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魔王陛下の目指せ!モフモフパラダイス  作者:
第1章 幼児期編
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第7話

 一週間ほど経った頃、ダスターの知り合いだという魔術師到着の知らせが、城へと届けられた。

 それを聞き、ベルーゼは待ってましたと喜びの声をあげる。


(楽しみだなー。俺、どんな魔法が使えるんだろう。やっぱり母上みたいに一撃で敵を殲滅出来るような攻撃魔法とかかな?)


 それとも父上みたいな攻守バランス型だろうか?それはそれで格好いいなと、ベルーゼは期待に胸を膨らませる。

 才能が何も無いのではないかという心配を、ベルーゼは一切していなかった。

 なにせ、両親はどちらも素晴らしい能力の持ち主だし、何よりベルーゼとリリスは融合している。これで何も才能が無い方が可笑しいだろう、とベルーゼはたかをくくっていた。


 人払いがされ、謁見の間には現在ダスターとベルーゼ、ペルしかいない。

 普段人が絶えないそこが、これだけ静まり返っているのはベルーゼにとって初めての体験だ。


 適正値は、知られると弱点を突かれることに繋がるため、適正を見る際には親族と術を行使する魔術師しか立ち会いが許されない。そのため、こうして人払いがなされていた。

 ドアの外には護衛のための兵士が控えてはいるが、機密事項を話すことも多い謁見の間の防音性はかなり高い。ドアさえ閉めてしまえば、そうとう大きな声を出さなければ漏れ聞こえることは無いだろう。


 ベルーゼとしては、ロシンになら適性を見られても問題が無いと思っていたのだが、それは本人に断られた。


 曰わく。


「ベルーゼ様に信頼していただけるのは光栄ですが、あくまでも私はダスター様の家臣です。将来あなた様の側に立つことの無い者が、重要な情報を知っていることはあまり望ましくございません」


 と、笑顔できっぱり言い切られてしまった。

 それは言外に、自分はダスター以外の側近になるつもりは無いということを表している。

 ロシンに懐いているベルーゼとしてはその答えは寂しいものだったが、あれだけ普段ベルーゼのことを可愛がっていても、決してダスターへの忠誠心を無くさない彼と、そんな彼に慕われるだけの器を持っているダスターへ尊敬の念が募る。


 将来、自分にもあれだけ慕ってくれるような部下が出来るだろうか。


 偉大な父の跡を継ぐことにベルーゼが不安を抱いていたところへ、一人の女性が静かに謁見の間へと姿を現した。


「失礼するわよ」


 謁見の間に入る態度としては些か軽すぎるように感じるくらい気負いのない様子で歩んで来る彼女の美しさに、ベルーゼはそれまで抱いていた不安のことなどすっかり忘れて魅入る。

 日に透ける髪は黄金に輝き、白い肌は瑞々しい。涼やかな目元は高い知性の光を湛え、薄い唇は笑みを浮かべている。

 だが、それは人へ安心を与えるためのものというよりも、挑発をしているように感じる。

 その姿は一見、美しい人間にも見える。だが、長い髪からぴょこんと飛び出た尖った耳が、彼女が人間ではないことを表していた。


(エルフ)


 前世ではドワーフ同様、ファンタジーの世界の生き物とされていた種族だ。

 そんな存在が今、自分の目の前にいる。そのことへ、ベルーゼは感動に近い感情を抱いた。


 ロシンの授業で、エルフは自分たちの国から滅多に出てこないものだと教わっていたため、彼はまさかここでエルフが来るとは予想すらしていなかった。

 確かに、普通のエルフはどこかの大陸の森深くへ築いた自分たちの国から出てこないため、彼のように考えるのが普通である。

 しかし、エルフの中にもやはり変わり者というのはいるもので、彼女もその一人だった。


 彼女は見た目こそ20代前半のうら若き乙女にしか見えないが、実はダスターよりもずっと年上である。その上、その人生の大半をかけて世界各地を旅して回っている、生粋の旅人だった。

 そんな彼女の、エルフにしてはさっぱりとした快活な性格をダスターは気に入っている。

 前に会ったのは十年近く前だというのに、全く変わった様子の無い友人の姿に、ダスターは若かりし頃彼女と共に旅をした時のことを思いだし、目を細めた


「久しいな、セレーナ」


「ええ。あなたも元気そうね。すっかり王様らしくなっちゃって、もうこんな口を聞くのは失礼かしら」


「ふっ、構わん。お前はわが国の民では無いし、そもそも今更お前に上辺だけ敬われたところで気持ち悪いだけだ」


「あらそう?それはそれで面白いと思ったのだけれど。それで、その子が噂の愛息子?」


 ダスターが目も当てられないほどの親バカであることを、この国へ来るまでの間に聞いていたセレーナは、からかうように話を振る。

 しかし、当のダスターは今では極限られた人間としかすることが出来ない気安い会話を楽しんだことで上機嫌になっており、特に怒ることもなく、寧ろ得意げな表情で最愛の息子を紹介し始めた。


「そうだ。世界一可愛いだろう?ベルーゼ、この者は我の古い友人のセレーナだ。放浪癖はあるが、魔法の腕は確かだから安心して任せるがいい」


「あい、ちーうえ!あいえあして、えうーえれしゅ。おーしくねーあしあす!」(はい、父上!初めまして、ベルーゼです。よろしくお願いします!)


「あらあら、噂通り頭が良いのね。はじめまして、セレーナよ。こちらこそよろしく。診断は全力でさせてもらうから安心してね」


 拙い発音のベルーゼの言葉も難なく理解したらしいセレーナは、美しい笑みを浮かべて彼を自分の方へと手招く。

 そんな何気ない仕草すら美しいセレーナにドキドキしながら、ベルーゼは父親にバレないよう、足に精一杯力を入れて優雅な足取りで歩み寄る。

 父親の友人には格好良いところを見せたいという彼なりのプライドからの行動だ。

 しかし、実際にはその腕にペルが抱かれているせいで可愛いらしい印象の方が強いのはご愛嬌だろう。


 さて、幼いながらに絶世の美貌を誇ると言われているベルーゼと、それに見劣りしないほど美しいセレーナ。

 そんな二人が並び立つ姿は、一枚の絵画のように神秘的な雰囲気を醸し出していた。


(ああ、やはりベルーゼは世界一美しい)


 その光景を唯一観覧することを許された幸福なダスターは、自分の息子の愛らしさにうっとりと見惚れる。

 そんな中で、厳かに呪文が紡がれ始めた。


「聖なる光はあらゆる真実まことを映し出す。今ここに、この者の秘めたる力を指し示せ」


 詠唱が終わると、セレーナの周りから溢れだした光がベルーゼを包む。そして、その光はそのまま彼の目の前へと収束すると、ゲームのステータス画面のようなモノへと変化した。

 そこへ書かれている内容が、ベルーゼの適正値である。

 表示は5段階評価で、1が無し、若しくはほぼ無し2が少し有る3が平均的4が割と有る5が大変有るだ。

 流石にゲームのステータスのように、その者の能力を細かく正確な数字に表すことは出来ない。

 だが、これで見れるのは各能力の適性値だけでなく、現在のランクや覚えている技の名前・説明まで見ることが出来る。

 つまり、これさえみればその者の戦闘スタイルがだいたい分かってしまうのだ。

 だからこそ厳重に隠されるし、この魔法は対象者からの了承がなければ発動しないよう、神が制限をかけている。

 神が実在するこの世界だからこそ出来る強制的なセキュリティーシステムだ。

 予めロシンから教えられていたそれらを踏まえ、ベルーゼは自分の適性へ目を通す。


ベルーゼ・ファイ・ドルフアーガ

ランク S

体力 2

魔力 3

速度 3

物理攻撃 1

物理防御 5

魔法攻撃 1

魔法防御 5

補助魔法 3

回復魔法 2

属性

闇・土


スキル「絶対領域」

自分の周囲へドーム型の障壁を作り出し、敵の攻撃を一切遮断する。障壁に入れるのは自身と術者が許可した者のみ。それ以外の者は障壁に弾かれて侵入不可。


習得魔法

誘惑の瞳 闇属性の下級魔法。効果範囲にいる者を誘惑し、好感度を上げやすくする。しかし、効果を出すためには一定の好感度が必要。

土壁 土属性の下級魔法。任意の場所へ土の壁を作り出す。強度や大きさは魔力を込める際に変更可能。


 という結果だった。どうやら彼は防御特化型の後衛タイプであるらしい。


 この結果に、ベルーゼは渋い顔をした。

 防御力が高いというのは良いが、攻撃への適正が皆無では敵を倒しようが無いからだ。


 どうやら、異世界転生でよくあるチート無双は望めそうに無い。


 リリスは殺戮系魔王だったし、父親も武勇で世界に名を轟かす英雄だ。そのため彼は、攻撃系の能力が高い可能性ばかり考えていたのだ。

 それなのに、実際には真逆の防御特化型とは、予想外にもほどがある。


(これじゃあソロで魔物討伐とか出来ないじゃん。まあ、する予定も無いんだけど。)


 いくらチートな能力があっても、死ぬ時には死ぬ。リリスの経験からそれを痛いほど理解しているベルーゼは、できる限り無理はせず、安全に生きようと考えていた。

 そのためには、この適性も考えようによっては悪くはない。生き残ることだけを考えるのならば、別に相手を倒す必要性は無いのだから。


 ただ、彼にはもう一つ自分のステータスについて気になっていることがあった。それは、習得魔法の欄へ、誘惑の瞳という習った覚えがない魔法があることだ。

 使いこなせるだけ理論を理解したと思っていた下級魔法が、土壁だけしか使えるようになっていないことも気にはなるが、そちらはだいたい予想がついている。

 恐らく、攻撃魔法への適性値の低さと、闇と土以外に適性のある属性が無いことが関係しているはずだ。

 たぶん、適性が無い属性や能力を身につけるためには、通常の人の何倍も訓練をしなければならないのだろう。

 最悪、どんなに努力しても覚えられない可能性もある。

 そう思うと、一気に憂鬱な気分になりそうだったため、ベルーゼは慌てて思考を切り替えた。


(誘惑なんて魔法、魔法書のどこにも載っていなかったはずだけど。いったいいつ習得したんだ?あ、もしかして)


 少しの間思案した後、ベルーゼは一つの可能性に思い至る。

 それは、以前ロシンが言っていた本人も気づかぬ内に習得してしまうという独自習得の魔法のことだ。

 この誘惑の瞳が独自魔法であるならば、ベルーゼが気づかぬ内に習得していても不思議は無い。

 更に、その魔法を無意識に発動していたのだとすれば、これまでの異様とまで言える家臣たちからの好待遇にも納得がいく。

 いくら相手が赤ん坊であっても、普通、散々疎んでいたらしいリリスの子供を目に入れても痛くないと言いたげな表情で見つめるようになどなるだろうか?

 彼らの態度には、ベルーゼとしても母親から聞いていたのとはだいぶ違うと、違和感を覚えてはいた。

 だが、いつ頃この魔法を習得したのかは分からないが、無意識の内にこの魔法を発動させていたのだとすれば説明はつくと考えたのだ。


 実際、ベルーゼの予想は概ね当たっている。ただ、家臣たちの態度を変化させたのは魔法の力だけではない。

 彼が習得した誘惑の瞳は、あくまで効果範囲内にいる者の好感度を上げやすくするだけだ。更に、下級魔法の効果などたかがしれている。

 家臣たちをここまで親バカにしたのは、ベルーゼの愛らしい容姿と、無自覚に発揮するあざとさが主な原因だ。誘惑の瞳は、家臣たちに彼のことを好意的に見るきっかけを与えたに過ぎない。


 しかし、自分の小悪魔っぷりを理解していないベルーゼは、ちょっとこの魔法は強力過ぎるみたいだから、これからは不用意に誘惑の瞳を発動させてしまわないように気をつけようと、少々ズレたことを考えていた。


 彼がそんな不要の心配をしている間にも、側ではダスターたちが素直に賞賛の声をあげている。


「この年齢でランクSだなんて。・・・流石は殺戮の魔王の子、というべきかしら?」


「うむ。攻撃力が無いのは少々問題だが、我が補えば問題無いだろう」


「そうね。それに、スキルと能力の相性も良さそうだから使い勝手が良いんじゃないかしら」


 そんな二人の反応に、思考の海から帰ってきたベルーゼは、思った以上に自分のステータスが良い部類にあるらしいと考え直した。


 ふと、自分の腕の中で上機嫌になっているペルへと目を向ける。


(そういえば、ペルはどれくらいの強さなんだろう)


 ペルは現在ランクFだ。上手く育てれば二つくらいならばすぐにランクが上がる。

 自分に攻撃力が無いのならば、周りにいる者に補って貰えば良い。

 ダスターの言葉にヒントを得たベルーゼは、自分の側にこれからもいるであろうペルに目をつけた。


 ダスターは、自分がずっとベルーゼを守るつもりでいるようだが、王という立場上限界がある。

 王としての仕事を真面目にこなしているダスターは、休みの日などなく、毎日働き詰めだ。

 そして、ベルーゼも年頃になれば王族として政務に携わるようになるのだろうから、そうすればダスターから離れなければならない時が必ずやって来るはずだ。

 それに、いくらダスターが長生きでも、年下の上にランクが高いベルーゼの方が寿命が長い。

 父親にばかり頼っていれば、彼がいなくなった後困ることになるのはベルーゼだ。


 そう考えれば、ペルを今から鍛えていくのは重要事項だった。

 ランクは高くなればなるほど上がりにくくなるが、それとは別に、身体の老化によっても上がり難くなるからだ。

 ランクの上昇値が最も高いのは幼少~青年期。ペルならまだ辛うじて子猫なので、これから鍛えればベルーゼの護衛として問題無いくらいには強くなれる可能性がある。

 普通の猫ならもう大人の年齢なのだが、猫又になったことで年の取り方が緩やかになっているのだ。

 それならば、折角得た成長期を有効活用しなければ損だろう。


(と、色々言い訳を並べてみたけど、結局はペルに早く死なれるのが嫌なだけなんだけどね)


 ランクの低い生き物は、繁殖力が高い分寿命が短い。

 このままではペルは早々に(ベルーゼの感覚では)死んでしまう。

 そのことに今更ながら思い至ったが故の思いつきだった。


「あにょ、しぇりぇーにゃしゃん。ねーがありゅんれしゅ」


「ん?何かしら」


「ありあとーましゅ。ぺりゅもみれおいーんれしゅけりょめーしゅか?」(ありがとうございます。ペルもみて欲しいんですけどだめですか?)


 適性を見る魔法がどれくらいの魔力を使うのかが分からないため、ベルーゼは恐る恐る尋ねた。

 もし断られたら魔法使いがいないこの国では自分で習得しなければならないため、ペルの教育方針を決めるのか遅れてしまう。

 せめて、自分と寿命が近いであろうAランクまでペルを育てようと考えているベルーゼとしては、一刻も無駄にはしたくはない。


「あら、そんなこと?勿論いいわよ」


「ほんりょれしゅきゃ!あいあとあーましゅ!」(本当ですか!ありがとうございます!)


「どういたしまして」


 彼の心配をよそに、あっさりと承諾してくれたセレーナにベルーゼは喜びを露わにした。

 そして、ペルへセレーナにステータスを見る許可を与えるよう頼む。普通の猫ならそんなことを言ったところで理解しないだろうが、ペルは猫又なためか、ある程度ならば言葉が通じる。

 この時も、ペルはベルーゼの言葉に応えるかのように一声鳴いてみせた。

 セレーナが唱えた呪文によりステータスが出たため、やはりベルーゼの意図は伝わっていたようだ。

 己のペットの優秀さを改めて実感したベルーゼは、顔を綻ばせつつ、ペルの目の前へとあらわれたステータス画面へと目を向ける。


ペル

クラスF

体力 1

魔力 4

速度 4

物理攻撃 1

物理防御 1

魔法攻撃 5

魔法防御 3

補助魔法 3

回復魔法 3

属性

闇 光 地 水 火 風 


スキル「大賢者」

脳の働きを活性化し、判断力・思考力・記憶力を向上させる。


習得魔法

なし


 どうやらペルは魔法特化の魔術師タイプのようだ。特に、大賢者というスキルは、知能指数が高ければ高いほど有効活用出来る魔法への適性が高い彼の能力との相性も良い、大変優秀な能力と言える。

 それでいて敏捷の適性も高いことから、鍛えれば後方からの攻撃だけではなく、動き回って敵を翻弄する遊撃兵のような戦い方も出来そうなため、将来が楽しみだ。


 これだけの魔法への適性がありながら、魔法を覚えていないのは勿体ないどころか宝の持ち腐れ。これは直ぐにでも魔法を教え始めるのが良いだろう。

 そう判断したベルーゼは、ペルへどんな魔法を覚えさせようかとこれからのことへ思いを馳せる。

 幸いペルは全属性に対して適性があるし、攻撃魔法に偏っているようだが、補助や回復魔法への適性も低くはない。

 その気になれば、あらゆる魔法を覚えることが出来る。それこそ、スキル通りの大賢者と呼ばれるような存在になることも夢ではないはずだ。

 物理攻撃力や防御力が低いことは痛手だが、これだけ潜在能力が高い者がペットであったことは僥倖だろう。


 ロシンに聞いていたこの世界での能力の平均は、特に高い値でも4で、だいたいは3か2がついているのが普通である。スキルもどうやらランダムで与えられているようで、リリスのようにその者の戦い方や適性に合わないモノを持っている者が多いようだ。

 それを思えば、ベルーゼとペルは適性に偏りがある特化型とはいえ能力が高いし、スキルとの兼ね合いも取れているのだから恵まれていると言える。


(それに、俺が魔法で防御を固めてやれば、魔法での攻撃でも充分やっていけるだろうし)


 暫くは物理攻撃をダスターに任せて経験を積み、物理攻撃が出来る仲間を探していけば良い。

 そう考えたベルーゼは、次に気になっていたことへと思考を切り替える。

 今回知ることが出来た自分とペルのスキルには、気になることが多くて、試してみたいことのアイデアが次々と湧き上がる。

 そのため、いつもよりも彼の思考は移り気になっていた。


(まずは、俺が持ってるスキルの効果を試しにやってみるか)


 これまで全く分からなかった自分のスキル。その使い方が漸く分かったのだから、使ってみたいと考えるのは当然のことだろう。


(それにしても、この適性を見る魔法って便利だよな。相手から許可を得ないと見れないけど、これから仲間ペットが増えた時に能力を把握しやすいし、後でセレーナさんにやり方を教えて貰おうかな)


 仲間にする候補として当然のように動物しか考えていない辺りが彼らしい。

 

 ベルーゼは一旦考え事を止め、スキルを発動するために意識を集中させる。スキルは魔力も呪文も必要が無く、ただ、発動しようと思うだけで発動するところが利点だ。

 すると、彼の周りの空気が一瞬だけ変化したように感じた。


「きゃっ!」


 それと同時に、横にいたセレーナが何かに弾かれたかのように押し出された。見た目としては何も変わりが無いように見えるが、恐らく結界が彼女を弾き出したのだろう。

 スキルは使えば使うほど強くなるが、使わなければとても弱い。そう聞いていたベルーゼは、効果範囲は精々自分の腕を広げたくらいの広さだろうと考えていた。

 しかし、実際の効果範囲はその三倍ほどはあったようで、ある程度離れていたセレーナが弾かれてしまったようだ。

 彼女よりも近くにいたダスターとペルが結界の中にいるのは、意図的ではなく、無意識の内に中へいる許可をベルーゼが与えていたためだろう。

 だが、いくら無意識であったとしても、女性を弾き飛ばすなどやって良いことではない。

 ベルーゼは慌ててスキルを解除すると、セレーナへと頭を下げた。


「めーなしゃい!」


 顔を真っ青にして謝るベルーゼに、軽く臀部へ付いた埃を払って立ち上がったセレーナは、笑顔で許しを出す。


「気にしなくても大丈夫よ。でも、スキルや魔法を始めて使う時には何が起こるか分からないから、今度からは周りに人がいない時か、注意を促してからにしないとだめよ?」


「あい・・・」


 新しい能力に浮かれて浅はかな行動に出てしまったことを反省したベルーゼは、しゅんっと、しょげ返ってしまった。

 そんな彼へ、ペルが元気出してというようにすり寄る。それを無意識の内に撫でながらも、ベルーゼは自己嫌悪で顔を俯けた。


 そんな彼らを微笑ましく見守りながら、セレーナとダスターはベルーゼのスキルについて話合う。


「それにしても、魔力無効の指輪の力が効かないだなんて、これだからスキルは厄介なのよね」


「そうだな。強度がどれほどのものかは分からないが、お前が押し出された距離から考えて、結界の範囲はだいたい半径1mといったところか?」


「そうね。でも、スキルは使えば使うほど能力が向上するから、効果範囲や強度が変わる可能性は充分あるわ」


 成長の仕方によっては、国一つを丸ごと彼のスキルで包み込むことも可能であるかもしれない。

 いや、そこまでいかなくとも、結界の中へ後方支援役の魔術師や弓兵を匿うことで、強力な部隊を編成することくらいは出来そうだ。

 そして、その部隊では魔法攻撃に特化しているペルが活躍することだろう。

 将来有望な息子たちに頼もしさと期待を抱きつつ、ダスターは同時に、息子が何時か自分から自立する時を思い、憂いの吐息を漏らした。



ここまで閲覧していただきありがとうございます。


今回は少し長い話だったので投稿が遅くなってしまいました。すみません


ベルーゼのスキルについては、題名に沿って動物マスターとかにしようかとも考えたんですが、元々考えていた能力が防御特化型チートだったので、そのまま採用しました。

べ、べつに書きためていたやつを全部書き直すのが面倒だったとか、そんなことはない、ですよ?


ここから本格的に魔法覚えたりとか、そういうファンタジー的な要素を入れていけたらと思っているのですが、なにぶん初心者なもので、戦闘シーンにはあまり期待出来ないかと思います。

それでも暖かく見守っていただければ幸いです。

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