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 大広間に招かれたアリアとリュウはメイド達からアッサムティーを差し出され、少しくつろいでいた。

 暖かい紅茶は地下室で冷えてしまった体と心を温めてくれる。今のアリアにとってはありがたい品だった。

 すっかり和んだところでメイドは話を切り出した。

 「アリア様、何からお話しましょう?」

 「……私が生まれる前の予言について」

 「ああ、あの予言ですか」

 メイドはふうっとため息を着いてから話を始めた。

 「貴方様が生まれる一月前です。この城には巫女がおりました。その巫女は未来を視、それを国のために役立てていました。その彼女がある日、怯えた表情で王に告げました。この国は滅びると」

 「何故かと王が問うと、巫女は王妃に宿る子供が原因だと言いました。その子は双子で、鏡であるとして凶を招かざる得ないと。その予言に王は怒り、その巫女は処刑されました。そしてその予言は決して当たらないと国民に告げ、何ともないように思われました」

 「しかし、王妃様は一月後鏡の双子を産んで命を失いました。これが全ての始まりだったのです」

 リュウは話の大筋を大体理解していた。

 王にアポなしで会いに行くとか言い出す所で、関係があると察していたからだ。アリアはずっと、これに悩まされていたのだ。

 「王は二人の赤子を見たとき、貴方様がとてつもないオーラの持ち主だとヤミとしてクリス様に預けました。エリア姫はヒカリとしてここで生活され、いつか巡り合わない様にされていたのです」

 「それは、何故?」

 「鏡の双子出会いしとき、二人は闇に染まりこの世界もろとも破壊する。これが王とメイド達にしか伝えられていない隠された予言だったのです」

 「そんな……」

 アリアは前に見た夢を思い出した。確かに自分とエリアは人を殺めていた。

 そんな忌まわしい運命が隠されていたとは露ほども思っていなかった。ただ、エリアに会えば何かが変わるような気がしていたが。

 エリアは邪悪じゃない。そう信じたい。

 だけど、現実は理想とはあまりにもかけ離れていて……。

 鏡、それは同じ姿、同じ性格、同じ能力。全てが一緒で無いと成立しない。だけど、アリアとエリアは運命も姿も能力さえもまるで正反対だ。鏡の理を覆しているからこそ、鏡の双子と呼ばれるのだ。

 周りはそれを知って双子を引き離すか、どちらかを闇に葬り去ろうとする。だからこそ鏡の双子である二人は引き離されたのだ。

 今は立場が逆転しつつある。逃げても逃げても決して逃げ切れる事のない当てのない逃避行に彼女は身を乗じているのかも知れない。

 「その、予言を外す事は出来ませんか?双子が消える方法以外に」

 しばらくメイドは黙り込んだが、ゆっくり言った。

 「ないわけではありません」

 「ならば、教えて下さいその方法を。彼女を、エリアを救ってこの世界を救う手立てを私は欲しいのです」

 「……今エリア様は自らの運命を受け入れようとしている。エリア様は本当は自身の運命と立ち向かわなければならないのに逃げているのです。それが原因で彼女の心はほとんどヤミになりかけている。それを止められるのは貴方様なのです」

 「私が彼女を救えるの?」

 「詳しい事は分かりませんが、貴方が自分を見失わずに彼女をヒカリへ導けば上手くいくでしょう」

 彼女達に教えられた事でアリアは更に希望を膨らませた。絶望していたエリアの存在。その存在が邪魔だと消されない時が来る可能性が見えてきたのだ。

 リュウはこの会話に何一つ口を出さなかったのだが、それがアリアへの気遣いである事は当人も分かっていた。

 話が終わり、アリアはリュウに上目遣いで言った。

 「これが、私の運命であり真実よ。貴方が自身について語ってくれたのに私は何も言えなくてごめんなさい。私はずっと心配だったの。これが知れればきっと誰もが離れていくって……」

 「お前が言ったんだろ、隠し事はもう無しって」

 その声音は少し怒っているように思えてアリアは思わず肩をすくめた。

 だが、次の瞬間ひょいと軽々リュウはアリアを抱え上げた。突然の出来事にアリアは戸惑う。メイドも唖然としてこちらを見ている。

 リュウと視線があった。くすっとリュウは笑みを浮かべた。

 「これで今度こそ、隠し事は無いだろうな」

 「うん」

 「もう約束破ったら許さねえからな」

 「分かったよ」

 二人は面白おかしく笑った。その声が無残な姿となった城に明るく響いた。

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