スカートの中
量子力学によれば、場所がわかると速度がわからず、速度がわかると場所がわからない量子というものがあるらしい。
それの思考実験として、有名なものにシュレディンガーの猫がある。
簡単にいえば、全く外から見ることができない箱の中にある放射性物質が、1時間以内に放射線を出すかどうかということだ。
出せば、箱の中にいる猫は死に、出さなかったら、猫は生きている。
但し、外からは全く箱の中を見ることができないので、猫は死んでいるのか生きているのか分からない。
量子が観測するまで状態が1つに定まらないということを示したものだ。
そして、日本のネットに住まう在野の哲学者たちは、新たな方向へこの思考実験を進化させる。
それこそが、パンツ理論である。
スカートの中身を観測するまでは、その中にどのような構造のパンツをはいているか、また履いていないのかということを把握することは不可能である。
それらの理論を実証するためには、覗かなければならない。
これは、科学の進歩のために必要なことなのである!
「……言いたいことはそれだけか?」
激怒をしている駅員と警察官と被害者に取り囲まれるように、ラフな格好をしている30代そこそこの男性が座っていた。
今までの語りは、この男が痴漢のいい訳として語っていたもののようだ。
「んな理由で、スカート覗きが許されるかっ」
男以外が一斉に男に叫んだ。