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奪われた命

戦闘シーンが含まれているので読む際はご注意下さい。

 連れ去られた時閉じ込められていた部屋に一旦戻り、アリアは記憶を辿って階段を歩く。

 正直自信はあまり無かった。だが、手掛かりはこれしか無いのでどうか合って欲しいと願いつつアリアは進んでいた。

 廊下には血を流して倒れている兵士が沢山居た。

 自分の手や剣に返り血が飛んでいた事から自分が彼らを斬ったのは予想が着いた。

 ――こんな沢山の命を奪ってしまった。いくら自我が無かったと言ってもこの手で慈悲無く斬った事は事実。決して許される事では無い……

 わざと目を逸らしてアリアは廊下を歩いていく。リュウはアリアの心の痛みがよく分かった。

 安心させるようにリュウはただ強く手を握る事しか出来なかった。

 やがて大きな扉が見えてきた。その両側にも兵士が倒れている。とうとうアリアはその場にしゃがみ込んだ。

 「何て事をしてしまったんだろう、私」

 「自我が無かったんだ。仕方が無いだろう。どんなに心が警告を出しても止まらなかったんだろ?」

 「でも……」

 「背負いきれない責任まで感じない方がいい。分かったか、これは全て闇の仕業だと思うんだ。じゃないとお前の精神が持たないぞ」

 リュウの忠告にアリアは渋々頷いた。

 アリアは力強く扉を押した。扉はゆっくりと開いていく。

 広い広間の奥に初めて対面した時と同じくエリアは椅子に座っていた。その表情はまるで殺し合いを楽しんでいるかのような悪魔の笑みを宿していた。

 変わり果てたエリアと対峙してアリアは表情を歪ませる。また闇に引きずられそうだ。

 鏡は同じでなければならない。だからこそそれを中和するために鏡同士が近づけばどちらかが正当化として同じにしようとする。

 「解放されたみたいね、アリア姉さん。助けが来てしまったのは誤算だったわ。この吹雪の中だから凍死してくれればと思っていたのに」

 「本当はそう思ってなかったくせに」

 「ふんっ、私は闇の鏡の双子よ。このチカラを使って全てを破壊し、運命など全て壊してやる」

 黒いオーラが吹き上がる。あれは黒い精霊だ。あの精霊がチカラの源であり、エリアを闇へ誘っている現況でもあるのだ。

 ならばこちらはクリアのチカラを使えば勝機はある。

 アリアは心の中でクリアを呼んだ。すると雪のような白い光を纏ってクリアは現れた。その瞳には怒りが秘められていた。

 黒い精霊はクリアが現れた事によって実態を表す。あの時見えなかった姿が目に映る。

 黒い衣を身に纏い、黒い瞳に黒い髪。まさに闇を司る精霊と言えるだろう。

 「クロウ、我は言ったはずだ。双子に二度と転生してはならない、決して手出ししてはならないと神からも忠告されたはずだ」

 「ああ、確かに。でも双子だったら裏切り、悲しみ、憎しみ全て我の好きな心が手に入る。闇の世界を創る事も夢じゃないと分かった。だから神に背いてでも我は双子に転生したのだ」

 「何という暴挙。それは存在そのものの消滅で罪を償ってもらおう」

 クリアが掌にチカラを込める。クロウも対抗してチカラを込める。

 集まったチカラを同時に放った。広間の中心で爆発が起きる。その風にアリアは吹き飛ばされそうになる。しかしリュウが後ろから支えてくれたお陰で吹き飛ばされる事は無かった。

 視界が開ける。クリアもクロウも肩で息をしていた。どうやら、チカラの差は互角のようだ。

 アリアも剣を抜く。先程リュウがしてくれたように心に語りかければうまくいくかも知れない。

 「私達も行くよ、リュウ」

 「おう」

 リュウが弓を構える。アリアは剣をエリアに向ける。そして、勢い良く剣を突き出した。弓も放たれる。

 だがその椅子にエリアの姿は無かった。

 エリアはリュウの目の前に突然と現れ、迷わず短剣を心臓目掛けて突き刺した。

 一瞬の出来事にリュウは反応出来ずもろに短剣が突き刺さった。もちろん、エリアが狙っていた心臓付近に。

 後ろを振り返ったアリアは短剣が突き刺さり、後ろへ倒れていくリュウの姿が見えた。

 どさりとリュウは床に倒れた。

 「リュウ!」

 必死でアリアはリュウに駆け寄った。リュウは目を閉じたまま動かない。

 嘘だ。これは悪い夢。さっきまでこの手にちゃんと温もりがあって。

 エリアの動きが止まる。濁った瞳が元に戻る。

 「ああ、私とんでも無い事を……!」

 その場に座り込み、エリアは泣き出した。

 アリアは泣かなかった。いや、泣けなかった。一瞬の出来事だったためにこれが現実であると信じられなかった。

 「人を刺した反動で自我を取り戻すとはな」

 クロウが驚きを隠せないような声音で言った。


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