂いを堪能している。
この匂いに包まれて寝たら、さぞや寝心地がいいだろうな。
「バカなことやってないで、服ぐらい着てよ」
「暑いし、これから暑くなることするかもしれないからいいじゃん、いいじゃん」
チラッと横目で比紗子の姿を見ると、バスト部分とスカート部分がレースになっている黒色のベビードール。それに合わせて花柄をあしらったレースのショーツを身に着けている。
そして、顔の方はここからでも分かるぐらい赤い。
夏になってからエアコンをつけてはいるが、暑いという理由で比紗子も下着姿で過ごしてくれるようになってくれたのは私にとっては幸運だった。
私も比紗子と同じデザインのショーツとベビードールの白色を持っているけど、それは脱衣所に置いてあった。私は体をしっかりと乾かして、そのまま置いてきている。
「せっかく……用意したのに……」
比紗子がそっぽを向いて、口を尖らせながら言うのが聞こえた。
「そんなことするわけないし、それに私の枕で変なことするのやめて」
変なこととは私がしているように顔を押し付けて匂いを嗅いでいるような行為なのだろうか。
わざと大きく吸い込み、息を吐き出す。
「ちょっとやめてよ!」
比紗子が小さく悲鳴を上げた。
私は知っている。
比紗子が私の枕で同じようなことをしていたのを。
☆
語ると長くなるが、あれは私が朝一から講義があると思い、急いで家を出たときのことだ。
学校まで着いたところで、今日の講義が昼からだと判明したため、肩を落として私は一人帰路についていた。
「あれ?」
外から私たちの住んでいる階の当たりを見上げてみた時、まだ洗濯物がかかっていなかった。
比紗子は私に比べて、かなり健康的な生活をするようにしてるし、しっかりと家事もする。
それに今日は確か私と一緒に起きたはずだ。
比紗子にしては珍しいことだが二度寝でもしたのだろうか。私なら、朝早くない日には二度寝をよくしているが比紗子はしない。朝食を作ったり、洗濯物を干したりしている。珍しいこともあるものだと思っていると部屋の前まで着いてしまった。
驚かせようと思い、静かに鍵を回して部屋の中に侵入を果たす。
玄関を上がり廊下の先にあるリビングに置いてあるテレビの音は聞こえるが洗濯機の動いている音はしない。
それにテレビの音の合間に何かが軋むような音も聞こえるような気がする。
ゆっくりと音を立てないようにまずはリビングに侵入した。
テレビが点いているだけで誰もいない。普段のテレビの音量よりも大きいことが気になるぐらいだ。
リビングの横の部屋、寝室の扉が半分開いていて、そこから音が聞こえている気がする。
物の多いリビングを慎重に移動して、寝室の扉に近づいていく。
寝室に近づくにつれて音は大きくなるし、比紗子の声も漏れて聞こえてくる。
この段階で少しばかり想像力が働いて、何をしているのか見当は付いてきた。
しかし、比紗子がそんなことをしているという現実に私の鼓動は早鐘を打つ。
ゆっくりと寝室を覗き込む。
私の位置からだとはっきりとはしないが、多分比紗子は私の枕に顔を埋めている。
そして、甘い吐息に混じる快感に疼く声。
時折、電流が走ったように跳ねる体にくちゅくちゅという水音。
知らず知らず内に取り出していたスマホでカメラを起動させようとしたところで思い止まった。
このままカメラを起動させて、撮影しようとすればシャッター音が鳴って、比紗子に気付かれる。
それにこの距離では遠すぎてまともに比紗子の姿を撮影することが出来ない。
悩みに悩んだ末に私が出した結論は、スマホの電源を切って、 物音ひとつ立てずに私の記憶の中に今の比紗子の姿を鮮明に焼き付けておくことにした。
もしこのタイミングで迷惑メールでもメルマガでも届こうものならバイブ音で比紗子が行為を中断してしまうかもしれない。
比紗子は音に関しては、特に過敏なのだ。
ちょっとでも音を立てれば、たちまち行為を止めてしまうだろう。
それはいけない。
そんなことになってしまっては比紗子がきっと悶々として私がいなくなるまで過ごすことになる。
けど、悶々とするよりも恥ずかしさで頭がオーバーヒートしてしまうかもしれない。
この光景を見ながら思うのは、比紗子もこういうことをするんだなっとしみじみ思う。
私との日々に毒されたのかも分からないけど、普段の比紗子の姿から想像も出来ない痴態である。
比紗子の動きが、徐々に激しくなる。
それにつれて吐息も大きくなるし、私の名を呼ぶ声まで大きくなり、ここまではっきりと聞こえる。
誰もいないと思って、思いっきり声を出してるのかな。
「……っ、はぁー……」
理性で抑えるのが大変だ。
「香織……ぃ、あっ……っ!」
私の方までドキドキがしてきてしまった。
隠れている状況じゃなければ、私まで一人で始めてしまいそう。
これでは私が悶々とこれからの時間を過ごさないといけないじゃない。
早く終わってほしい気持ちと、まだこのまま見ていたい気持ちが相反する。
これが隠れている状況じゃなければ、私もこのまま本能に任せてしまいたい。疼く体を鎮めるために、スカートの中に手を入れてしまいたいところなんだけど、それが出来ない。
とても辛い。
手が伸びそうになるのを服を強く掴むことで何とか抑える。
見ているだけで私の息まで荒くなってきている。
比紗子の声が先ほどよりも嬌声に近いものになってきた。
そして、先ほどまでよりもしっかりと腰が浮き上がってきている。
「あ、ああ」
浮き上がった腰に伴い、息が出来るのか分からないほど比紗子は枕に顔を埋めた。
「……っ!」
そして、三度四度大きく体が痙攣して、体がベッドに沈み込んだ。
終わった。
私の体はさっきから疼いてしょうがないが、それを我慢して一回外に出ないといけない。
私はゆっくりと動いて、音を立てないようにして部屋を出て行った。
そして、この日の夜は一段と激しく比紗子としたわけだ。
あの日見た光景では今でも瞼の裏に焼き付いている。
☆
「ちょっと香織、話聞いてるの?」
「あ、うんうん、聞いてたよ」
全然聞いていなかった。
「全然聞いてないし、もういい……」
比紗子がいじけた様な、少しだけ悲しみを混じらせた声を発した。
枕に押し付けていた顔を上げて、比紗子の方を見る。
胸の下で腕を組み、体を横に向けている。口を尖らせて、頬を赤らめて鋭い目つきをしている拗ねているんだと思う。
「比紗子、こっちにおいでよ」
「行くわよ、もう寝るし」
ベッドの縁に腰を掛けるだけで、横になろうとはしない。ただ、座っているだけで、何も言わないあたり、訴えたいことがあるんだろうとは思う。私は半分分かっていながら訊ねる。
「入らないの?」
「見れば分かるじゃん。入れないの」
比紗子の枕から右側に転がり、自分の枕に頭を乗せる。
「ほら、これでいいよね」
比紗子は何も言わずにベッドに入ってきた。
「ほら、比紗子。そんなに拗ねないの」
そう言いながら抱きつくが、比紗子はまだと言うか、機嫌が良くないらしく背中を向けられてしまう。だから、そのまま背中から比紗子を抱きしめることになる。
「服じゃなくても、下着ぐらいやっぱり着けてよ」
「えー……この方が比紗子のこと感じられていいじゃん」
ねぇと言いながら、首筋に舌を這わせると声は出ていないが、体が少し跳ね上がる。抱きしめている身は縮こませているし、若干肌が赤みを帯びているように見える。
「……やめてよ」
「比紗子が機嫌直してくれるまでやめない」
「別に機嫌悪くないし」
「ホントに?」
「ホントに」
「じゃあ、どうして?」
少しばかりの沈黙の後に比紗子の口から言葉が紡がれる。
「香織は気にしてないから分からないかもし、言っても迷惑じゃないって言うだろうけど、夏休みになるまで、何回も私、香織に助けてもらってるじゃん」
共学である以上、そうなるのはしょうがないものだし、私としては比紗子の言う通り、あまり気にしていなかった。
それにこれだけ付き合いが長いし、さすがに分かるようになるね。
「香織はいいかもしれないけど、私は自分がホントに嫌い。大嫌い」
声が湿ってきている。
「治ってから学校受ければ良かったなんて、何十回も考えた。人に迷惑ばっかりかけてるし……香織の時間だって奪ってる」
泣いてしまいそうな位、比紗子の言葉が震えている。
「ホントはこんなことしたくないのに……こんなはずじゃなかったのに……」
「比紗子、それ以上はダメ」
先程よりも抱きしめる腕に力を籠める。
「だって……」
「だって、でもだよ」
いくらかこのこと考えても、私たちは過去を変えることが出来ない。
比紗子には辛いことだとは思うが、この三年間そうしてきたように今を見つめていかないといけない。
「……香織、ホントに私でいいの?」
「比紗子がいい、比紗子じゃないと嫌」
比紗子が一番良く分かっていることを聞いてきている。
こういう時は、多分、不安でしょうがないんだろう。
迷惑ばかりかけて、負担になって、どこかで私の気持ちが離れていくんじゃないかと考えているのかもしれない。
比紗子はネガティブに考えがちだが、あの日から一層それに磨きがかかっている気がする。
だけどね、と心の中で呟く。
そんな軽い気持ちなら、もう簡単に離れていると思う。
確かにあの時の比紗子にしたことへの罪滅ぼしなところはあるけど、それはもう比紗子と一緒の理由にいる一つに過ぎない。
「ねぇ、比紗子、私、卒業して就職したら、結婚しようと思うんだ」
「……婚約者でもいるの?」
声は固く、暗い。
話の流れからして、誰と結婚したいかなんて分かるはずなのに、分からないのであれば、相当頭が混乱しているのだろう。
だから、分かっていない比紗子の耳に口を近づけて、囁く。
「比紗子、とだよ」
ちょっとだけ恥ずかしい。
顔が赤くなっているかもしれない。
比紗子の場合、分かりやすく耳が赤くなっているし、抱きしめている体が妙に熱く感じる。あと、全身が少し汗っぽい。
「聞かなかったことにしておく」
「なんで?」
「もっと、ちゃんとしたタイミングで聞きたいし……」
モゴモゴと何かを口籠っているが、少ししたらしっかりとした言葉を紡ぎ出した。
「私が私自身、それに応えられるようになってから聞きたい」
「どうして?」
「どうしてって……もう……」
そうならないといけない理由が私には思い浮かばない。
「私だって胸張って、香織の隣りにいたい。香織の隣で香織の、お、おお、お嫁さんって言われたいし、私だって紹介できるようになりたい……だから」
私は言葉を急かさずに比紗子が紡いでくれるのを待つ。
「だから、その時にして……ください……」
今、この瞬間、比紗子の言葉に胸が高鳴った。
ホントにこのまま下着を脱がして、そのまま比紗子に襲いかかりたい衝動に駆られそうになる。それを必死に自分の中に押さえ込む。
そうするのは、もう少し後だ。
「うん。ねぇ、比紗子、こっちを向いて」
抱きしめている力を緩めると、比紗子がゆっくりと寝返りを打つようにして、こちらを向いた。
顔はやっぱり、熱でもあるのかってぐらい熱くなっていって、真っ赤になっている。
比紗子の目を見つめていると、恥ずかしくなってきたのか顔を逸らされた。
だけど、それを許さない。
比紗子の顔を手で抑えて、正面を向かせてからちょっとだけ上にする。
そうすると、また目が合う。
ニッコリとほほ笑みを浮かべて、顔を近づけると比紗子が目を閉じる。
そのまま、唇を重ねる。
しばらく、そうしていたが一度だけ離すと、比紗子が薄っすらと目を開ける。その目は、蕩けるように緩んでいて、これからの行為を急かしてきているような気さえ感じる。
一度、始まると比紗子は結構積極的なんだよね。
誘い方が上手いのか、ついつい私の方も熱が入ってしまう。
「比紗子は指輪どんなデザインがいい?」
「……気が早過ぎよ」
そう言いながら、比紗子の口元は緩んでいる。
「いいじゃん、それで比紗子はどんなデザインがいい?」
「……香織が決めてくれたのなら、どんなのでもいいよ」
比紗子から私に抱き着いてきて、胸に顔を埋める。
私の胸は残念なことに、比紗子みたいに豊満じゃないのでちょっとだけ申し訳ない気持ちになる。
「私は比紗子が決めてくれたのがいいな」
私の胸に顔を埋めていた比紗子が顔を上げた。
目尻が下がり、普段よりも幾分と優しい笑みになっている。
「じゃあ、二人で決めよう、ね。香織」
「うん、比紗子」
私が顔を近づけると、自然と比紗子が目を閉じる。
だから、ゆっくり唇を重ねて、どちらかともなく口を開く。
二度、三度舌が絡み合う。
ほぼ同時に唇を離すが、唾液が糸を引き、繋がりを示しているような気にさせる。
「やっぱり、服脱いでて正解だね」
「……うるさい」
棘のある言葉なのに、甘い声音のせいで艶やかさがある。
「ねぇ……香織」
「うん、分かってるよ、比紗子」
再び唇を重ね、今度はさっきよりも深く比紗子と結びついた。
また、今日も夜は更けていき、幸せの時間は過ぎていく。